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銀河帝国の悪役令嬢、追放先で開拓する〜イケメンを集めたら逆ハーレムが被害者の会になりましたわ〜  作者: 一場令衣
第二章 わたくしの領地へようこそ!

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9 ひとりひとりがオンリーワン

 

 ブリッジでは今日も管制官が移民船を誘導していた。

 この船でもっともブラックな部署だと専らの噂である。


「三百メートル級移民船、接岸します」


 ずずん、と《ヴァルテンベルク》が揺れた。


「チッ。へたくそが」


 艦長ヴァルターの舌打ちが響く。



 ─────



 エレオノーラは通路を家臣達を引き連れ歩いていた。


  移民対応。行政整備。面談。決裁。


(誰かが夜中に仕事を繁殖させておりますわね……)


 睡眠は取れているが寝ている間も処理すべき書類と仕事は増える。


 そのとき、足元がずん、と揺れた。


 エレオノーラの足が、半歩よろめいた。


「お嬢様」


 すぐ横から、手が伸びた。

 大きな手が、彼女の手をしっかりと支える。


「……大丈夫ですわ」


 ディートリヒだった。


 礼を言おうとして──指先が、その手に触れたまま止まった。


 触れたところは思ったより硬く、指の付け根にはたこがあった。細かな傷もある。


 親指で、そっと撫でる。

 あたたかい。

 もう一度、握ってみた。

 ちゃんと体温がある。

 脈まで打っている。


「……生きてらっしゃるのですね」


「……はい、当然ですが」


 真顔で返された。


 ディートリヒの耳が赤くなった。

 手のひらを返され、指を触られ、今度は手首で脈を確かめられている。


「あの。何か、手に?」


「……そうでしたわ。あなた、カードではありませんのね」


「カード? 俺は最初から人間ですが」


 もっともだった。


 エレオノーラは、瞬きをした。


 周囲を見渡す。


 そばにはメイドのマリーとジュリア。

 その後ろに、フルフェイスのマスクをした女護衛騎士たち。今日はカリーナとロッテ。

 ちゃんと名前がある。


 金色の枠をまとったセバスティアン。


 (皆さま、生きておりますのね……)


 はじめてセバスティアンをみたときも生(なま)セバスティアンだと感動した。

 今改めて感じる。人間だ。


「……皆さま、生きておりますのね」


 あまりにも忙しく、カードのように人間たちを扱っていた。

 あまりにも大事なものを、足元を見ていなかった。

 見えていなかった。

 一番大切なこと。


「もちろんでございます、お嬢様」


 感動が胸の奥から込み上げてきた。


 ──五秒。


 感動の持続時間は、五秒だった。


「……同じ人間を待つ必要がありませんわ」


「……はい?」


 エレオノーラが、勢いよく顔を上げた。


「だって皆さま、生きてらっしゃるんでしょう⁉」


「それは、そうでございますが」


「移民審査のお話でしょうか」


「ガチャですわ!」


「面談です」


 ディートリヒが、まだ少し赤い顔で二人を見た。


 つい今しがた、命について何か大切な話をしていた気がする。

 もう終わったらしい。


「しかも重ねる必要もありませんわ!」


「何を重ねるんです?」


「同じ人間を五人も集める必要がありませんのよ‼」


「あってたまるか!」


 思わず声が出た。


 セバスティアンがこちらを見たが、今回は何も言わなかった。


「完凸不要! 一人一人がオンリーワン!」


「おっしゃっていることの後半は、分かります」


「素晴らしいですわ! 同じディートリヒを何人も引く石(予算)が浮きました!」


「俺、何人集められる予定だったんですか⁉️」


 エレオノーラは答えなかった。

 もう次を考えていた。


 ホリスタ──『銀河聖国の星乙女ーHoly(ホーリー) Star(スター) Maiden(メイデン)ー』。

 主人公の星乙女(スターメイデン)アンナが銀河を股にかけ、各地で困っている美形を助け、仲間にし、ストーリーを進めていくソーシャル型乙女ゲームだ。


 星乙女が行く先。

 新たな星で美形が困る。

 助ける。

 仲間になる。


 次の星でも、美形が困っているる。

 銀河には、困っている美形がなぜか多い。

 増え続ける。


 そこへ年に幾度ものピックアップ。

 限定ガチャ。

 季節イベント。


 春夏秋冬、男が出る。

 全員、顔がいい。


 声のついていないノーマルから最高レアまで百人以上。


 つまり。


 つまり、だ。


(このまま四周年記念ピックアップを引き続ければ……)


