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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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15 視察ですわ!

 魔石鉱脈を見つけたら、少しは楽になると思っていた。


 グスタフ・ハーゼは、その考えを訂正した。


 探査結果の確認。掘削地点の選定。採取した原石の品質調査。規模の推定。現場から上がってくる報告を読んでいる間にも、次の報告が来る。


 会社の存続を賭けた大当たりである。

 喜びたい。盛大に喜びたい。

 しかし、喜んでいる暇がない。


「社長、領主様の視察隊が到着しました」

「わかった! 案内できるようにしとけ!」


 大型掘削ゴーレムの稼働状況を確認しながら、グスタフは声を張った。


 領主が来るのだ。発見した鉱脈を見たいというのは当然だろう。こちらとしても、現場を見てもらえるのはありがたい。


 そう考えて迎えに出たグスタフは、到着した一行を見て、いったん足を止めた。


 公女エレオノーラ。豪華な金髪に縦ロール。

 噂には聞いていたが、本当にツナギである。高級そうだが。

 執事。護衛騎士たち。メイドたち。


 ここまではわかる。


 その後ろから、眼帯をつけた銀髪の男が降りてきた。

 ヴォルフ商会会頭、アクセル・ヴォルフである。


 物流や輸出に関わる商会主が、鉱脈を見に来る。

 それも、まあ、わかる。


 さらに、玉京星(ユージン)朝第六王子が現れた。


 グスタフの隣で、社員が小声を漏らす。


「なんで領主様のお供に海賊と外国の王子が!?」

「俺に聞くな」


 鉱脈の品質なら答えられる。

 視察団の品質については、領府に聞いてほしい。


「本日はご案内、よろしくお願いいたしますわ!」


 エレオノーラは上機嫌だった。


 グスタフは慌てて姿勢を正す。誰が何のつもりで同行していようと、とりあえず領主への挨拶が先である。


「ようこそお越しくださいました。こちらへどうぞ」


 案内を始めると、掘削現場から低い振動が伝わってきた。


 大型ゴーレムが岩盤に向き合い、専用の掘削装置を押し当てている。砕かれた岩が落ち、周囲の作業員たちが合図を交わす。探査で得られた立体画像と、実際に露出した地層を照合する技術者の手も忙しい。


「今は鉱脈の広がりを確認しているところです。反応は大きいんですが、実際の量と品質を調べなきゃなりませんので」


「まあ……!」


 エレオノーラは、巨大な機械と、それを動かす人々を見比べた。


 説明を続けるグスタフの周囲に、青い枠が見えた。


 レア。


 なるほど、とエレオノーラは頷く。

 そして、すぐに掘削現場へ視線を戻した。


 今日は鉱脈を見に来たのだ。

 当たりは地面の中にある。



 ─────



「げぇ!」


 その背後で、失礼な声が上がった。


 シャオがアクセルを見つけたのである。


 アクセルは気軽に片手を上げた。


「お、テロ予備軍」

「そんなことせえへんわ!!」


 王子は即座に否定した。前方のエレオノーラに聞こえないよう、途中から声だけを抑える。


「……って、なんでや。宇宙で警備しとるんと違うんか」

「毎日戦艦で警備するわけないだろ。免許更新してただけだ」

「チッ」


 できればずっと、宇宙にいてほしかった。


 シャオが前へ進もうとすると、アクセルも同じ方向へ歩き出す。そもそも二人とも、同じ視察団にいる。


「魔石をうちの基地を経由して輸出するんだ。視察に同行するに決まってるだろ」

「それかー」


 シャオは片手で目を覆った。


 商売上、ここにいる理由がある。

 追い払えない。


「そういえば、あの武装パーツ、いい値段がつきそうだったなあ」


 覆った手の隙間から、シャオの橙色の目が覗いた。


「いや、あれは一時的におたくの倉庫をお借りしてるだけで」

「あーね」

「保管してもろてるだけやからな?」

「ふーん」


 相槌が軽い。

 武装パーツより、はるかに軽い。


 シャオは口元に笑みを残したまま、手を下ろした。


(やっぱ腹立つわーーー!!!)


