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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第四章 領主エレオノーラ、爆進ですわ!

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2 その道のプロにお任せですわ!

 

 エレオノーラとルオ・シャオが、にこやかに互いの腹を探っていたところへ、血相を変えた部下が駆け込んできた。


「殿下」

「なんや。今、移民街の相談してるんやけど」

「その前に、こちらを……」


 差し出されたタブレット端末を見る。


 ルオ・シャオの笑顔が止まった。


「え?」


 請求書。


 なかなかの額だった。


 二度見した。


「……ねぇ。なんか、多額なんやけど。この請求書」


 シャオは一般移民に紛れて、ちょっとノイエルデを見物するつもりだった。


 王族だとは、すぐにばれた。

 まあ、それはいい。書類も通っているし、領主とも話ができた。


 その間、お付きの輸送揚陸艦には、目立たない場所で待機するよう命じていた。


 それだけだったはずである。


「何があったん?」

「艦長から、直接ご説明を」


 通信画面が開く。


 明らかに顔色の悪い男が現れた。


『……り、臨検されまして……』

「なんで?」

『目立たないようにしてたら……』

「うん」

『戦艦に見つかりまして……』

「なんて?」


 シャオは端末を少し顔に近づけた。


「パトロール来なそうな場所、選んだやろ」

『ですから、その、小惑星の陰で殿下をお待ちしとりましたら、ライセンス更新とかいう訓練中の戦艦が……』

「訓練」


 運が悪すぎる。


『主砲を全門、ど正面から突きつけてきはりまして』

「全門」

『生きた心地がいたしませんで……』


 艦長が一度、画面の外を見た。


『さらに基地からの救援や言うて、駆逐艦が二隻、実弾満載でワープアウトしてきはりました』

「は?」

『邪魔な岩塊を粉々にしながら』

「待って。救援て、誰の?」

『向こうの戦艦の』


『今も戦艦の主砲にロックオンされてます』

「は??」

『駆逐艦にべた付けされてます』

「もう一隻は?」

『ほかに船が隠れてへんか、警戒中です』


  シャオは端末から顔を離した。


「……あかん」


 目立たないように隠した船が、現在もっとも重点的に見られている。


 見物に来たのに、こちらが見物されていた。


『工作用や建築用の人機は、見逃してくれはったんですけど……』


 シャオの視線が、請求書へ戻った。


「……まさか」

『殿下の人機だけ、武装してまして』


 沈黙。


 王子の機体である。

 お気に入りのカスタムされた人型汎用駆動機械。


 今回はよくなかった。


『国際法やら友好条約やらに引っかかる言うて、向こうの艦長、えらい楽しそうに笑ってはりまして……』

「そこ、楽しむところやないやろ」


 艦長はまた画面の外を見た。


 シャオもつられて、何も映っていない画面の端を見た。


『接収だけは免れました』

「それはよかった」

『せやけど、大事にしたないんやったら分かりますよね、と』

「全然よくなかった」


 請求書をスクロールする。


 臨検手数料。特別通行料。デブリ撤去費用。


 緊急出動した艦艇の燃料費。


「デブリ撤去って、さっき言った粉々にした岩?」

『おそらく』

「自分らで砕いたんやろ?」

『安全確保のためやと……』


 シャオは天井を仰いだ。


 もうやだ。


「この、その他は?」

『私も伺いました』

「うん」

『密輸船扱いで正式に拿捕手続きへ回してもいいんだぞ、と』

「説明ちゃうやん」


 シャオは合計額を見る。


 罰金にしては、丸が三つほど多い気がする。


「たかられとるやん!」


「せやから最初から、ちゃんと外交部を通して連絡しとけばよかったんですわぁ!」


 隣に控えてた部下が、ついに言った。


 ルオ・シャオは顔を背けた。


 部下は目をそらさなかった。


 この請求額を前にすると、主従の遠慮も少し薄くなるらしい。


「……向こうの艦長、名前は?」

『アクセル・ヴォルフと』

