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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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8 アンナside 霧冠の幽█_ 後編

 ノイエルデの執務室で、エレオノーラは書類から顔を上げた。


「そういえば、アンナたちは、いまどこにいますの?」


 セバスティアンがタブレット端末を操作し、帝国側で確認できる最新の渡航記録を開く。


「最新の入管記録によれば、アルビオン星間王国の惑星サマーセットを経由し、主星ロンディニウムに滞在中とのことでございます」


「季節イベント、限定イベント、そのあとは帝国で本編ですわね。わかりましたわ」


 即答だった。


 セバスティアンは端末と主人の顔を見比べた。伝えたのは現在地だけである。現地で何をしているかまでは、まだ報告していない。


「これだけで、星乙女の動きを把握できるのでございますか?」


「まだ序盤ということだけなら」


 エレオノーラはあっさり頷き、書類へ視線を戻した。


 セバスティアンは一拍置いてから、端末を閉じた。



 ─────



 通りは混乱していた。悲鳴が上がり、人々が逃げ惑っていた。


「伏せろ!」


 ロジャーが前へ出た。


 巨体が持ち上がったことで、垂れた肉の奥に一瞬だけ隙間ができていた。その中心へ、石畳を蹴って踏み込む。


 腰をひねり、拳を叩き込んだ。


 重い衝撃が通りを震わせる。肉の表面が深く陥没し、その奥まで波打った。


 エドガーだったものが傾く。


「騎士機の投入は!」


 マクシミリアンが声を張った拍子に、ボタンが一つ弾け飛ぶ。アンナは思わず目で追った。ボタンの限界だったようだ。


「住宅街では無理だ! 被害が増す!」


 アルブレヒトが叫び返す。


 まだ殴り続けるロジャーがアルブレヒトの視界に入る。


「そこを離れろ、ロジャー!」


 アルブレヒトの蛇腹剣が伸びた。


 魔力を通した刃が弧を描き、ロジャーの崩した箇所へ走る。


 刃が中心部を穿つ。


 巨体が大きく裂け、紫黒い液体が溢れ出した。

 頭だった部分が地面に落ちる。


 頭を失っても、巨体は止まらなかった。


 こんな敵は知らない。


 弱点も、攻略手順もない。何度攻撃すれば倒せるのかも、次に何が起きるのかもわからなかった。


 背後から、警備兵の声がした。


「負傷者が通る! 道を空けてくれ!」

「軍は何をしてるんだ!」

「助けて!」


 まだ、逃げている人がいる。


(私がやらなきゃ。)


 アンナは足を止めた。


「……ここで、止まって!」


 杖に似た魔導ユニットに光が集まる。


 周囲を舞う砂埃が白く輝き、迫る巨体の影を押し返した。


 狙う場所は見えていた。


 ロジャーが崩し、アルブレヒトが穿った傷口。


 そこへ、光を放った。


 白い奔流が怪物の内側へ突き刺さる。


 巨体が跳ねた。


 裂け目から光が漏れ、紫黒い液体が蒸発するように消えていく。折り重なった肉の奥まで白く透けた。


 アンナは息を詰めたまま、光を注ぎ続けた。


 やがて巨体が力を失った。


 重い音とともに崩れ落ち、今度こそ動かなくなる。


 通りに残ったのは、崩れた壁から小石が転がる音だけだった。


 アンナは怪物の残骸を見つめていた。


 魔導ユニットを握った指が、まだ震えている。


(こんなの、ゲームになかった。何が起こってるの?)


「アンナ」


 アルブレヒトが隣に立った。


「怪我は?」


「……大丈夫」



 ─────



 ところが事件が片づくと、話は妙なところで原作へ戻った。


 エドワードからは改めて協力への礼を告げられ、今後も力を貸すと約束された。


 キースも、アンナたちに同行することになった。


 事件に関わった鑑定士まで仲間に加わる。


 そして、黒猫ホームズ。


 こちらは加入の挨拶もなく、当然のようにアンナの肩へ乗った。


「……あなたも来るの?」


 ホームズはあくびをした。


 返事はなかったが、降りる気もなさそうだった。


 アンナの視界に、見覚えのある表示が浮かぶ。


 NEW!


 【ペット機能が解放されました】


(……あれ?)


(途中が少し変わっただけ?)


 アンナはホームズの背をもう一度撫でた。


 ホームズが喉を鳴らした。



 ─────



 船内に賑やかな音が響き始めた頃、アルブレヒトは届いた報告書を開いていた。


 サマーセットで倒したイソギンチャクの魔物と、今回のエドガー。


 両者に共通するものが見つかったという。


 あれほどの巨体になりながら、エドガーの総魔力量は、人間として異常な値ではなかった。


 一方、体内組織、とりわけ血液から、紫黒色の未知物質が検出されていた。配下が分析を進めているが、正体はまだわからない。


 アルブレヒトは画面を送った。


 星乙女は、確実に事件を嗅ぎつけている。


 アンナが進む先には、必ず異常がある。

 だが、彼女の語る「先見」は、現実とずれ始めていた。


 あの驚愕は演技ではない。


 アンナも、エドガーの変貌を知らなかったのだ。


 報告書の末尾には、その背後にいた存在について記されていた。


 配下が撮影した画像。建物から見下ろす紫黒の影。人型だが、それ以上は、はっきりしない。


 アルブレヒトは目を細めた。


 誰かがエドガーに力を与えた。それがあの異常な肉体を生んだのか。


 考え込んだところへ、軽快な笛の音が飛び込んできた。



 ─────



 ラウンジエリアでキースが笛を吹いていた。


 エドワードのヴァイオリンが、跳ねるような旋律を追いかける。


 さらにアコーディオンが重なった。


 ルーカスだった。なぜ弾ける。


 ルーカスなら弾けるのだろう、という顔で皆受け入れていた。


 いつの間にか、船内は民族音楽の合奏会になっていた。


 アンナは笑顔で手拍子を打っている。


 隣のコンラートも、ひとまず手を叩いていた。楽器はできないが、参加する意欲は十分らしい。


「いいぞ! もう一曲!」


 ロジャーが酒の入った杯を掲げる。


「まだ今の曲が終わってないだろう」


 そう言うクラウスも、杯を持つ手で拍子を取っていた。


 マクシミリアンは骨付き肉を食べている。


 アンナが楽しそうに笑い声を上げた。


 アルブレヒトは、その横顔をしばらく見ていた。


 笛と弦の音が賑やかに重なる中、アルブレヒトは口を開いた。


「一度、帝都に戻る」




Holy Star Maiden.exe

Event Synchronization Error

Scenario Sequence Mismatch Detected

Cause: ERA

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