エピローグ2 アイナの正体
目を覚まして最初に視界に入ったのは石造りの天井だった。
まるで牢獄のようなその部屋を見て、アイナは自分に何が起きたのかを思い出す。
「……ああ、そっか。私、攫われちゃったんだ」
口にした言葉とは裏腹に、アイナは自分でも不思議な程、落ち着いていた。
きっと、そんなことよりずっとショックなことがあったせいだろう。
「サフィ……。どうしてあんなことを……?」
宙に霧散するはずだったその呟きに、「知りたい?」と答える声がした。
「おはよう、アイナちゃん。よく眠れた?」
「ハンザさん!?」
アイナは眠っていたベッドから体を起こすと、そこでようやく自分とハンザの間にある鉄格子に気付いた。
「これは……、どういうことですか? 私は一体、どうなって……」
「ああ、うん。まあ、事情を簡単に説明すると、俺が君を攫ってここまで連れて来たんだ」
「ハンザさんが!? 何で、そんなことを!?」
「それを教えてもいいけれど、本当に知る覚悟はある?」
「覚悟って……」違和感のある言葉にアイナは自分の腰が引けるのを感じた。「な、何に対してのですか?」
「自分が何者であるかを知る覚悟だよ」
「私が?」
「そう。どうして君は、怪物の出現を予見出来るのか。その理由を考えたことはあるかい?」
「そ、そんなの……」
考えなかったことなどない。
だが、どれだけ考えても答えは得られなかった。
だから、漠然と自分には不思議な力があるのだと整理を付けていた。
そこに何か特別な理由があるなどとは思わなかった。
いや、きっと考えないようにしていたのだ。
精霊の力とも魔法とも違う何か。
怪物の出現を予見するという忌むべきこの力の正体を知れば、何か取り返しのつかないことになる予感があった。
自分だけが怪物と繋がっている。
その事実をひた隠しにして来たのは、結局、知ることが怖かったからだった。
それでも、ステインと出会い、サフィと出会い、そしてナッシュたちとの旅を経て、もう逃げるわけにはいかないと思うようになった。
この力からも、自分の運命からも。
だから、アイナは訊いた。
「教えて下さい。私は一体、何者なんですか?」
その返事にハンザは残念そうに息を吐く。
「まあ、君はやっぱりそう言うよね。君は自分の運命から逃げられない。そういう所はあいつらとそっくりだ……」
普段のおちゃらけた態度とは対照的に、今のハンザはひどく打ちひしがれているように見えた。
「ハンザさん?」
「ああ、ごめん。何でもないよ」ハンザはそう答えると、アイナに信じがたい事実を伝えた。「君はね、災厄の魔女と呼ばれる存在なんだ」
「災厄の、魔女? 何ですか、それは?」
「この世界に滅びと救いを齎す存在だよ」
そして、ハンザは語った。
歴史の裏に葬られた災厄の魔女と呼ばれる人々の悲劇について。




