5. 目
カキンッ
「…!?なっ…」
亜麻音が高速で振り下ろした剣はあっけなくはじかれた。
「うちの抜刀の速度をなめてもらっちゃぁ困るな」
淡い蒼に輝く美しい刀をひらりと舞わせ静かにほほ笑む龍神。
その眼には深く暗く沈んだ光が灯っていた。
(…しまったっ!)
大急ぎで飛ばされた刀を回収に疾走する。
「…逃がさんよ」
優莉は低く呟くと刀を旋回させる。
「霊龍術 風雷神・塵風削ぎ」
地面を強く蹴って駆け出すと同時に刀を勢いよく振り下ろした。
すると莫大な量の砂塵が舞い、視界全体を埋め尽くす。
それを全て薙ぎ払うかのように高速で駆け抜ける。
それは全てを追い抜きまるで一筋の風の様だった。
「うぐっはっ…」
優莉の斬撃は亜麻音の右腕の肉をスッパリと切り裂いた。
右腕から赤い鮮血が噴き出す。
慌てて左手で傷口を覆うが血はどんどんあふれ出してくる。
余りの失血量に眩暈を覚えた亜麻音は地面に片膝を立てて崩れ落ちる。
(ナンバーワンの斬撃はこんなに出血を伴うのか…っ!
レベルが違いすぎる…うっ、傷口がいた……くはないか…?)
出血量にしては傷口があんまり痛くない…。いや、あんまりどころか痛みがない。
驚いて傷口に再度触れる。
止めどなく出血は続いているが…。
(傷が…ない?)
何度触っても傷らしきものはなく、切り跡さえない。
(もしかして私は…。)
「斬撃を…受けていない?」
ふと口からこぼれた言葉。
それを聞いて優莉はにやりと笑う。
「…幻影斬」
優莉はゆっくりと刀を下げる。
「お前は私を殺しに来たんじゃないのか?」
亜麻音は咄嗟にそう叫ぶ。
優莉が軽く後ろを振り返りながら低く唸る。
「さっきまではな…。」
「…さっき?」
優莉はゆっくりと振り向く。
優莉の茶色い瞳がギラりと光る。
「剣城、お前なりたくて鬼になったわけじゃねぇだろ?」
「…っ!」
一瞬亜麻音の体に電流が走ったようだった。
優莉の瞳がさらに怪しく光を放つ。
「さっきからお前の瞳には躊躇いの色が見える。言葉では威圧できても眼は正直だ。」
(こいつ、ヤバい)
亜麻音はとんでもない圧を感じた。
(この短時間で成り行きまで見抜いた?常人じゃない)
その瞬間、優莉が飛び上がった。
「ヤバいっ!反応できな…」
「お前」
優莉が目の前に落ちてきた。
いつの間にか刀を戻して凛として立っている。
「なぜ、殺さない…!」
あんなに隙があったのに殺すこともなく、まずまず刀すら振らないとは!
「お前っ舐めてんのかっ」
「…まあ最後まで聞け」
食いかかろうとした亜麻音を優莉は難なく受け止める。
「剣城亜麻音。お前、面白そうだな…」