 愛機は、今日も地上で建築作業に励んでいる。

 武装だけは、ヴォルフ商会の倉庫に泊まり込んだままだった。


 ─────


 エレオノーラの前に、青い光が広がった。


 掘削された岩盤の奥。

 照明に照らされた壁面に、無数の結晶が並んでいる。


 細い柱のようなものから、抱えきれないほど大きなものまで。青い水晶柱を思わせる魔石の原石が幾重にも連なり、岩の隙間を埋め尽くしていた。


 角度を変えるたび、結晶の面に光が走る。

 壁一面が、きらきらと瞬いた。


「まああああ……!」


 エレオノーラは両手を胸の前で合わせた。


 美しい。

 しかも、ただ飾って眺めるだけの石ではない。魔力を生み出す燃料だ。


「これが、全部、魔石ですの!?」

「確認できた部分はそうです。質も量も悪くありません」


 グスタフの声にも、隠しきれない弾みがあった。


「まだ調査は続きますが、かなり期待できます。探査反応との照合も進んでましてね」


 会社の未来が、青く輝いている。


 エレオノーラにも、別の未来が見えていた。


 採掘。輸送。輸出。

 新しい仕事。新しい企業。

 そして、税収。


 書類の向こうに、ようやくお金が見える。


「ノイエルデの、新しい産業ですわーー!」


 声が岩盤に響いた。


 グスタフは満足そうに頷き、さらに奥の露出部分を指し示す。エレオノーラもそちらへ顔を向けた。


 後ろでは、シャオがまだ小声で念を押している。


「売ったらあかんで」

「売るとは言ってないだろ」

「値段つけようとしてたやろ」


 青い結晶は、少し奥まで連なっていた。


 エレオノーラは、その輝きを追って視線を上げる。


「足元にお気をつけください」


 グスタフが声をかけた。


 その直後だった。


 足元で、ぱき、と音がした。


「えっ」


 地面がなくなった。


 靴の下にあったはずの感触が消え、身体が傾く。目の前の青い結晶が、急に上へ流れた。


「お嬢様!」


 ディートリヒが動いた。

 呼ぶ声と、踏み込む足音がほとんど同時に響く。差し出された手へ、エレオノーラも反射的に手を伸ばした。


 届かない。


 崩れた土と小石が、彼女と一緒に落ちていく。

 ディートリヒは一切迷わずそのまま飛び降りた。


 ずっと下から、ぼんやりした明かりが見えた。


 地下に空間がある。



 ─────


 

「お嬢様!?」


 地上では、マリーが穴へ駆け寄ろうとしていた。


 つい先ほどまで、目の前で魔石を眺めていたのだ。声も聞こえていた。なのに今は、そこに穴だけが開いている。


 ためらう間もなく踏み出したマリーを、セバスティアンが制止した。


「お待ちなさい」

「ですが、お嬢様が!」


 セバスティアンの手は、彼女を先へ行かせなかった。


 周囲では騎士たちが動き、鉱山会社の作業員も異変に気づいて集まってくる。グスタフは青ざめ、穴と随行員を交互に見た。


 鉱脈を案内していた。

 領主が地下へ行く予定は、聞いていない。


 アクセルもシャオも、口論を止めていた。


 セバスティアンは穴の周囲へ視線を走らせ、ディートリヒと主人の落ちた穴を見下ろした。


(迷わず飛び込みましたか)

(やはり見込みがある)


 セバスティアンはマリーを留めたまま、集まってくる人々にも手で制止を示した。


「皆様、穴から離れてください」


 足を止めた一行へ、落ち着いた声が続く。


「二次災害防止のため、安全に下りましょう」

(仲を深めるのです! ディートリヒ!)

 この執事、恋愛進行も担当している。

 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご覧あそばせ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 ご感想もお待ちしておりますわー! おーっほほほ!

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