「ヴォルフ……なんや、聞き覚えあるな」


 部下が小声で補足した。


「昔、海賊やった一族です」

「なんで海賊に臨検されてんの!?」

「現在はノイエルデ開拓軍の傘下です。ここの宇宙基地の所有者でもあります」

「……あ、あぁー……」


 なるほど。

 所属が保証された海賊である。


『アイパッチに、ギザ歯の怖いお兄ちゃんで』

「もろ海賊丸出しやないかい」


 画面の艦長が、深くうなずいた。


 見た目と請求書に、一貫性がありすぎる。



 ─────



「ご相談は終わりまして?」


 涼やかな声に、シャオが振り向いた。


 エレオノーラが待っていた。

 その後ろにはセバスティアンが控えている。


 シャオは、いつもの笑顔を作ろうとした。


「……あの」

「はい?」

「これなんやけど」


 請求書を見せる。


 エレオノーラは目を落とした。

 ちょっとだけ見開かれる。

 罰金としては法外な額であった。


「武装機体の持ち込み? まぁ怖い」


 絶対に怖いと思っていない声音である。


 ずらりと並ぶ請求と諸経費。

 最後の合計額で、まばたきを一つ。


「いやあ、これはいろいろとありまして……」


 シャオは笑った。


 エレオノーラも笑った。


「値引きとかは……」


 エレオノーラの扇が、さささと開いた。


「わたくし、軍事は素人ですので。その道のプロの方にお任せしておりますわ」


 見事だった。


 さっきまで、王族相手にも土地制度を曲げなかった領主が、今は慎ましい素人になっている。


「……そちらの艦長さんに?」

「ええ。直接ご相談いただくのがよろしいかと」


 笑顔に隙がない。


 シャオは請求書を見た。

 エレオノーラを見た。

 もう一度、請求書を見た。


「……さいですか……」


 通信画面の艦長が、しょんぼりしている。


 隣の部下も、しょんぼりしている。


 シャオは小さく息を吐いた。


「ほな、そのヴォルフ艦長に繋いでもらおか……」


「ごゆっくりどうぞ」


 エレオノーラは、にっこりした。



 ─────



「戦艦の燃料代が浮いたぜ!」


 一方、その道のプロは上機嫌だった。


 戦艦のブリッジで、アクセル・ヴォルフが請求明細を眺めている。


 主砲はまだ、ユージンの輸送揚陸艦を向いていた。

 駆逐艦も、ベタ付けで仕事をしている。


 満面の笑顔。


 仕事をしたうえで、この顔である。


「向こう数年分の酒代も浮きそうですよ」


 副官が言った。

 

 アクセルはギザ歯を見せた。


「あったりめーだろ! 物騒なもん、コソコソ持ち込もうとしてるほうが悪いんだからよ!」


 試験官が、眉間を押さえた。


「アクセル・ヴォルフ艦長」

「はいはい。聞いてますよ、試験官殿」

「危機管理能力は認めます」


 アクセルが胸を張った。


「でしょうよ」

「ただし、その強欲さだけはマニュアルで取り締まれないのが、我が査察部最大の不覚です」


「へぇへぇ、褒め言葉として受け取っときますよ」


 試験官はため息を吐いた。

「……合格です。納得はしてませんが」

「あざーっす!」

 返事だけはよかった。


 アクセルはコンソール脇のマグカップを取った。


 訓練開始前から、飲もうと思っていたコーヒーである。

 すっかり冷めてしまった。


「艦長。ユージンの第六王子から通信要請です」

「おう。繋いどけ」


 値切りに来るのだろう。


 アクセルは合計額を、もう一度眺めた。


 なかなかいい数字だった。


 不敵に笑い、今度こそ天然もののコーヒーを喉へ流し込む。


 非常に、うまかった。


 海賊はやめて、現在は商人のはずですが一瞬で海賊に戻りました。

 その道のプロですから。


 最後まで読んでくださりありがとうございます。


「皆さま、ご照覧あれ! 画面の下にある【☆☆☆☆☆】評価(※星のエネルギー)と【ブックマーク】は、我が惑星を開拓するための貴重なエネルギー資源ですわ!」


「……ええ、維持費もガチャ代もシャレになりませんので、何卒ポチッとよろしくてよ!」


 お嬢様への応援、皆さまからのご感想を感想欄にてお待ちしておりますわー!

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