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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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38 アンナSide 砂礫の██_ 前編

 帝国、皇帝直轄領──砂の惑星。


 片田舎の砂の惑星を前に、船員は困った顔で振り返った。


「現在、現地は非常時厳戒体制に入っております。降下は推奨できません」


「えっ……」


 ストロベリーブロンドの髪を揺らしていた、アンナの笑顔が止まった。


 一同が彼女を見る。


 アルブレヒトも。

 マクシミリアンも。

 コンラートも、ルーカスも、ロジャーも。

 その他の美形たちも。


 行き先を希望したのは、アンナだった。


「でも、行きたいんです!」


 胸の前で手を握る。


 ここには街がある。困っている人々がいる。


 そして、座礁した海賊船が。


 大人気俺様キャラクター、アクセル・ヴォルフがいるのだ。


 原作『銀河聖国の星乙女』のイベント。


 二・五周年。ハーフアニバーサリーイベントシナリオ『砂礫の幻灯』。


 アンナは、その物語を知っていた。



 ─────



 街がなかった。


 正確には、街だったものがあった。


 崩れた壁。折れた柱。砂に埋もれた屋根。 通りだった場所を、救助の人々が行き交っている。


 仮設の天幕には、わずかに残った生存者が集められていた。救援物資はすでに運び込まれ、瓦礫の撤去も始まっている。


 アンナは、船を降りたところで立ち止まった。


「どうして……何が、一体どうなって!?」


「落ち着け、アンナ」


 アルブレヒトが肩へ手を添える。


「まず、話を聞こう」


「こんなはずじゃないんです! 街は……!」


 アンナの言葉にアルブレヒトは赤い瞳を少しだけ見開いた。


 もっと、人がいたはずだった。


 建物も。

 店も。

 イベントの会話が始まる広場も。


 目の前では、救助の作業員が崩れた石を運んでいる。アンナは天幕のそばにいた住民へ駆け寄った。


「あの、海賊は?」


「……海賊?」


「座礁してませんか? 船が、動けなくなっていて……」


 住民は眉を寄せた。


「そんな奴らはいないよ」


「でも」


「座礁した船なんて見てない。軍の救援の船なら来てるが……」


 アンナの口が、わずかに開いたまま止まった。


 アルブレヒトは、その横顔を見た。


(アンナの先見が……外れたのか?)


 彼女は、ここへ来れば何かがあると確信していた。


 確かに、何かは起きている。


 ただ、本人がいちばん驚いていた。



 ─────



 アンナが顔を上げた。


 青空に、鮮やかなピンク色の線が走っていた。


 定規で引いたような、まっすぐな一本。


 その周囲で、黒いものがちらついた。


 途切れて、つながる、四角く欠けて、元に戻る。


 映像が乱れているようだった。


 茶金の髪の青年、コンラートが首を傾げながら感想を述べる。


「グリッチを起こしてない?」


 だが、見上げているのは画面ではない。


「……何だ、あれは」


 ルーカスが目を細めた。


 皆も空を見つめている。


 アンナだけに見えているわけではなかった。


「こんなはずでは……」


 アンナが呟いた、そのとき。


 風が吹き荒れた。


 強風が砂礫を叩きつけてくる。


「出たぞーー!」


 街の南から声が上がった。


「あいつだ!」


 悲鳴が続く。


 全員が振り向いた。


 砂が盛り上がっていた。


 小さな砂丘かと思ったそれに、棘があった。


 何本も。

 何十本も。


 巨大な鯨を無理やり上へ向かせ、その身体じゅうに棘を生やしたような巨大生物が、砂を押し分けて現れた。


 四階建ての建物ほどもある。


 まだ街からは離れていた。こちらへ向かっている。


「話を聞く時間はなさそうだな!」


 マクシミリアンが通信機を掴む。


 アンナは知っていた。


 あれは、イベントのボスだ。


 海賊との出会いも。


 街での交流も。


 そこへ至るはずの話もない。


 ボスだけ来た。



 ─────



 アンナ、コンラート、ルーカスが魔導ユニットを取り出した。


 アルブレヒトはマクシミリアンを見る。


「呼ぶぞ」


「おう!」


 二人が通信機へ魔力を込める。


「「召喚!」」


 飛空艇で待機していた騎士機(キャヴァリエ)が起動する。


 召喚者の足元に召喚術式の円陣が青白い光とともに現れた。


 呼び出しに応じた二機が、召喚陣から現れる。


 アルブレヒトが乗り込み、マクシミリアンも操縦席へ飛び込んだ。


「前は俺が受ける!」


 マクシミリアンの大盾持ちの騎士機が進み出る。


 怪物が棘だらけの身体を振った。


 棘と砂礫が飛ぶ。棘と言っても、数メートルはある。


 盾へ激突し、凄まじい音が鳴った。


「……重いな、おい!」


「押し返せ!」


「簡単に言うな!」


 アルブレヒト機が、その脇を抜けた。


 剣が伸びる。


 刃の節がほどけ、蛇腹剣が怪物の横腹へ叩きつけられた。


 砂が爆ぜる。


 怪物が身をよじる。


 重低音の怪物の雄叫びがビリビリと大気を震わせる。


 街へ向いていた巨体が、二機へ向き直った。


「今です!」


 アンナのユニットから光が広がった。


 きらめきが騎士機を包み、その動きを後押しする。


 コンラートも後方で回復魔法を送り、前衛を支えた。


 そこへ演奏が重なる。


 亜麻色の髪を束ねた若者、ルーカス。


 棘を振り上げた巨体が、わずかに鈍った。


 騎士機乗りではない、今回は観戦してるだけのロジャーが声を上げた。


「効いてる!」


「このまま押せ!」


 マクシミリアン機が盾を押し込みながら、剣を腹に突き立てた。


 ルーカスもデバフ効果のある旋律を重ねる。


 瓦礫の街を背に、演奏つきの大怪獣戦が始まっていた。


 アンナは怪物を見据えた。


 街が壊れている理由も、海賊がいない理由も、空の黒い乱れも分からない。


 考えようとするたびに、目の前で棘が飛ぶ。


 今は、倒すしかなかった。


「アルブレヒト!」


「ああ!」


 騎士機が踏み込む。


 蛇腹剣が怪物の棘を絡め取り、横へ引いた。


 巨体が傾く。


「マクシミリアン!」


「任せろ!」


 盾が突っ込んだ。


 正面からの衝撃に、鯨の怪物が大きくのけぞる。


 アンナの光が、さらに強まる。光がいくつもの光弾となり怪物にぶつかってゆく。


 アルブレヒト機の剣が怪物の腹に突き刺さったた。


 衝撃波が轟音となってあたりに響く。


 怪物が、崩れた。



 ─────



 大量の砂が舞い上がった。


 轟音が遠ざかり、地面の揺れが収まっていく。


 演奏が止まった。


 アンナは息を吐いた。


 コンラートも、張り詰めていた肩をわずかに落とす。


 砂煙の向こうで、巨体は動かなかった。


「やったか?」


 マクシミリアンの声が響いた。


 アンナが顔を上げる。


 その言い方は。


 ずずずずずん。


 倒れたはずの巨体が跳ね起きる。


「危ない!」


 巨大な影が立ち上がった。


「お前が星乙女(スターメイデン)か」

 後編もこの後投稿します。


 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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