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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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18 アンナSide   こんなに増えました!

 皇城の発着場に、鈍色(にびいろ)の飛空艇が降りてきた。


 アルブレヒト・フォン・ホーエンフェルス所有の船である。


 エアハルトは、接近してくる船体を見上げながら、姿勢を正した。


 星乙女アンナが帰ってくる。


 旅立ちを見送って以来、直接顔を合わせるのは久しぶりだった。通信で声を聞くのと、目の前で笑顔を見るのとでは違う。


 その笑顔が、今日は自分へ向けられる。


 発着場の一角では、帰国を聞きつけた報道陣がカメラを構えていた。


 船が停止する。

 タラップが接続される。

 扉が開いた。


 エアハルトは、穏やかな微笑みを用意した。


 最初に降りてきたのは、男だった。


 アルビオン星間王国第三王子、エドワード。

 くるくるの癖毛、金髪のショートヘアの美少年。


(聞いてはいたが……なぜ?)


 同行することは、事前に知らされている。

 知っていることと、納得していることは別だった。


 しかし、相手は他国の王族である。


「ようこそ、エーデルシュテルン銀河帝国へ」


 用意した微笑みを、そのまま外交用に切り替える。


 エドワードはタラップを降りると、王子らしい所作で挨拶を返した。


「お目にかかれて光栄です、エアハルト殿下」


 十六歳と聞いていた。


 だが、向けられた笑みには、こちらの出方を待つ余裕がある。長旅の疲れも見せず、報道陣へ顔を向ける角度まで自然だった。


 なかなか食えない。


 カメラが光る。

 二人の王子は、友好的に並んだ。


 続いて、アルブレヒトが現れた。

 恭しく手を取り、歩調を合わせている相手は、アンナだった。


「ただいま戻りました!」


 明るい声が発着場に響く。


 報道陣が一斉にシャッターを切った。


 アンナは笑顔で手を振る。

 アルブレヒトは、その間も彼女の手を離さない。


 タラップには段差がある。

 エスコートとして正しい。

 正しいからこそ、エアハルトは何も言えなかった。


「お帰り、アンナ。無事で何よりだ」


「ありがとうございます、殿下!」


 アンナの笑顔に、胸が温かくなる。


 その隣でアルブレヒトも微笑んだ。


「殿下、お出迎えありがとうございます」


 視線が合った。

 赤い瞳と王青(ケーニヒスブラウ)の眼差しが交差する。


 エアハルトの口元も、アルブレヒトの口元も、同じくらい穏やかだった。目元だけが、少し違った。


 報道陣のカメラが、さらに光る。


 続いて降りてきたのは、コンラートだった。


 マクシミリアン。

 ルーカスまで降りたところで。


(……ここまではいい)


 元学友たちだ。旅に同行していたことも知っている。


 挨拶を受け、労いの言葉を返す。エアハルトは改めてアンナへ向き直ろうとした。


 その後ろから、また男が降りてきた。


「こちらはキースさんです!」


 アンナが嬉しそうに紹介する。


「エドワード様の家臣なんですよ」


 キースは丁寧に頭を下げた。


 他国の王子が来れば、家臣も来る。

 それはわかる。


 エアハルトが頷いたところで、小さな黒いものが目に入った。


 猫。


 黒猫がタラップを降り、アンナのそばへやってくる。周囲の人間を見回し、長い尾を立てた。


「ペットのホームズです!」


(……猫まで?)