 目の前には、URディートリヒ。

 目玉はもう引いた。

 アンナは引けない。


「ディートリヒ!」


「はい!」


 呼ばれるなり、ディートリヒは勢いよく答えた。


「アンナはいま、どちらに? 入管記録を照会してくださいまし」


「はっ」


 早速、照会の手順を確認し始める。

 その横から、セバスティアンが声を落とした。


「監視は必要でしょうか」


「いりませんわ。どこにいるか分かれば、だいたいの進行度は分かりますもの」


 エレオノーラは扇を広げ、余裕たっぷりに微笑んだ。


 どの星にいるか。

 それが分かれば、どのストーリーを進めているのか、誰の加入イベントが近いのか、見当はつく。


(とはいえ、三、四年前のストーリーやピックアップキャラは、かなりあやふやですけれど!)


「承知しました。まずは所在の確認を」


 セバスティアンが頷く。


 エレオノーラも、頷き返した。


 アンナと出会うより先に、こちらへ!


(しかも、重ね不要……!)


 一人来れば、その一人でよい。

 同じ顔を追加で四人引くために、財布をひっくり返さなくてもよいのだ。


 エレオノーラの口元が、じわじわと上がった。


 一人一人が、かけがえのない命。


 そこから導き出された結論は。


(なんてお得なガチャですの……!)


(一人で完凸……!)



 ─────



「星乙女より先にSSRを多く引きますわよ!」


「ですから、面談のお話ですね」


「先に引けばこちらのものですわー!」


 しかも、入植、採用応募者は今も船でやってくる。


 エレオノーラは窓の外を見た。

 接岸した大型移民船、まさに宝の山だ。


「つまり今わたくしが引いているのは……URディートリヒガチャ!」


「はい!」


 名前が聞こえたので、ディートリヒは返事をした。


「引き続ければ、恒常SSRが引けますわ!」


「はい!」


「お分かりになりまして⁉」


「いえ!」


 全くお分かりになっていない。返事だけはよかった。


「ディートリヒ! 面接を! 今日も十連やりますわ!」


「十人ですね。会議室を押さえます」


「十連ですわ!」


「訂正がいらないくらいには慣れました」


 端末を操作しながら、ディートリヒが言い直した。


 セバスティアンは、その横顔を見て頷いた。

 もうついていけている。

 よい成長だ。


「素晴らしいですわ! さらにガチャを回して回して! 回し続けますわ! 出るまで!」


 颯爽と歩き出した主君の背を、メイドと護衛騎士が慌てて追う。


 マリーが、ジュリアへ小声で囁く。


「……お元気になられましたね」


「ええ、五秒前まで湿っぽかったですのに」


 ディートリヒは端末を抱え直し、セバスティアンを振り返った。


「あの。何か、命についてのお話をされていませんでしたか?」


「そのはずだったのですが」


 廊下から、明るい声が飛んできた。


「ディートリヒ! はやくついてらっしゃい!」


「はいっ!」






 Holy Star Maiden.exe

 Character Recruitment Error

 Event Route Conflict Detected

 Cause: ERA_ 



 すごく大事な気づきを台無しにするガチャ脳お嬢様!

 今日も二本投稿予定です。

 早く二章終わらせてイケメンを増やしたい!


 最後まで読んでくださりありがとうございます。

 

 面白い、続きが気になると思われた方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】評価&ブックマークで応援をしていただけると嬉しいです。


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