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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第三章 辺境惑星、大繁盛ですわ!

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13 おもしれー女いただきましたわ!

 


「落ち着いてください! 我々は敵ではありません!」


 職員が魔導翻訳機へ叫ぶ。


 翻訳機が何かを喋る。

 住民たちが喋り返す。


 「シュルシュル」「ギャアギャア」「シャア」


『戦の神』

『大いなる翼』

『空を歩く』


「ええと、避難を……こちらへ!」


 上空で爆音が響いた。


 巨大な騎士機が翼を広げ、人間がその隣を飛んでいる。

 その周囲へ、さらに何十もの姿が現れては消えた。


 魔法の光が、赤い巨体を照らす。


 住民たちは空を見つめた。


「皆様、そちらは危ないですから」

 職員が声をかける。


 一人が膝をついた。


 隣もついた。


 次々と、砂浜へ平伏していく。


「……あれ?」


 職員が翻訳機を見た。


 ネーベルは魔法を維持したまま、ちらりと横を見る。


「何か誤解されてませんか?」

「立っていただかないと、避難できませんわ!」


 エレオノーラが手を差し伸べる。


 目の前の住民は、さらに頭を低くした。


「低くなる方ではなく!」


「なあ、まだ俺の出番ない?」

「ヴォルフ様は、その方々を船の陰へ!」

「はいはい」


 アクセルが動き出したところで、クレーメンスが口を開いた。


「僕の」

「あなたもですわ!」



 ─────



 ワイバーンの翼が、大きく空を打った。


 だが、先ほどまでの勢いはない。

 追っても追っても相手が消え、そのたび違う方向から攻撃される。


 首を振り、苛立たしげに吠えた。


 ネーベルが、その動きを見上げる。


「進路を空けます。島の奥へ誘導できますか」

『了解』

『承知しました』


 ディートリヒとセバスティアンが左右へ分かれた。


 空中の幻影が、ひとつの大きな群れとなって動く。

 ワイバーンがそちらを追いかけた。


 地上には、別の景色がかぶさっていく。


 船も、人も、建設途中の柱も。

 ひと続きの岩場と木々に隠れた。


 クレーメンスが声を上げかけ、老執事に袖を引かれた。


 今度は黙った。


 上空の二人がワイバーンの向きを調整する。

 やがて巨体は浜辺を離れ、荒らされた巣のある方へと飛び去っていった。


 羽ばたきが遠ざかる。


 ネーベルが腕を下ろした。


「……私は監査役なんですが」


 その隣で、職員が翻訳機を持ち直す。


 住民の一人が、遠ざかる赤い翼を指差した。


『あれは、昔から島にいる』


 指が動く。


『手を出したのは、あいつ』


 全員が、クレーメンスを見た。


「……」


 クレーメンスは老執事を見た。


 老執事は目を閉じた。



 ─────



 ディートリヒが戻り、セバスティアンがエレオノーラの傍らへ降り立った。


 エレオノーラは扇を閉じる。


「それで。あなた、無断でわたくしの領地に入り、勝手に島を占有し、現地住民と揉め、ワイバーンの巣まで荒らした、と?」


 クレーメンスは視線を泳がせた。


「……簡潔に言えば」

「簡潔に言わなくても同じですわ!」


 扇の先で、砂浜に散らかった建材を指す。


「これの、どこが救難だけで済む話なんですの!」

「……だが! ここを開拓したのは僕だ!」


 クレーメンスは胸を張り直した。


「そして、連絡は後からでもいい! つまり、ここは僕の島だー!」


 エレオノーラの扇が、ぴたりと止まる。


「さっきから聞いていれば。あなた、本来であれば、わたくしに話しかけることすら許されない身分なんですのよ!」


 クレーメンスが口をつぐんだ。


 エレオノーラはひとつ息を吐く。


「とにかく、あなたには出頭していただきますわ」


「待て! この島の所有権は!?」


 エレオノーラは周囲を見た。


 こちらをうかがうトカゲ型現地住民。

 ワイバーンが去った空。

 散乱する荷物。


 そして、目の前の子爵令息。


 すう、と息を吸う。


「この惑星はー!」


 クレーメンスが肩をすくめた。


「成層圏の空気からー!!」


 エレオノーラは、扇で足元を指した。


「惑星中心核(コア)に至るまで、わたくしのものですわーーー!!!」


「中心核まで!?」


「領主権の説明としては、豪快すぎませんか」


 ネーベルの隣で、アクセルが腹を抱えた。酸欠に至りそうである。


 そして、魔導翻訳機が働いた。


 律儀に。

 最後まで。


「あっ」


 職員が停止ボタンへ手を伸ばす。


 遅かった。


「オオーー」


 住民たちが、一斉に地面へ伏せた。

 先ほどよりも、深く。

 エレオノーラに恭順の意を示した。


「ほら! 絶対何か誤解されましたよ!」

「わたくし、何もしてませんわよ!?」


 アクセルは、もうまともに立っていられなかった。


「ははっ……おもしれー女!」


 エレオノーラが振り向いた。


「……!」


 目が輝く。


「初めてリアルで、おもしれー女いただきましたわ!」


「お嬢様、喜ぶところではございません」


 セバスティアンの声に、アクセルがさらに笑い崩れた。



 シルバーウィークなので2話投稿しました。

 最後まで読んでくださりありがとうございます。

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