 アンナはしゃがんでホームズを抱き上げた。


 報道陣の何人かが、すぐさまカメラを向ける。

 黒猫は、皇太子より少し先にアンナの腕へ収まった。


「可愛いでしょう?」

「……ああ」


 エアハルトは猫にまで礼儀正しく頷いた。


 ホームズは返事をしなかった。


 さらに男が降りてくる。


「カールさんは、ホーエンフェルスの家具職人さんです!」


「お初にお目にかかります」


 また一人。


「こちらはデニスさん。お料理がとっても上手なんです!」


「光栄です、殿下」


 また一人。


「この方は、アルビオンの事件でお世話になった鑑定士さんで」


 エアハルトは笑顔を保ったまま、飛空艇の扉を見た。


 まだ開いている。


 家具職人。

 調理人。

 鑑定士。


 旅をして、事件を解決し、仲間が増えた。

 それ自体は喜ばしいことなのだろう。


 ただ、事前に思い描いていた帰還風景には、家具職人の挨拶を受ける自分はいなかった。


「皆さん、とても頼りになるんです!」


 アンナが胸を張る。


 アルブレヒトは、その隣で当然のように頷いていた。


 どこまで把握している。

 いや、船の持ち主なのだから、全員把握しているに決まっている。


 エアハルトが言葉を返す前に、次の男が現れた。


 ロジャーだった。

 肩まである金髪、整った顔立ち、浅く日に焼けた肌。

 タラップを降りる姿だけで、既に華やかである。

 報道陣へ向けた笑顔がカメラに収まり、あちこちでシャッターが鳴った。


「ロジャーさんとは、サマーセットで知り合ったんです!」


 アンナが紹介する。

 串焼き屋をしていたらしい。なぜ串焼き屋がアンナの旅に参加するのか。


 エアハルトは礼儀正しく迎えた。


 礼儀正しく迎えながら、アンナへ視線を戻す。


 楽しそうだった。


 ロジャーの後ろから、クラウスが降りてきた。


 落ち着いた振る舞いの、端正な男だった。先ほどのロジャーとは雰囲気が違うが、こちらも目を引く。


「クラウスさんもサマーセットで! 海洋生物の研究者でいろんなことをご存じなんですよ」


 エアハルトは、もう一度頷いた。


 頷く回数が多い。


 知らない男の名前も多い。


 出迎えに来たはずが、いつの間にか連続面談になっていた。


 アンナは一人紹介するたび、相手のよいところを添える。料理が上手。知識が豊富。頼りになる。皆、その言葉を嬉しそうに受け取っている。


 皇太子も、笑顔で聞くしかない。


 ようやくタラップから降りてくる人影が途切れた。


 エアハルトは、わずかに息を吐いた。


「充実した旅だったようだね」


「はい!」


 アンナの返事に迷いはなかった。


「新しい仲間も、こんなに増えました!」


 そう言って、後ろを振り返る。


 男たちが並んでいた。

 黒猫もいた。

 アルブレヒトは、まだすぐ隣にいた。


 報道陣から声が上がる。


「星乙女様! 皆様で、こちらへお願いします!」


 アンナが笑顔で応じ、仲間たちを手招きする。


 エアハルトも、その輪へ迎え入れられた。アンナの隣へ進もうとしたが、ちょうどホームズを抱き直した彼女が、皆にもう少し寄るよう促した。


 男が寄る。

 さらに寄る。


「皆さん、入りますか?」


 アンナが心配そうにカメラを見る。


 記者が数歩、後退した。


「もう少し広く撮ります!」


 エアハルトは、完璧な微笑みを浮かべた。


 星乙女の帰還写真は、横幅が大変なことになった。



 ─────



 その頃、座標も定かではない何処かで──


 亜空間に、城の断片が浮かんでいた。


 尖塔。丸屋根。庭園。

 互いに繋がるはずのものが離れ、暗がりの向こうを漂っている。空間の継ぎ目はところどころ裂け、その奥には星々が覗いていた。


 大広間もまた、宙に浮かんでいた。


 黒曜石に似た床は、鏡のように磨かれている。巨大な柱が立ち並ぶが、その上部は闇に消え、天井は見えない。


 壁には、古代神殿を思わせる彫刻と幾何学紋様。


 床の亀裂や柱の紋様から漏れる光、遠くを漂う紫黒の輝きだけが、広間をぼんやりと照らしていた。


 そこに、複数の人型が集まっていた。


 高所に座る者。

 柱にもたれる者。

 豪奢な長椅子に身を横たえる者。

 床にうずくまる者。


 集まり方も座り方も、まるで揃っていない。


