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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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23 絶対これですわー!


 その少し前。


 領府、プレハブ執務室。


 エレオノーラは、今日も忙しく書類仕事を進めていた。


 少なくとも、部屋の主はそうである。


「はあ……次から次へと、どうしてこんなに書類が増えるんですの?」


 署名を一つ終えたところで、また別の書類が差し出される。


 人口が増えれば申請が増える。建物が増えれば許認可が増える。ようやく執政官を確保したというのに、仕事が減る気配はまるでなかった。


 そんな執務室のソファでは、アクセル・ヴォルフが長い脚を投げ出し、我が物顔で寝転がっていた。


「あー、暇だな」


「暇ならお仕事なさいませ!」


「ここ、俺の職場じゃねえし」


「だったらご自分の職場へお帰りなさい!」


「姫さん、客に冷てえなあ」


「毎日いらっしゃる方を客とは呼びませんわ!」


 しかも、今日はもう一人いる。


 丸テーブルの前では、鮮やかな長袍をまとったルオ・シャオが、優雅に茶をしばいていた。


「ここのお茶は出がらしやけど味が深うてよろしおすなぁ」


「それ、褒めていらっしゃるの!?」


「もちろんやで」


 シャオはにっこりと微笑み、空になった茶碗を差し出した。


「おかわり、いただけます?」


「出がらしのおかわりを要求しないでくださいまし!」


 まったく、どうして執務室はこんなことになってしまったのか。

 

 なお、部屋の隅ではアドリアン・ネーベルが書類の山に埋もれていた。朝から一度も顔を上げていない。

 

 

 ─────

 


 エレオノーラが頭を抱えていると、セバスティアンが一枚の資料を持って近づいてきた。


「お嬢様、サウロイド種が街に現れたそうです」


「サウロイド?」


 エレオノーラが書類から顔を上げる。


 セバスティアンが差し出した資料には、トカゲに似た二足歩行の生物が映っていた。


「ああ! ノイマン家のご子息が揉め事を起こした島の、方々でしたわね!」


 あの、勝手に島を自分のものだと言い張った男だ。


 住民と揉め、翼竜の巣を荒らし、救援中に発砲までした。

 思い出すだけで、追加の仕事が来そうだった。


 その島に暮らしていた先住知的種族。


 人類学者によって、ノイエルデ・サウロイドと名付けられたと聞いている。


「交流が進んでいるのは、よろしいことではなくて?」


「はい。ただ、彼らの生息北限を超えております。保健課で保護、また何らかの事情があるものとして、確認を進めておりますが……」


「が?」


「どうしても、お嬢様にお会いしたいとのことでございます」


「わたくしに?」


 エレオノーラは資料を見直した。

 

「では、お会いいたしましょう」


 そう言って、立ち上がったとき。


「こちらです」


 職員に案内され、部屋へ入ってきた。


 トカゲ型の、小さな客人。


 背中には、大きな背嚢。


 身体に対して、かなり大きな荷物だった。


 客人はエレオノーラを見るなり、ぱっと両手を上げた。


「キャ!」


「まあ、ごきげんよう」


「だめですよ。まだ約束のお時間では……」


 セバスティアンの制止は、間に合わなかった。


 客人が、両膝をついた。


 頭を下げる。

 両手を上げる。


 下げる。

 上げる。


 もう一度、深々と頭を下げた。


「…………」


 エレオノーラは止まった。


 挨拶だろうか。


 文化が違えば、礼儀も違う。

 こちらにとってのカーテシーに当たる作法なのかもしれない。


 そう考えてみたが、目の前の動きは、あまりにも分かりやすかった。


「……礼拝ではなくて?」


 職員が、困った顔で頷いた。


 否定してほしかった。


「どういうことですの!?」


 その瞬間。


「ぶっ……!」


 ソファから奇妙な音が聞こえた。


 アクセルだった。


 片手で口を押さえ、必死に笑いを堪えている。


「あれから……お前、あいつらの神様で定着してんのかよ……!」


「知りませんわよ!」


「ぶはははははっ!!」


 とうとう我慢できなくなったらしい。


 アクセルはソファの上で身体を折り曲げ、腹を抱えて笑い始めた。

 

