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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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13 一山当てますわよ! 後編

 

 募集を始めると、応募者は来た。


 来たので、エレオノーラは期待した。


 一人目は、老婆だった。枠は緑、HN(ハイノーマル)。


 貫禄があった。


「あたしゃここが長くてねぇ」


 老婆が、経歴書の一か所を指で叩く。


「まあ。長年のご経験をお持ちですのね」


「そりゃもう。何度も世話になってるからね」


 エレオノーラは身を乗り出した。


「どちらに?」


 示されていたのは、犯罪歴の欄だった。長かった。


「違いますわ!」



 ─────



 二人目は、おっさんだった。


 枠は白。ノーマル。


 堂々と入ってきて、堂々と座り、堂々と胸を叩いた。


「俺に任せろ!」


「まあ!」


 自信がある。


 何かを任せてよさそうな声だった。


「小学校しか出てねぇが!」


「…………」


 エレオノーラは一拍置いて、尋ねる。


「領地運営のご経験は?」


「ねえ!」


「行政のお仕事は?」


「ねえ!」


「では、何をお任せできますの?」


「何でも言ってくれ!」


「任せられませんわ!」


 やる気はあった。

 やる気だけなら、よく伝わった。


 ─────



 その後も、応募者は時折来た。


 白。


 さらに次も、白だった。


「…………」


 エレオノーラの笑顔が、少しずつ固まっていく。


 求めているのは貴族の執政官だ。


 領地を任せられる人材だ。


 できれば、山になった書類を見ても笑顔のままでいられる人がよい。


 しかし、いない。

 応募者はいる。

 任せられる人がいない。


「きませんわーーーー!!」


 エレオノーラは机へ突っ伏した。


 貴族募集ガチャ。

 単発のみ。

 イベント開催中なら毎日一回無料ガチャのはずだ。運が良ければ限定キャラが引けるはずだ。


 現実には、自分で確認する経歴書と、面談の時間が増えた。


 仕事を減らそうとして、仕事を増やしてしまった。


「こんなはずでは……こんなはずではございませんわ……」


 机に額をつけたまま、呻く。


 そのときだった。


 プルルル……。


 通信端末が鳴った。


 エレオノーラの顔が、がばっと上がる。


 セバスティアンが電話を取り次ぎ、息を呑む。


「お嬢様!」


「どちらの貴族ですの!?」

「鉱山です」


「こうざん?」



 ─────



 ノイエルデの山肌に、細長い棒が何本も突き刺さっていた。


 地面にも、岩の隙間にも、斜面の途中にも。遠目には、誰かが山へ大量の杭を打ち込んでいるように見える。


 だが、棒状のスキャナーから流れ出しているのは魔力だった。地中へ広がる走査波が周囲の地層を探り、その反応を上空の船へ送り返している。


 魔石鉱脈の探査である。


 船の持ち主は、以前、騎士機(キャヴァリエ)と事故を起こした鉱山会社だった。



 ─────



「ポイントA、1から15。反応なし」


 ブリッジに、技術者の報告が響いた。


 モニターには地中の魔力反応が立体的に映し出されている。何層にも重なる地層。その間を走る、まばらな反応。


 肝心の、まとまった魔力反応がない。


 社長のグスタフ・ハーゼは、腕を組んで画面を睨んでいた。


「ポイントAは全て回収! 次はポイントBへ送れ!」


「了解」


 指示を受けた技術者が端末を操作する。別の画面では、地上の作業員たちがスキャナーの回収に取りかかっていた。


 これで何か所目だったか。


 グスタフは数えたくなかった。


「そろそろ予備の燃料もヤバいっすね」


 操舵士が、燃料計を見ながら言う。


「もう土地もらって農家やるしかねえな」


 レーダー担当が椅子の背へ身を預けた。


「俺、三ヶ月前から給料もらってねえ」


「うちも」


 副長が即座に続いた。


「うるせぇ! このまま帰れるかよ!」


 グスタフが怒鳴る。


 帰ったところで、仕事はない。


 彼らの出身星では、主要な魔石鉱脈がすでに枯渇していた。


 掘るものがなければ、仕事はない。

 仕事がなければ、金も入らない。