 露出した手足は、乾いた流木に似た色をしていた。あるいは、青みや紫みを帯びた白色。


 肉体を覆う外皮には、マネキンを思わせる硬質な質感がある。人間に近い形をしていながら、血の通った肉の柔らかさが乏しい。


 ホリスタのヴィランたちである。


 いずれも髪や顔は影に沈み、容貌を判別できなかった。


 なお、この段階ではプレイヤーに顔は公開されていない。


 広間の奥には、玉座があった。


 深くフードを被った女の人型が、そこに腰を下ろしている。顔は暗い布の奥に隠れている。


「また星乙女(スターメイデン)か?」


 ハスキーな声が、広大な空間へ反響した。


 少し離れた場所に立つ、仮面の女が答える。顔全体を覆うマスクには、表情を読み取る隙がない。


「星乙女は、各地の伝承に残る存在です」


 幾重もの薄いヴェールが、微かに揺れた。

 背の高いヴェールの女、マーツァリヤが言葉を継ぐ。


「数千年……あるいは数万年に一度」


 マーツァリヤの顔はヴェールの奥の闇に沈んでいた。


「銀河が危機に瀕した時に現れる」


 細い指先が、垂れた布の端へ触れる。


「異郷より来たる、巫女……」


「星乙女って言っても、ただの人間だろ」


 広間の端から、声がした。

 崩れかけた柱に背中を預けた男だ。

 この男も顔は見えない。


 ソファに横たわる割れた仮面をした女が口をひらく。


「何が顕れようと、どうせ、全部終わる」


 玉座のフードの人物が、跪く仮面へ顔を向ける。


「それが、我々の障害になると?」


「その可能性が」


 短い沈黙が落ちた。


 ガリ。


 静かな広間に、硬い音が響く。


 ガリ、ガリ。


 フードの人物が視線を横へ向けた。


 床にうずくまった男が、床石に齧りついていた。


 顔面は、光を吸い込むような完全な黒。

 その中に、赤い眼が二つ浮かんでいる。


 黒曜石に似た床へ歯を立て、欠けた部分を口へ収める。


 ガリ。


 よく磨かれた床が、少しずつ減っていた。


 誰も止めなかった。


「成長すれば、いずれ我々の妨げに成りかねません」


 仮面の女が告げる。


 玉座に座す主君のフードの奥から、感情は読み取れなかった。


「ならば、ローバ」


「はっ」


「星乙女の件、お前に任せる」


 仮面の女、ローバが頭を伏せた。


 その間にも、床を齧る音は続いている。


 玉座の前に、星図が浮かび上がった。


 無数の小惑星が密集する宙域。細かな光点が、帯のように連なっていた。


「マーツァリヤ」


「はっ」

 女の声が応じる。


「〈ヴェスペル小惑星帯〉を、クシュダーに食わせろ」


 名を呼ばれ床を齧っていたクシュダーが、顔を上げた。


 赤い眼が、マーツァリヤへ向く。


 マーツァリヤは恭しく頭を垂れた。


「おおせのままに」


 フードの人物は、ほかの者たちにも視線を巡らせた。


「お前たちも、力を集め、蓄えよ」


 他の人型たちも頭を下げる。


 柱にもたれていた男も、ようやく身体を起こした。


 やがて、一つ、また一つと、姿が闇へ溶けていく。


 柱のそばから影が消え、長椅子が空になる。


 残ったクシュダーは、両手を床についた。


 起き上がった姿は、少年ほどの大きさだった。真っ黒な身体を低く構え、猿のような動きでマーツァリヤへ近づいていく。


 彼女が歩き出すより先に、その左足へしがみついた。


「こら! ここで甘えるな!」


 マーツァリヤが足元を見下ろす。


 クシュダーは腕を緩めなかった。


「かあちゃん、つかれたー」




『銀河聖国(ホーリー)の星乙女(スターメイデン) ―Holy Star Maiden―』


 ヴィラン紹介



 ローバ 仮面の女幹部。能力:力を奪う。報告担当。青緑がかった銀髪。


 マーツァリヤ ヴェールの女幹部。能力:?クシュダーを拾っただけである。長い翠の髪。


 クシュダー ??? 能力:? マーツァリヤを母親と認識している真っ黒い生き物。


 ……And more!


(そろそろ本気で作者が管理できなくなってきた)

 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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