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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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12 一山当てますわよ! 前編

「おーっほほほほ! 下々の民よ! 働いて! 働いて! 税を納め……」


「わたくしに楽をさせてくださいましーーー!!」


 エレオノーラは次の書類に署名した。下々の民が働くほど、領主の机に書類が増えていた。水道や電気のインフラを要求する請願書。

 だが、出ていく金に対して入る金が少ないのは相変わらずである。


 特に忙しい今朝はディートリヒもセバスティアンの補佐に入っていた。

 ふと端末の端に目をやると、ニュースの中にノイエルデの記事が並んでいた。


 〈開拓令嬢、人口五万人都市へ!?〉

 〈巨大竜の潜む危険な開拓惑星〉

 〈海賊の末裔が率いる商会、その実態〉

 〈急増する移民、進む軍備増強〉

 〈急速な開発で辺境ノイエルデ領府財政逼迫!?〉


「……開拓令嬢? どなたですの?」


 ディートリヒの視線が泳いだ。


「お嬢様のことです」

「な、な……」


 反論しようと記事を読み返し、椅子へずぶずぶ沈む。


「…………全て事実ですわ……」


 開拓令嬢。自分以外に、心当たりがない。


「その竜種報道を受け、冒険者ギルド帝国支部から、小型支部開設の打診が届いております」


 セバスティアンが別のタブレット画面を差し出した。冒険者やハンター、賞金稼ぎからの問い合わせが急増しているという。


「ギルド……冒険者?」


「需要の増加を受け、当地へ小型支部を開設したいとの申し入れです」


「まあ!」


 小型支部。


 エレオノーラの知識でも危険な仕事を斡旋する組織。そこまでは知っている。

 前世の偉羅の知識では、 酒場の一角に受付があり、壁に依頼書が貼ってある。仕事を探す冒険者たちが集まり、帰ってきた者が一杯やる。


 なお原作『ホリスタ』には顔のいい冒険者もいた。


「ふむふむ」


 資料をめくる。草むしり、スライム討伐、トラックなどによる資材輸送。

 割と何でも屋である。


 さらに、大型魔獣討伐。大型戦闘用ゴーレムの格納・整備施設。


「……戦闘用ゴーレム?」


 ここは銀河帝国、冒険者の活動規模が違う。



 ─────



「草むしりから竜退治まで?」


「能力や装備によって、受けられる仕事が異なります」


「領府からも、お願いできますの?」

「依頼内容に応じて、人員を募集・派遣してもらえる可能性がございます」


 エレオノーラの目が輝いた。


 草をむしる人。荷物を運ぶ人。工事を手伝う人。


 全部欲しい。


 竜を退治できる人も、当然欲しい。


「大歓迎ですわ!」


 先ほどまで、ギルドの仕組みをよく知らなかったが、今はもう、来てほしかった。


 エレオノーラは次のページへ進む。


 総合受付。依頼斡旋窓口。事務・管理部門。


 ここまでは分かる。


 訓練場。

 大型戦闘ゴーレム・人機用ハンガー。

 整備施設。部品倉庫。

 医療・救護施設。宿屋。

 装備・資材保管施設。


「でも、これを扱う組織なんですの?」


「はい。銀河各国にまたがる、巨大な独立組織でございます」


 国家ごとに権力や影響力は異なるが、単なる職業斡旋所ではない。今回の申し入れは、その帝国支部系統からだった。


 エレオノーラは、端末の施設一覧をもう一度見た。


 依頼掲示板を貼る壁だけ用意すればよい、という話ではなさそうだった。



 ─────



 セバスティアンは資料を確認しながら、各所への連絡を進めていた。


 人手が増えるのは歓迎すべきことだ。しかし、武装した者が大量に流入するなら、治安面の備えも必要になる。


 テロ対策。ゴーレム防衛機構の整備。


 公爵家への連絡事項へ、それらを加える。主人が冒険者の仕事一覧へ夢を膨らませている間にも、端末の送信履歴は増えていった。


 隣では、会計担当イルゼが書類の山から新しい資料を受け取っていた。


 さらにその横では書類の山に隠されるようにネーベルもいた。


 眼鏡を押し上げ、机の端を空ける。


 空けた場所が、すぐディートリヒの持ってきた書類で埋まった。


「本日夕方より、ギルド代表から会談の申し出が入っております」


 ディートリヒが予定を確認する。


