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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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21 お待ちしておりましたわーーー!

 実家──公爵家から、追加予算を得る見通しが立った。


 ありがたい。

 たいへんありがたい。


 これで、ようやく息がつける。


「お嬢様、移民登録の確認を」

「こちら、地区ごとの住民数に差が出ております」

「冬季備蓄の申請も届いております」


 つけなかった。


 エレオノーラは、机に追加された書類を見つめた。


 お金は来る。

 仕事も来る。

 仕事をする人間だけが来ない。


 ノイエルデの人口は、相変わらず増え続けていた。正式な入国手続きを経ていない住民までいるため、正確な人数を把握するだけでも大仕事だ。


 家が建つ。人が住む。申請が届く。

 確認している間に、隣にも家が建つ。


「皆様、もう少しゆっくり増えてくださいませんこと!?」


 領主の願いが移民船へ届くことはなく、今日も面談の時間が来た。


 執政官。

 領地運営を任せられる、経験豊富な貴族。


 今度こそ、来てほしい。


 エレオノーラは背筋を伸ばし、扉を見つめた。


 開く。


 黄色。SR。


「き、貴族ですのーー!!」


 入室した男性が、片足を止めた。


 まだ名乗っていない。


 セバスティアンが、さりげなくエレオノーラの前へ資料を置いた。


「ベネディクト・フォン・ヴァイス様でございます」


 男性はすぐに姿勢を整え、優雅に一礼した。


「お初にお目にかかります、公女殿下」


 落ち着いた、よく通る声だった。

 ゆるく流した栗毛に。綺麗に整えた顎髭。

 穏やかな灰色の瞳。


 成熟した美貌に、余裕のある立ち居振る舞い。シャツの胸元は第二ボタンまで開いているが、本人があまりにも自然なので、そういう正装だった気さえしてくる。


 エレオノーラは、顔を見た。

 胸元を見た。

 もう一度、顔を見た。


(ベンおじですわーー!!)


