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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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25 ブーストモードで倒そう!

24話とタイトルを入れ替えました。

『よし! こちらを見た!』


「そのまま郊外へ! 街側へ回さないでください!」


 僚機の射撃が、竜の前方を走った。


 巨大な頭が振れる。


 ディートリヒも、人型形態の騎士機から射撃を続けた。


 撃って、下がる。

 向き直れば、別の機体が注意を引く。


 竜の進路を少しずつ変え、市街地から離していく。


 だが、相手の歩幅が大きすぎた。


 こちらが必死に距離を取っても、向こうは数歩で詰めてくる。翼を広げられるたび、左右へ展開した機体が押し出されそうになった。


「もう少し……!」


 建物から距離が開く。


 まだ足りない。

 あの巨体が倒れても、街に届かないところまで。


 ディートリヒは盾を前へ出し、竜の視界を横切った。


 牙が閉じる。


 機体のすぐ後ろで、空気が鳴った。


『おい、無理ならかわってやろうか?』


 別の機体が、横から割り込んできた。


 ギルド所属戦闘用ゴーレムだった。


 頼もしい申し出ではある。


 ただ、今は返事をしている間にも、竜がこっちを噛もうとしている。


「まず右側へ! 市街地へ戻さないようにお願いします!」


『おう。で、倒せんのか?』


「それを今──」


『さぁ! やるんじゃあ! わしの成果を見せつけちゃれい!』


 さらに通信が割り込んだ。


 オットーだ。


 竜の咆哮に負けない声量だった。


『ブーストモード! 帝国デビューじゃああああ!!』


「ああ、もう! わかりましたよ! 耳元で怒鳴らないでください!」


 ディートリヒは、コンソール脇を見た。


 赤いボタン。  正直、忌々しい。


 竜は、市街地から離れた。


 ここで止める。


「前方、空けてください!」


『バウアー?』


「突っ込みます!」


 機体が盾を構える。

 騎士剣を握り直す。


 ディートリヒは、赤いボタンを押した。


「ブーストモード、オン!」


 青い表示が、赤へ変わった。


 魔導炉の出力が跳ね上がる。


 機体各部のスラスターが唸り、青白かったエーテル光が、一斉に真紅へ染まった。


 ─────


 プレハブの屋上で、エレオノーラが跳ねた。


「赤! 赤ですわーー!」


 遠方を飛ぶ騎士機が、鮮やかな真紅の尾を引いている。


 あれがブーストモード。


 訓練を重ねた推しの、新しい戦い方だった。


「まああ! 速い! ご覧になって! あんなに!」


「見てる見てる! なんだよあれ!?」


 アクセルは笑いながらも、赤い光を目で追っていた。


 シャオも、リヒトシュタープを振る手を少し緩める。


「……へえ。あないに変わるんか」


「ですから、応援ですわ!」


 エレオノーラが両腕を振り上げた。


「ディートリヒーー! いけますわーー!」


 ジュリアも隣で光を振った。


 マリーは、相変わらず死んだ目でうちわを振っている。


「お嬢様、せめて屋上の端からは離れて……!」


 風に髪を揺らしながら、エレオノーラは全力で応援していた。


 ─────


 一方、そのディートリヒは、操縦席で歯を食いしばっていた。


 盾の角度を合わせ、ブレードを構える。加速に合わせて魔力を通し、竜の動きから目を離さない。


 僚機はどこか。

 突進先に、誰もいないか。

 押し負けたとき、街側へ抜かれないか。


 まさかプレハブの屋上で、主君が光る棒を振っているとは知らない。


「ここで……止める!」


 ディートリヒは盾を前へ押し出した。


 赤い光が、空を引き裂いた。


 盾を前面へ。

 ブレードを、その脇へ。


 竜の胸元へ、正面から飛び込む。


 激突した。


「っ!」


 衝撃が、腕から肩へ突き抜けた。


 機体が軋む。

 全天モニターが震える。


 盾の向こうを、鱗が埋め尽くした。


 押せる。


 そう思った直後、竜が踏ん張った。


 巨大な首が下がり、全身の重みがこちらへかかる。


「うわっ……!」


 押し返された。


 赤い噴射光が長く伸びる。

 推力を上げても、前へ進まない。


 あの大きさだ。

 ブーストを使えば、何でも簡単に吹き飛ぶわけではなかった。


 警告音が鳴った。


 赤い画面に、赤い警告が増える。


『いけぇぇぇぇ!』


「見ればわかるでしょう、今いってるんですよ!」


 歯を食いしばったまま叫ぶ。


 竜の爪が動く。


 盾へ、さらに圧力がかかった。


 姿勢がずれれば、押し潰される。

 ここで退けば、また街へ向かうかもしれない。


 ディートリヒは、操縦桿を握り直した。


 機体へ伸ばした感覚を、さらに深く通す。


 盾。

 腕。

 騎士剣のブレード部分。


 その先へ。


「魔力解放!」


 ディートリヒの身体から、魔力が立ちのぼった。


 握った操縦桿を介し、機体へ一気に流れ込む。


 灰青の瞳に、オパールのような輝きが宿った。


 モニターを、白い筋が走る。


 ブレードの光が、変わった。


 赤から、白へ。


 竜の身体が、わずかに押し戻された。


「おおおおっ!」


 ディートリヒは、盾を押し込んだ。


 空いたところへ、ブレードを進める。


 止まらない。


 先ほどまで押し返してきた巨体へ、光の刃が入っていく。


 鱗が焼け、刃の通る場所から白い光が噴き出した。


 押しているだけではなかった。


 凄まじいエネルギーが、竜の身体を焼き切っていた。


 ディートリヒは、機体ごと踏み込んだ。


「いけえっ!」


 ズバァァァン!!


