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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第三章 辺境惑星、大繁盛ですわ!

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7 優秀なスパイ?

 夜。


 プレハブ宿舎の一室で、ユリウス・フォン・アイゼンは端末へ向かっていた。


 新領主邸の設計図、盗聴器の配置、道路計画、港湾設備、軍施設の位置。

 アクセル商会の要求と、巨大宇宙基地の移籍交渉まで、重要情報はすべて揃っている。


 圧縮、暗号化、分割。授業教材、出席簿へ巧妙に偽装した。


「完璧だ」

 ユリウスは送信ボタンを押した。



 ─────



 数十分後、本国アルビオンから返信が届いた。


「早いな」


 期待に胸を膨らませ、添付ファイルを開く。


 黒い。


 設計図も、軍施設の位置も、交渉記録も、盗聴器の配置も、見事に黒塗りされている。


 中央にはどんと赤い文字。


 《検閲済み》ヴァルテンベルクの紋章。


「何をどう見破った!?」


 圧縮も暗号化も分割も、形式変更もした。

 それなのに解読、ご丁寧に黒塗りされている。


 本文には、さらに短い叱責が添えられている。


『学校の近況報告ではなく、茶葉の生育状況(ノイエルデの開拓)に関する情報を送れ。再提出を命ずる』


「送るそばから全部見つかっているのか!?」


 そうとしか考えられない。


 机を叩いた。


 残った資料を確認する。


 学校行事の日程、給食の献立今週の天気、子供たちの出席率。


『児童の出席率向上は評価する。引き続き教育任務に励め』


「そこは評価しなくていいんだが」


「こうなったら……直接持ち帰るしかない」


 電気も上下水道も校舎もろくに整っていない未開の惑星である。なんの未練もなかった。帰りたくて仕方がない。


 ユリウスは端末を閉じ、データを保存した記録媒体をかばんへ移した。


 夜の港へ向かい、輸送表示を確認する。


 《ヴァルテンベルク》方面。


「帰還だ……!」


 人目を避け、貨物コンテナへ滑り込んだ。



 ─────



 ガコン。

 コンテナが揺れた。

 ドン。


 腰を打った。


「っ……」


 さらに揺れ、箱の角が肩へ当たる。


 次は頭を打った。その次は膝を打った。


 最後に、かばんが美形の顔面へ飛んできた。


 「ブッ」


 やがて振動が止まった。


「着いたか」


 ユリウスは慎重に扉を開けた。


 光の向こうにあったのは、鉄骨、足場、建築資材。

 工事現場だった。


「…………」


 空は突き抜けるほど青い。


 鳥まで飛んでいる。

 まだ地上だった。


「お、新入りか」


 作業員が駆け寄ってきた。


「人手が足りないんだ。ヘルメットをかぶって、そこの箱を運んでくれ」


「違う! 私はヴァルテンベルクへ──」


「次はあっちの資材な」

「話を聞け!」

「上、気をつけろよ」


 ヘルメットを載せられ、かばんを置く場所まで指定された。

 労働が始まった。



 ─────



 その頃。

「スパイ先生、いないのー?」

 学校では、子供たちが教室の入口を覗いていた。

 女教師が笑顔で手を叩く。

「アイゼン先生は、今日は奉仕活動のため、お休みでーす」

「逃げたんでしょー」

「もう宇宙?」

「奉仕活動です」

 女教師は、にっこり笑った。



 ─────



 翌日。


 ユリウスは校長室で深々と頭を下げていた。


「……ご迷惑をおかけしました」


 肩も腰も痛い。


「次からは事前に休暇申請を」


「はい……」


「授業の代行にも準備が必要なんですよ」


「はい……」


「それと、昨日の奉仕活動先から連絡がありました」


「……はい?」


「非常に助かったそうです。来週も来てほしいと」


「…………」


「休暇申請を出すのをお忘れなく」


 潜入経路も、持ち出した情報も問われなかった。

 アルビオンの諜報員による脱出未遂は、学校の無断欠勤として処理された。


 なお、工事現場での無断就労については、無給のため、問題にならなかった。



 ─────



 プレハブの校長室を出たユリウスは、重いかばんを引きずるように、まだ舗装もされていない土の道を歩いた。


 かばんの中には、祖国を揺るがす機密情報が詰まっている。


 向こうから女教師が来る。

 いつもの笑顔。腕には授業の教材。


 すれ違う瞬間、低い声が落ちた。


「逃げられると思うなよ」


「……え?」


 振り返る。


 誰もいない。


 女教師はすでに壁のない青空教室へ入り、何事もなかったように黒板へ日付を書いている。

 子供たちの声と、授業開始のチャイムだけが響いている。


 いつもの学校だった。


 ユリウスは、かばんを握りしめた。


 その瞬間、かばんの中から通知音が鳴った。


『本国より。茶葉の生育状況(ノイエルデの開拓)を再送せよ』


「…………」


 ユリウスは、ゆっくりと空を見上げた。


 チャイムが鳴った。


 授業が始まる。


 諜報員の一日は、今日も始まった。

「次こそは必ず! この星から脱出する!」




 情報収集は優秀なんですけど他はダメです。本来は星乙女がいないと実力(?)が出ないので。

 最後まで読んでくださりありがとうございます。

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