「先方は、お嬢様のご都合に合わせて時間調整が可能とのことです。竜種素材を希望する者も激増しているそうで、早めにお話ししたいと」


「まあ! こちらも早くお願いしたいですわ!」


 ─────


 夕方の会談で、ギルド代表は丁寧に挨拶した後、支部開設の趣旨を説明した。


 エレオノーラは大きく頷く。


「当地は、とにかく人手が足りませんの。運搬や建設補助も依頼できるのでしたら、大変助かりますわ」


「ご依頼に応じ、対応できる冒険者を募ることが可能です」


「探索や調査も?」


「はい」


「大型魔獣への対応も?」


「必要な力量と装備を備えた者を手配することになります」


 草むしりを頼んだ人が、そのまま竜へ向かうわけではない。エレオノーラは理解した。


「では、施設のお話を伺いましょう」


 代表が計画資料を表示する。


 機材を保管し、整備する場所。大型ゴーレムを収容するハンガー。その周辺を含む配置案が、画面へ広がった。


「……小型支部ですわよね?」


「はい」


 返事に迷いがない。


 エレオノーラは図面の縮尺を確認した。


 小型だった。


 ギルドにとっては。


「設備構成は、今後の協議で調整いたします。ただ、大型機材を扱う場合、用地と搬入経路の確保が必要になります」


「搬入経路」


「重量機材が通行できる道路です」


 ネーベルが確認事項へ書き込む。


 仕事をお願いするための仕事が、順調に増えていた。


「建設費と、周辺インフラの整備費については?」


 イルゼが質問する。


「負担範囲を含め、協議させていただければと」


「ええ。そこは、よく協議いたしましょう」


 エレオノーラは背筋を伸ばした。


 しっかり、よく。

 念入りに。

 できれば安く。


 進出は歓迎したい。人も仕事も集まり、領府の作業を外注できる窓口ができる。


 だからこそ、勢いだけで頷くわけにはいかなかった。



 ─────



 会談後、エレオノーラは財政資料を開いた。


 施設の正式な規模も、費用分担も、まだ決まっていない。しかし、インフラ接続や道路の調整に備え、予算を確認しておく必要がある。


「ペンライトの収入は?」


「こちらです」


 示された数字を見て、少し元気になった。


 よく売れている。

 ありがたい。


「では、残金は?」


 別の欄を示される。


 元気がなくなった。


 収入はある。支出もある。収入ははるかに少ない。


 しかも支出のほうには、まだ待機中の案件まで並んでいた。


 そこへ、ギルド進出に伴うこちらの整備負担が加わる。


「お金が……」


 エレオノーラは、進出計画の資料へ目を戻した。


 そのための用地と道路と電力と水道。


 顔を上げると、イルゼもネーベルもセバスティアンも資料を見ていた。誰も、都合のよい数字へ書き換えてはくれない。


 エレオノーラは端末を両手で握った。


「お金がございませんわーーーー!!!」

 金欠は、何重にも重なっていた。



 ─────



 エレオノーラの机には、今日も書類が積まれていた。昨日片づけたはずの場所へ、昨日より高い山ができている。


「……おかしくありませんこと?」


 なぜ、自分の仕事がここまで増えるのか。


 人が増えれば仕事も増える。


 そういう説明は、もう聞いた。


「人を増やすために人を募集して、その人を受け入れるための仕事が増えておりますわ!」


 募集しても忙しい。

 募集しなくても忙しい。


 どういう難易度設定なのか。


 エレオノーラは書類を置き、腕を組んだ。


 一般の行政官を集めるだけでは追いつかない。日々の実務をこなす人も必要だが、その上で判断し、運営を任せられる人間が要る。


 街区や領地を、まとめて預けられるような。


「……貴族」


 エレオノーラの顔が上がった。


「執政官、つまり貴族募集ガチャですわ!」


 そうだ。


 領地を運営できる人間が欲しいなら、領地を運営できる貴族を直接募集すればよい。


 なぜ今まで気づかなかったのか。


「はじめからこうすればよろしいんですの!」


 机の上の書類を見渡し、満足げに頷く。


 この山を任せられる人を引く。


 そう思うだけで、少し景色が明るくなった。



 本日は2話更新します。

 長くなってしまったので前後編にしました。


 最後まで読んでくださりありがとうございます。

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