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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第三章 辺境惑星、大繁盛ですわ!

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20 こういう時こそガチャですわ〜!

「二十億クレジット……」


 金髪の縦ロールが机に突っ伏した。


 初期資金十億クレジット。

 追加資金、十億クレジット。


 足せば二十億。立派な大金である。

 それが、もう底をつきそうだった。


「わたくしに領主の才能などございませんの……しくしく」


 机の上には請求書。

 泣いても金額は変わらない。


 税収は焼け石に水であった。


「お嬢様。開拓が進んでいるからこその支出でございます」


 セバスティアンがイケボで慰める。


 エレオノーラの心が潤う。

 だが、イケボで財政は潤わない。


「でしたら、残高も少しは増えてくださっても……」


 そのとき。


 ピコン♪


 端末に通知が届いた。


『ノイエルデ開拓補助金について』


 エレオノーラの顔が、机から上がった。


 件名を読む。

 もう一度読む。


「補助金ですわ〜!」


 仮設役所の執務室に、明るい声が響いた。


 エレオノーラは端末を両手で持ち、届いた通知を見つめていた。


 ノイエルデ開拓への正式支援。


 何度読んでも、いい言葉だった。


「助かりますわ! これで、あちらの工事も、こちらの支払いも!」


 机の上には請求書が並んでいる。


 右を見れば燃料費。

 左を見れば資材費。

 正面には、まだ開いていないものがある。


 そこへ補助金である。


「監査役を送り込まれたときは、どうなることかと思いましたけれど!」


 エレオノーラは正式通知を開いた。


 読み始めた。


 笑顔が、少しずつ薄くなった。


「……交付前に、改めて監査?」


「はい」


 傍らのセバスティアンが頷く。


「この間、いたしましたわよね?」

「いたしました」

「その監査に基づいて、支援が決まりましたのよね?」

「はい」


 エレオノーラは通知を見た。


 支援を決めるために監査した。

 支援を受けるために、また監査する。


「監査を通ると、次の監査へ進めますの?」


 セバスティアンは答える代わりに、次の項目を示した。


 監査結果をもとに、皇太子エアハルトの指揮のもと、適切な交付額を決定する。


『適切な』。


『エアハルトの指揮』。


 エレオノーラは真顔になった。


「…………」


 文字を見比べる。


 何度見ても、同じ文章の中に入っていた。


「セバスティアン」

「はい」

「この『適切な』、どなたにとって適切なんですの?」

「通知には、そこまで記載されておりません」


 嫌な予感しかしなかった。


 エレオノーラは画面を下へ送った。


 補助金交付予定。


 半年後。


「…………」


 もう一度、上へ戻した。


 下へ送った。


 半年後。


「今すぐではないのですの!?」


 端末を持つ手が震えた。


「半年! 半年後!?」


「予定では」


「今、予定にまで不安を足さないでくださる!?」


 エレオノーラは机の上を指差した。


「こちらは今月! こちらは来月! こちらに至っては、早急にと書いてありますわ!」


 請求書は、こちらの事情を待ってくれない。


 上水道は中心部こそほぼ完成したが、下水道はまだほとんど手つかず。

 燃料も通信網も行政施設も道路も、金を入れなければ増えない。


 エレオノーラは椅子の背へ倒れ込んだ。


 補助金は来る。


 来るらしい。


 それまで、自力で生き延びろというお知らせだった。



 ─────



「……そうですわ」


 エレオノーラが身を起こした。


 セバスティアンを見る。


「わたくしのドレスを売れば、多少は足しになるのではなくって!」


 ある。

 高いドレスなら、ある。


 一着百万クレジット級。

 前世の感覚なら、一千万円ほどである。


「何着か手放せば、まとまったお金になりますわよね!」


「お嬢様」


 静かな声だった。


 エレオノーラは口を閉じた。


「…………」


「もう嫌な予感しかしませんわ」


 セバスティアンが、工事予算の資料を開いた。


