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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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35 艦隊ガチャ……出ませんわ!

 艦隊を引く。


 エレオノーラは、その決意とともに久しぶりに〈ヴァルテンベルク〉大会議室の椅子へ腰を下ろした。


 〈ヴァルテンベルク〉を地上へ降ろすには、軌道上の防衛を引き継ぐ戦力が必要だ。艦隊を率いる人材。実際に動かせる艦艇。それらを伴ってノイエルデへ来てくれる者を、探さなければならない。


 今回は、軍人や艦隊関係者を対象にした招聘である。


 いつもの面談より、狙いは絞ってある。


 つまり、気分としては軍事系ピックアップガチャだった。


 二段に並ぶ合計十個のモニター。


 つまり、ガチャ筐体である。


「では、お呼びいたします」


「ええ。お願いいたしますわ」


 セバスティアンの声に頷き、エレオノーラは背筋を伸ばす。


 チャリン。


 白い枠が縁取っている。


 ノーマル。N。


 エレオノーラは微笑んだ。


 色だけで決めつけてはいけない。まずは、何ができる人物なのかを聞くのだ。


「これまでのお仕事を伺っても?」


「警察官をしておりました!」


 男は、はきはきと答えた。


 よい返事だった。


 治安を担う人間も、ノイエルデには必要である。


「宇宙艦の運用に関わったご経験は?」


「いえ! 地上勤務です!」


 返事は最後までよかった。


 エレオノーラは職歴へ目を落とし、確認すべき項目を確かめていった。


 面談を終え、男が退出する。


 扉が閉まってから、そっと息をついた。


 警察官は、ありがたい。


 だが、艦隊はまだ来ていない。


「次の方を」


「承知いたしました」


 皆、働く気はある。


 そこは大変よろしい。


 しかし、どこからも艦艇が出てこなかった。


 続いてモニターに現れたのは、騎士候補生だった。


 白い枠を背負い、緊張した面持ちで立っている。


「騎士を目指していらっしゃいますのね」


「はい!」


「艦隊での勤務経験はございます?」


「これから経験を積みたいと思っております!」


「……なるほど」


 これから。


 未来は明るい。


 次。

 チャリン。

 白。


「軍人志望です!」


 ついに職歴ではなく、希望になった。


「……軍人を、志望していらっしゃる」


「はい! よろしくお願いいたします!」


 勢いよく頭を下げられる。


 チャリン。チャリン、チャリン、チャリン……


 無職。田舎から出てきたばかりの若者。公務員ですらない準備隊員。練習生。


 エレオノーラは、机の下で扇を握り直した。


 艦隊司令官を引くまでには、いくつか間に挟むものがありそうである。



 ─────



「白! 白! 白! また白ですのーー!?」


 次の応募者を迎えるまでの短い間に、エレオノーラはとうとう扇を開いて扇ぎ出した。


 まだ、五十連だった。


 セバスティアンが資料を揃える横で、扇が忙しく動く。


「緑は!? 青は!? できれば黄色はどちらに!?」


 白のN、緑のHN、青のR、黄色のSR。


 見慣れた色のうち、今日は白だけだった。


「セバスティアン。今回は軍関係の募集でしたわよね?」


「はい。軍人、艦隊関係者、およびそれらの職を希望される方々からの応募です」


「希望」


「はい、就職希望です」


 エレオノーラは応募書類を手元へ引き寄せる。


 志望動機。


 そこへ目を通し、次の一枚をめくった。


 また、似た名前が目に入る。


 もう一枚。


 エレオノーラは動きを止めた。


「……ディートリヒ?」


「募集ポスターをご覧になった方々ですね」


 セバスティアンが答える。


「ディートリヒの姿を見て、軍務や公務に関心を持たれたようです」


 エレオノーラは書類を見た。


 確かに、募集の効果は出ている。


 あの顔だ。きらりと光る歯。


 目を留める気持ちはよくわかる。わたくしも留めますわ、と胸を張って答えられる。


 だからといって。


「ディートリヒのファンが集まっておりますわーーー!」


 艦隊を募集した。


 推しに憧れて就職を希望する人々が来た。


