第二章 第十六話 満天の星が見ていた
二話連続掲載の二話目です。
では、どうぞ。
ばんざいやまのお友だち、そのなかでもおとなたちの間では、念話というものがあります。
だれでもできるわけではなくて、いずみの精霊さまと契約を結ぶことによって、はなれていても、いずみの精霊さまの声がきこえるようになるのです。
反対にいずみの精霊さまに話しかけることはできません。
なにかあったときの一方通行の緊急放送のようなものです。
夜になって、きゅうびががまおじさん、がまおばさんと話をしていると、がまおじさんとがまおばさんにごんた家族が石にされたという念話が届いたのです。
がまおじさんはおどろいたときに、かえるがひっくり返る、という冗談をよくするのですが、さすがにこのときはしませんでした。
念話で、ばんざいやまの広場に集まるようにといわれて、ふたりはすぐにきゅうびをつれて広場へと家をでました。
当然、ほかの家のひとたちにも念話は届いていて、夜のばんざいやまを、広場へと歩いたり走ったりしているお友だちが、なんにんもいました。
その流れに逆らうように、たぬまるがお母さんの手をひいて、きゅうびのもとへと走ってきました。
「聞いただろ、きゅうび」
「うん」
「つぎは、おれか、きゅうびだ」
「なんの話だい?」
がまおじさんにはわけがわかりません。
でも、語り部さまを疑っているだなんて、とてもじゃないけどいえませんよね。
石になったかわぞうは、あれからいずみのそばに安置されています。
つまり、石にされたごんたとごんたの両親も、もうきっといずみに運ばれているはずです。
「とりあえず広場にいってみようよ。まさかみんながいるなかではおそってはこないはずだよ。ね?」
「うん、……そうだな」
たぬまるにもなにか思うところがあるようですけど、それをのみこんできゅうびのいうことに賛成しました。
五人は広場へとむかいました。
広場には念話をきいたばんざいやまのお友だちが、いっぱい集まっていました。
てんぐさまがくる人たちを確認しています。
きゅうびたちがいくと、ばんざいやまのお友だち名簿にしるしをつけていいました。
「これできていないのは、あと六組か」
これだけの人数が集まれば、がやがやと話し声がしてもおかしくはないのですが、じたいがじたいなだけに、しんとした重苦しい空気がただよっていました。
きゅうびとたぬまるは首をめぐらせました。
すぐに語り部さまを見つけられました。
語り部さまは弟子の四人といっしょに、広場のすみにいました。
ふたりには、なにかをたくらんでいるように見えて仕方がありませんでした。
あまりじろじろ見ているとさとられてしまうので、目を逸らしました。
その間にも、お友だちが広場へと集まってきます。
あと三組で全員そろうとなったときに、語り部さまは音もたてずに動きました。
広場へとつづく道を逆方向に、四人の弟子をつれて、早足で歩いていったのです。
「きゅうび」
「たぬまる」
ふたりは目をあわせてうなずきあいました。
「ねえ、がまおじさん。ぼく、ちょっとトイレにいきたくなっちゃった」
「ぼくがついてってあげるから、いってもいいでしょ? おわったらすぐにもどるから」
「しかたがないなあ」
がまおじさんとがまおばさん、たぬまるのお母さんにことわって、きゅうびとたぬまるはあとを追いました。
だれの?
もちろん、語り部さまの、です。
こんなときでも、夜空には満天の星がかがやいています。
ふたりはすぐに語り部さまに追いつくことができました。
語り部さまと四人の弟子は、曲がった道の角にいます。
声ははっきりとは聞こえませんが、語り部さまが強い口調で話しているのがわかります。
曲がった道のかげになっているむこうがわにだれかがいるようです。
もも、がぶ、もんも、ほろろがぐっとかまえて、とびかかりました。
そして、女の子の悲鳴がきこえてきました。
「たぬまる!」
「ああ。決定的な証拠だな。いこう」
きゅうびとたぬまるは全速力で走りました。
足音に気づいた語り部さまは、きゅうびとたぬまるに
「きてはいけません」
とさけびました。
え?
とふたりは思いました。
でも走っている足はとまりません。
すると、かげになっていたところが、ぴかっと光りました。
なんだ?
きゅうびとたぬまるは語り部さまをうたがう気持ちを忘れて、光ったほうをみました。
そこにいたのは。
あと三話で「ばんざいやまのお友だち・第二章」もお終いです。
やっぱりちょっと寂しいです。
では、また。