 白い斬撃が、巨体を走り抜けた。


 竜が大きく仰け反る。


 その向こうへ抜けたディートリヒ機が、赤い噴射光を引いて反転した。


 巨大な身体が傾く。


 地面が揺れた。


 巻き上がった土煙の向こうで、翼が落ちる。


 ディートリヒは盾を構えたまま、動きを見ていた。


 一秒。

 二秒。


 竜は、起き上がらなかった。


 ─────


「……対象、沈黙」


 ディートリヒは息を吐いた。


 指が、操縦桿を握った形のまま固まりかけている。


 ゆっくり力を抜き、機体の状態を確認した。


 警告は今も出ている。


 だが、立っている。  少なくとも爆発はしない、はずだ。


『おいおい、マジかよ……』


 ギルド機の操縦者が、呆然と呟いた。


『なんだよ、エーテル光が赤って……』


 その驚きは、よく分かる。


 ディートリヒ自身、初めて見たときは同じように驚いた。


 その後、毎日乗せられたので、見慣れたが。  操作性には慣れたとは言い難い。


『見たかあああ!』


 オットーの声が響いた。


 たいへん元気だった。


 こちらの呼吸が整うより先に、次の言葉が来た。


『皆もブースト改造したいもんはおらんか!?』


「もう少しわきまえてください!」


 倒したばかりである。


 竜も、まだ温かそうである。


 現場で営業を始めないでほしかった。


 ところが、通信に別の声が入った。


『……俺もやってもらおうかな』


 僚機からだった。


 ディートリヒは顔を上げた。


「ちょっ」


『俺も』


 もう一人。


「待ってください。今の見てました?」


『見てたよ! すげぇー!』


 速かった。

 凄まじい出力だった。


 そして、あの巨体を斬り倒した。


 希望する理由は、十分だったらしい。


 乗っている間の警告音まで、外には聞こえていない。


『おい、その技術、民間には!?』


 ギルド機まで食いついた。


『ほっほっほ! 興味があるかの!』


「オットーさん!」


『これがシュタインしゅペシャルじゃあ!』


 ちょっと噛んだ。


 ブーストモード、帝国デビュー。


 どうやら、成功したらしい。


 ディートリヒは、操縦席で額を押さえた。


 明日の訓練がさらに過酷になるのが、今から想像がついた。


 ─────


 一方、領府では。


 エレオノーラが、巨大な卵を見つめていた。


 巡礼者ミー・ディは、その横に膝をついている。


 まず、どこから持ってきたのか。

 どうして持ってきたのか。

 途中で、親らしきものに追いかけられなかったのか。


 そして何より。


「どうして、わたくしへ?」


 ミー・ディが顔を上げた。


 首の翻訳機から、あの可愛らしい声が響く。


『ミー、凍え死ぬ前に、女神様にわたしと竜の卵を食べてください!』


「遠慮いたしますわ!」


 即答した。


 ミー・ディの口が、開いた。


 ぽかん、と。


「ぶっ」


 アクセルが吹いた。もはや何でも面白い年頃かもしれない。


「熱心な信者さんやなぁ」


 シャオは感心しきりだ。


 エレオノーラも、しばらく相手を見つめた。


 聞き間違いかと思ったが、今のは、はっきりしていた。


 卵だけではない。


 わたしと、竜の卵。


 巡礼者ご本人も、含まれていた。


「なぜ、ご自身まで召し上がらせようとなさいますの!?」


 可愛らしい声で頼まれても、内容が可愛らしくない。


 女神と呼ばれるだけでも困るのに、供物の受け取りまで求められていた。


「食べませんわよ!?」


 念のため、もう一度伝えた。


 ミー・ディは、まだ口を開けていた。


 やがて、ゆっくりと卵へ顔を向ける。


 その表面へ手を置き、もう一度、エレオノーラを見上げた。


 期待は、消えていないようだった。


 エレオノーラは、首を横に振った。


「お断りいたしますわ」


 ミー・ディが静止した。


 職員も、セバスティアンも、その様子を見守っていた。


 サイレンの音が、遠くに聞こえる。


 長い巡礼の末に、ようやく辿り着いた女神の前で。


 ミー・ディは、ぽつりと言った。


『死ぬしかない』


「ああーー!! 誰か!!」


 エレオノーラが振り返った。


「誰か、説明を! 食べられなくてもよろしいと、説明してくださいまし!」


 職員が慌てて膝をつく。


 アクセルはもう立っていられなかった。床で笑い転げている。


「はぁ、姫さんとこいると毎日飽きひんわぁ」


 ミー・ディは、すっかり項垂れていた。


 こちらを訪ねてきたときには、あんなにも嬉しそうだったのに。


 食べないと言ったら、絶望された。


 エレオノーラは扇を握りしめた。


 卵をどうするか。


 そのうえ、目の前の巡礼者を、どう励ますか。


 領主の仕事は、今日も増えていた。


「わたくしに食べられないことを、そんなに悲しまないでくださいましーーーー!!」

 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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