 船も機材も、眺めているだけで維持費がかかる。


 今回のノイエルデ調査は、余裕のある企業が新たな事業へ手を広げたものではない。社運と社員の生活と、会社そのものの存続をまとめて積み込んだ、最後の賭けだった。


 百年居住の制度で土地を得る道はある。


 ただし、全員で畑を耕すために来たわけではない。


「もっと気合い入れて探せ!」


「気合いで反応出るなら、とっくに出てますよ」


 操舵士はそう言って、もう一度燃料計を見てため息をついた。


 希望があるとすれば、発見報奨金だ。


 魔石鉱脈は、その規模によって帝国政府から数百万、場合によっては十億クレジット級の報奨金が支給される。採掘権は土地の領主持ちだが、運営は領主の抱える企業、無ければ民間に任される場合が多い。


 十億。


 未払いの給与を払い、燃料を入れ、機材を整え、家族を呼び、採掘の仕事へ進める額だった。


 もちろん、見つければ何でも十億ではない。


 そんなことは、全員分かっている。


 分かってはいるが、燃料計と残高ばかり見ていると、陰鬱になる。


「ポイントB、設置進んでます」


「よし。順次走査だ」


 グスタフはモニターへ向き直った。


 まだだ。

 まだ、ここでは終われない。



 ─────



「ポイントB1……」


 女技師が、手元の画面へ顔を近づけた。


 指が止まる。


「反応あり!」


 椅子に沈んでいたレーダー担当が、がばっと起きた。


 グスタフが身を乗り出す。


「メインへ出せ!」


 正面の大型モニターが切り替わった。


 山岳部の立体画像。その地下に、赤い光が浮かび上がる。


 一点だけではなかった。


「B5、反応!」


「B6も出てます!」


「7、8……待って。これ、大きい……!」


 女技師が表示範囲を広げる。


 赤い反応が地層の奥へ伸びていた。隣の画面にも、その隣にも、次々と同じ色が灯っていく。


 B9。

 B10。


「B15まで反応あり!」


 ブリッジの空気が変わった。


 副長が席を立ち、レーダー担当が画面へ寄る。操舵士も身を乗り出しかけて、操縦席から首だけを伸ばした。


 モニターの地下が、赤々と燃え上がっている。


 強い。

 広い。

 しかも、深い。


 点在する小さな反応ではない。山の下へ、連続した大きな反応が広がっていた。


「……これ、どこまである?」


 グスタフの声が低くなる。


「まだ範囲を取り切れてません」


「深さは?」


「追加走査が必要です。ですが、この強度なら……」


 女技師が言い終わる前に、別の反応が灯った。


 全員が黙って、それを見つめる。


 先ほどまで燃料計ばかり見ていた操舵士も、今は正面から目を離せなかった。


 グスタフが、ゆっくり息を吸った。


「来たか!?」


 誰も、すぐには答えなかった。


 画面の赤い領域が、また広がる。


「十億!?」


「「十億! 十億!」」


 副長が叫んだ。

 レーダー担当も続いた。


 気づけばブリッジに、十億コールが飛び交っている。


「十億! 十億!」


「いや、まだ認定されてねぇっすよ!」


 操舵士が言う。


 鉱脈の規模も確定していない。帝国政府の認定も受けていない。報奨金の額など、当然まだ決まっていない。


 ただし、そう言う操舵士も笑っていた。


「分かってる! 追加走査だ! 全部調べろ!」


「社長、燃料が」


「ガンガン使え!」


「さっきまで渋ってたのに」


「今使わねえで、いつ使うんだ! 掘れば魔石が燃料になる!」


 女技師が笑いながら端末へ向き直る。副長は地上班へ連絡し、レーダー担当も自分の席へ駆け戻った。


 操舵士は、赤々と広がる反応をもう一度見る。


「でもまあ……」


 その顔に、先ほどまでの疲れた諦めはない。


「未払い分に上乗せはいけるっしょ」


 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご照覧あれ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価(※星のエネルギー)と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 お嬢様への応援、皆さまからのご感想を感想欄にてお待ちしておりますわー!

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