 机へ置く。


 指先で、金額を示す。


「丸が最低二つ足りません」


 エレオノーラは、数字の端から順番に目を滑らせた。


 途中で、もう一度最初に戻った。


「……二つ」


 小さな丸が二つ増えるだけで、ドレスが急に頼りなくなった。


「下水道工事の予算にすら……届きません」


「わかっておりましたわ」


 扇を開いた。


 顔を隠した。


 上等なドレスを売っても、下水道にすらならない。


 惑星経営は、服を何着か処分してどうにかなる規模ではなかった。


「……では、着ますわ」

「それがよろしいかと」


 ドレスの用途が、無事に服へ戻った。



 ─────



 エレオノーラは、扇の上から机を見た。


 金が足りない。

 人も足りない。


 ふと、顔を上げる。


「そうですわ!」


 セバスティアンが目を向けた。


「ガチャ!」


「お嬢様」


「こんな時にはガチャですわ!」


 椅子から立ち上がった。


 資金の問題は残っている。

 しかし、人材不足も立派な問題だ。


 即戦力が来れば仕事を任せられる。

 仕事を任せられれば、こちらも別の仕事に手が回る。


 何より、美形が来るかもしれない。


 目に良い。健康に良い。


「有能な行政官! 頼れる財務の専門家! そして、お顔もよければなお結構!」


 エレオノーラは扇を閉じた。


「面談を再開いたしましょう!」


 セバスティアンが、別の通知を取り出した。


「その件ですが」


「……その前置き、今日はもう聞きたくありませんわ」


「皇太子殿下の指示によって、審査が厳格化されます」


「どうしてですのーーーー!!」


 執務室の外で、誰かの足音が一瞬止まった。


 また動き出した。


 領主の叫びにも、職員たちは慣れつつあった。


「お金は半年後! 人材は審査! わたくしに何をしろと!?」


「開拓かと」


「存じておりますわ!」


 エレオノーラは二通の通知を並べた。


 婚約は破棄したのに、書類ではやたらと会う。


「あんの根性なしのへそ曲がり皇子! ハメましたわねーーー!」


「お嬢様、お言葉が」


「お言葉くらい自由にさせていただきたいですわ!」


 扇で二通まとめて指す。


「どうして、この方のお名前があるだけで、こんなに仕事が進まなくなりますの!?」


「《ヴァルテンベルク》で一度、審査状況をご確認なさいますか」


 エレオノーラが止まった。


「直接?」


「はい。現在の受け入れ状況も、併せてご覧いただけるかと」


 数秒、考えた。


 決めた。


「向かいますわ!」


 通知を机へ置く。


「直接向かって審査しますわ!」

「では、手配いたします」

「こういう時こそガチャですわ!」


 足取りが急に軽くなった。



 ─────



「基地に戻れだぁ?」


 別の場所で、アクセル・ヴォルフが通信画面へ顔をしかめていた。


 映っているのは、弟だった。


 肩から上には影がかかり、顔は見えない。


「なんだよ。こっちだって遊んでるわけじゃねえぞ」


 アクセルは手元の端末を指で弾いた。


「仕入れのネタとか、ずっと送ってるだろ。米とか小麦とかさぁ!」


 人が増えれば、食い物が要る。

 食い物が要れば、仕入れと輸送の仕事になる。


 ノイエルデには、その仕事がいくらでもあった。


『その件じゃない』


 アクセルは口を閉じた。


 少し考える。


「……じゃ、何だよ」

『戦艦艦長資格の更新訓練。ずっとサボってるだろ』


「…………」


 アクセルが止まった。


『戻って受けろ』

「いや、今ちょうど、こっちが忙しくてな」

『そう言って前も来なかった』

「実際、忙しいんだって」

『これは俺には代われないからな』


 逃げ道を先に塞がれた。


 アクセルは椅子へ深く座り直した。


 仕事は部下へ振れる。

 運営は弟と分担できる。


 だが、本人が受ける訓練には、本人が行かなければならない。


 融通の利かない仕組みだった。


『聞いてるか』

「聞いてるよ」

『なら戻れ』


 アクセルは、心底嫌そうに顔をしかめた。


「…………チッ」

 1クレジット10円です。 

 他にも魔法の原理とかそのうち出したいです。


 最後まで読んでくださりありがとうございます。

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