「笑ってないで助けてくださいまし!」


「無理だ! ひいっ、腹いてえ!」


 まったく助ける気がない。


 シャオまで感心したように頷いている。


「まあまあ、えらい人気やなぁ。神様やなんて」


「だから違いますのよ!」


「ほな、拝観料でも取らはったら?」


「取りませんわーー!!」


 セバスティアンが静かに咳払いをした。


「皆様。まずはお客様のお話を伺いましょう」


 さすがセバスティアン。


 この部屋で唯一、まともな大人である。

 

 職員が、言いにくそうに切り出した。

 

「それが、どうしても死ぬ前に……お嬢様に、お会いになりたいと」


「死ぬ前?」


 急に、面会の重さが変わった。


 申請か相談かと思って来たら、今生の別れになっている。


 エレオノーラはセバスティアンを見た。


 セバスティアンも、客人を見ていた。


 アクセルも笑うのをやめ、ソファから上半身を起こした。


「何だ、病気なのか?」


「いえ、それも含めて確認中でして……」


 生息北限を超えてまで、この小さな身体でやって来たという。


 何かよほどの事情があるに違いない。


 その間にも、礼拝は続いている。


「と、とにかく、お話を」


「はい。こちらをお使いいただきます」


 職員が自分の首にかけていたネックレス型の魔導翻訳機を外した。

 

 客人の首へ、そっとかける。


 小さな機器に光が灯った。


 次の瞬間、可愛らしい女の子の声が響いた。


『おお! 偉大なる女神様!』


「女神様!?」


『わたしはついに至りました! 神のおわす地に!』


 客人は、感激していた。


 翻訳された声だけ聞いていれば、可憐な少女との感動的な出会いである。


 実際には、トカゲ人に拝まれている。


 そして、場所は人手不足の領府プレハブだった。


「こちら、役所ですわよ?」


『わたしは巡礼者ミー・ディ』


 名乗った。


 役所については、聞き流された。


「巡礼……」


 エレオノーラは、その言葉を繰り返した。


 南の島で平伏されたときにも、何か誤解されているのではないかとは言われた。


 ところが、今度は参拝に来た。


 わざわざ、生息北限を超えて。


「ミー・ディさん。まず、女神という点について……」


『供物を貢ぎにきました!』


「供物?」


 話を聞いてほしい。


 ミー・ディは背中の大きな背嚢を下ろした。


 大事そうに床へ置き、留め具を外していく。


 アクセルがソファから身を乗り出した。


「供物? 食いもんか?」


「ちょっと、アクセル! 神様への貢ぎ物を食べようとしないでくださいまし!」


「お前、神様じゃねえんだろ?」


「そうですけど!」


 シャオも興味深げに覗き込んでいる。


「大きな荷物やなぁ」


 背嚢が開いた。


 エレオノーラは、思わず口を閉じた。


 卵。


 確かに、卵だった。


 しかし、その大きさは常識をはるかに超えていた。


「……大きくありませんこと?」


「おいおい。これを背負って歩いてきたのかよ」


「小さな身体で力持ちやなぁ」


 シャオが感心している間も、後ろでネーベルは書類を処理していた。


 ミー・ディは誇らしげに両手を添えている。


 ついに届けた。

 

 そんな達成感が、小さな身体いっぱいに満ちていた。


 エレオノーラは卵を見た。


 ミー・ディを見た。


 もう一度、卵を見た。

 

 どうみても、卵のほうが大きい。

 

 このトカゲ人が産んだとは、到底思えない。


 何の卵かと考える前に、よくこれを背負ってきたものだと思った。


 そのとき、サイレンが鳴った。


 部屋の全員が顔を上げる。


 別の職員が、慌ただしく駆け込んできた。


「大変です! 大型竜がこちらに向かっています! 避難してください!」


「大型竜だと!?」


 アクセルが立ち上がった。

 

「この束を処理したら、避難します」


 ネーベルがやっと口を開いた。


 セバスティアンは即座に端末を操作し、状況の確認を始める。


 シャオも茶碗を置き、窓の外を眺めた。

 

「…………」


 エレオノーラは、ゆっくりと卵へ目を戻した。


 市街地へ来た竜。


 生息範囲を離れてきた巡礼者。

 くりくりした大きな瞳。可愛い。


 そして、巨大な卵。


 扇を握る手に、力が入った。


「絶対これですわーーーー!!!」

 追加で登場人物まとめがあります。まだ四章は続きます。

 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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