 採用活動としては成功しているのかもしれない。


 肝心の艦隊戦力が、まだ確保できていないだけで。


「皆様、意欲はおありです」


「ええ! それは素晴らしいことですわ!」


 エレオノーラは頷いた。


「ただ、わたくし、いまは艦隊が欲しいんですの!」


 育成している間にも、冬は来る。


 軍人志望者を面談室へ入れたら、反対側から空母に乗って出てくる仕組みであればよかった。


 残念ながら、この部屋には扉しかない。


「……次の方をお願いいたしますわ」


「かしこまりました」


 来る。


 白。

 白。

 白。

 ……


 エレオノーラは微笑みながら、頭の中で白いカードを並べた。


 白い。


 非常に白い。


 艦隊招聘ガチャの結果画面が、雪景色のようになっていた。


 冬を越すためのガチャで、ひと足先に雪を見せられても困る。


 次の応募者が入ってきたとき、エレオノーラは扇の陰で目を見開いた。


 青。


 輪郭を縁取る、確かな青い枠。


 Rである。


 ようやく色が変わった。


 画面に写ったのは、年配の男だった。背筋を伸ばし、丁寧に一礼する。その落ち着いた所作に、エレオノーラの期待が高まった。


 経験を積んだ人間には、経験を積んだ人間の風格がある。


 ひょっとすると。


 もしかすると。


「こちらは、元警察署長を務めていらした方です」


「元警察署長!?」


 期待は、地上へ着地した。


 立派な経歴だった。


 ノイエルデの治安を考えれば、ぜひお話を聞きたい人物でもある。


 しかし、エレオノーラの頭の片隅では、別の自分が両手を広げて叫んでいた。


(艦隊司令官はどこですの!?)


 せっかく青が出た。


 しかし、海の向こうならぬ、軌道上までは届かなかった。


「長く警察のお仕事を?」


「ええ。現場にも、署の運営にも携わってまいりました」


「まあ。それは心強いですわ」


 今の言葉は、本心だった。


 足りない仕事は艦隊だけではない。人口が増え続けるこの星で、そうした経験を持つ者は貴重である。


 エレオノーラが資料へ視線を落とすと、セバスティアンが補足した。


「こちらはディートリヒのポスターを見て応募された方で……」


 扇が止まった。


 エレオノーラは、ゆっくり顔を上げた。


 元警察署長のおじいさんは、晴れやかな顔をしていた。


「若い方があれほど立派に働いておられる。私も、まだお役に立てることがあるかと思いましてな」


 年齢を超えて届いている。


 ディートリヒの募集ポスター、たいしたものである。


 エレオノーラが感心と困惑の間で頷くと、老元署長はぐっと胸を張った。


「お国のためにひと肌脱ぎます!」



 ─────



 ヴァルテンベルク公爵領、主星。


 宮殿の執務室で胸を痛める男がいた。


「ああ、ノーラ。かわいそうに」


 娘の奮闘を伝える報告を前に、フェルディナント・フォン・ヴァルテンベルクは眉を下げた。


 開拓地の発展そのものは喜ばしい。


 人が集まり、仕事が増え、街が広がっている。


 しかし、集まった人々が暮らす場所も、それを管理する人員も足りない。そこへ冬支度と防衛の問題まで重なっていた。


 隣から報告を覗き込んでいたセリーンも、頬に手を添える。


「どうにかしてあげられないかしら。こんなに頑張ってるんだし」


「うーむ……とはいえ、金も人員も……」


 これまでに多額の投資と軍事支援は手配していた。


 だが、越冬のために方舟(ヴァルテンベルク)を地上へ降ろす。


 エレオノーラの決断は尊重したい。


 しかし、一度地上へ降りれば、あの重量は二度と浮かび上がれない。設計段階からわかっていた。


 フェルディナントは腕を組んだ。


 報告へ目を落とし、しばらく考える。


 セリーンも急かさず、その横顔を見守っていた。


 やがて、公爵の眉が上がった。


「いや、あったな!」


「あら」


 夫の顔を見たセリーンが、微笑む。


 しかし、公爵の顔が曇る。


「だが、冬の到来までに人員配置が間に合うかな?」


「可愛い娘のためだもの、そこをどうにかするのがあなたの仕事でしょう」


 今、銀河規模の親バカがエレオノーラのガチャによって発動しようとしていた──

 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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