 原作『ホリスタ』のSRキャラクター、ベネディクト。


 SRにも出番はある。低レアリティしか使用できないイベントや、特効を持つイベントでは頼りになる。ただ、普段の編成はどうしてもSSR中心だった。


 ベネディクトもSR後衛の一人だったが、話題になった理由は戦闘性能ではない。


 限界突破すると、第三ボタンが開く。


 能力も上がる。

 胸元も開く。


 なぜそこへ差分を用意したのか。


 当時、偉羅も画像を凝視した。

 本当にもう一個、開いていた。逞しい大胸筋と谷間がはっきり観測できた。

 なぜ、世の男性は女性の胸元が好きなのか、理解できてしまった。

 面白いうえにセクシーおじだった。


「我がヴァイス伯爵家は、長くヴァルテンベルク公爵家のお世話になっております」


 本人は、真面目に挨拶を続けていた。


 エレオノーラは慌てて意識を胸元から戻す。


 ヴァイス伯爵家。

 父の寄子貴族である。


 ようやく来た。

 待ち望んでいた、貴族の応募者だ。


「私は次男として、長年、兄の領地運営を支えてまいりました。今回はこちらで、自ら采配を振るう機会をいただければと」


 ベネディクトが、経歴をまとめた資料を差し出した。


 行政実務。

 領内の各所との調整。


 読み進めるほど、エレオノーラの姿勢が前のめりになる。


 できる。

 今、困っている仕事が、できる。


「妻子も伴っております。弟も同行しておりますので、いずれご挨拶を」


「お待ちしておりましたわーーー!!」


 ベネディクトが、また少し止まった。

 歓迎されている。

 それは、よくわかった。



 ─────



「それで、ご希望は?」


 エレオノーラは、もうペンを持っていた。


 セバスティアンの視線が、ペン先へ向く。


 ベネディクトは静かに頷いた。


「公女殿下のお手元で、新たな土地を育てる役目をいただきたく存じます。端的に言えば、担当地区が欲しいです」


「ふむ、問題なくってよ」

「お嬢様、早すぎませんか」


「手がつけられないほど広いから、いくらでも!」


 エレオノーラは両手を広げた。


 惑星一個である。


 街区が増えた程度で、端から端まで目が届く広さにはならない。父だって、公爵領のすべてを一人で直接管理しているわけではなかった。


 任せられる人には、任せたい。


 できれば今日から。

 可能なら、今この机にある書類から。


「独立した領地をいただきたいということではございません。あくまで、閣下の統治のもとで担当する地区を」

「ええ、ええ! 承知しておりますわ!」


 ベネディクトは説明を終える前から、何度も頷かれていた。


 セバスティアンが、静かに資料を一枚差し込む。


「担当地区、行政権限、予算や税制については、順次協議させていただきます」

「もちろんです。私も、そのつもりで参りました」


 話が通じる。


 条件はこれから詰める。

 そのことについても、話が通じる。


 エレオノーラは胸の前で手を組んだ。


(ベンおじ……! あなた、こんなに頼もしい方でしたのね……!)


 第三ボタンのことしか覚えていなくて、申し訳なかった。



 ─────



「それから、私の弟も」


「弟?」


 ベネディクトの紹介を受け、もう一人の男性が入ってきた。


「テオドール・フォン・ヴァイスと申します」


 丁寧な一礼。

 整った服装。

 若々しい声。


 肩から上は、影に沈んでいた。


「…………」


 エレオノーラは瞬きをした。


 窓からの明かりが、テオドールの肩へ差している。顔も明るくなるはずだった。


 ならない。


 影が濃い。

 顔だけ、徹底的に見えない。


(顔面未実装ですわーー!!)


 顔面未実装。モブなのかそれとも高レアなのかすら判別がつかない。

 なお、エレオノーラはまだ知らないが、同じ影を背負った男がもう一人いる。

 アクセルの弟である。


 エレオノーラがそう判断している間にも、テオドールは普通に挨拶を続けていた。


「兄を補佐し、私もお役に立てればと存じます」


「弟は実務にも長けておりまして。未婚ですので、身軽に動けます」


 ベネディクトが穏やかに付け加える。


 セバスティアンも資料を確認し、何事もなく頷いた。

 顔について言及する者はいない。


 エレオノーラも、考えるのをやめた。


 名前がある。

 会話ができる。

 仕事もできる。


 (問題なし!)


「歓迎いたしますわ!」


 テオドールが、改めて頭を下げた。


 表情は見えない。

 歓迎は伝わったようだった。



 ─────



 ベネディクトの着任が決まった。


 具体的な担当範囲や条件は、これから調整する。それでも、経験豊富な貴族と、有能な弟を確保できた意味は大きい。


 面談を終えたエレオノーラは、椅子の背へ身体を預けた。


「ようやく……ようやくですわ……」


 領地運営の話ができる。

 行政を任せられる。


 胸元は少し開いているが、そんなことは問題にならない。


 そのとき、端末が鳴った。


 ベネディクトからのメッセージだった。


「まあ、早速?」


 エレオノーラは、期待を込めて開いた。


『エラちゃん、今日は面談アリガトウ! ベンおじさん、とっても嬉しかったヨ。これから一緒にガンバロウねッ!』


 文末に、満面の笑顔。

 薔薇。

 投げキッス。


「…………」


 エレオノーラは送信者を確認した。


 ベネディクト・フォン・ヴァイス。


 先ほどまで、落ち着いた声で領地運営を語っていた男性である。


 続きを読む。


『お仕事イッパイで大変だネ。ちゃんとゴハン食べてるカナ? 困った時は、いつでもベンおじさんに連絡してネ。飛んでいっちゃうゾ! ナンチャッテ!』


 笑顔が増えた。

 薔薇も増えた。

 最後には、赤いハートが並んでいた。


「……セバスティアン」

「はい」

「こちら、先ほどの方で合っておりますの?」


 セバスティアンが画面を確認する。


「ベネディクト様でございますね」


 返信を考えている間に、また端末が鳴った。


『アッ、資料も送るネ!』


 添付された資料は、整然としていた。

 確認すべき項目も、今後の協議事項も、実に読みやすくまとまっている。


 エレオノーラは、しばらく資料を眺めた。


 そして、恐る恐るメッセージへ戻る。


『エラちゃん、お返事は急がなくてイイからネッ! お仕事中にゴメンね!』


 投げキッスが、もう一つ届いた。


「有能ですのにーーーー!!」



 ベンおじはしゃべればまともです。

 メッセージはおじ構文キャラです。絵文字でやりたかったんですが控えました。


 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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