第六十九話 ラピスは見ていた
「つまらん話を聞かせた」
話しを終えたステインがそう言うと、アイナは首を横に振った。
「そんなことないよ。話してくれてありがとう。少しだけど、ステインのことが分かった気がする」
「そうか」
「うん」
静かな夜だった。虫の音も聞こえず、二人が口を閉ざすと、沈黙と蝋燭の光だけが残った。ステインに何かを言って上げたかった。
だが、何を言えばいいのか分からなかった。
そのことをアイナが申し訳なく思っていると、徐にステインが椅子を引いた。
「さて、思ったよりも遅くなってしまったな。俺はそろそろ自分の部屋に戻る」
「……うん。そうだね」
「今日はゆっくり休め」
そう言って部屋の扉へ向かおうとするステインをアイナは咄嗟に引き留める。
「あっ、ステイン?」
「何だ?」
「……その、サフィのことだけど。これからどうするの?」
「まだ、考えていない。元々、プロントまで送り届けるつもりだったが……」
「そう」
「アイナはどうしたい?」
「私は……、サフィの助けになりたい」
「そうか」ステインはそう答えると、少しだけ嬉しそうな顔を見せた。「お前なら、きっとそう言うだろうと思っていた」
扉が開き、ステインが部屋を出て行く。
それを見送った後、アイナは横に倒れるにようにしてベッドに沈み込んだ。
※
深夜、柔らかいベッドに寝心地の悪さを覚えたラピスはトイレに行くため部屋を出た。
そして、廊下の曲がり角に差し掛かったところで思いがけない場面に遭遇した。
「……あれ? あの部屋ってたしかお姉さんの友達の部屋だよね? たしかアイナさんだったかな? どうしてそこからおじさんが出て来るの?」
何?
どういうこと?
……え、もしかしてそういうこと?
でも、おじさんとアイナさんってかなり年が離れているよね?
「……これって、マズいんじゃない?」深刻な表情で呟いたラピスはしばらく悩んでいたが、自分では判断が出来ないと結論を下す。「明日、お姉さんに相談しよう」
考えることをやめたラピスはトイレに行くことも忘れて自室へと戻って行った。




