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第二章 第九話  光の道のそのさきは

子どもってすぐにばれる嘘、つくことありますよね。

悪いのは悪いですけど、今の私は、少し、笑えてしまいます。


では、どうぞ。

 その日、たぬまるはひとりで歩いていました。

 といっても、お友だちとけんかをしたからではありません。

 たぬきの日がやってきて、いずみの精霊さまのところへいくとちゅうだったからです。


「やっぱり、いきたくないからおなかがいたいっていってやめにしてもらおうかなあ」


 たぬまるは思わずそんなひとりごとをいってしまいました。

 きゅうびはおもしろそうといっていましたが、たぬまるはどうしてもそんな気にはなれないのです。

 気持ちがよくないときは、足もはきはきとはうごきません。

 そんな足どりで、いずみへとつづく坂道を、よいしょよいしょとあるいていきます。

 すると、「ピー、ピー、ピー」と鳴き声がきこえてきました。


「なんだ?」


 たぬまるは足をとめました。

 そして声のしたほうをきょろきょろとさぐりました。

 しばらく目をこらして、見つけました。

 木の高いところにある枝と枝のなかに、鳥の、森の動物たちの鳥の巣があったのです。

 とおすぎて種類まではわからなかったのですが、ようすをみていると、どうやら小さなひな鳥がとびたとうとしているようです。

 大きな鳥が二羽いて、たぬまるは、お父さん鳥とお母さん鳥が子どもたちにがんばれっていってるんだな、と思いました。

 そして、たぬまるも自分でも気がつかないうちに、小さな声で


「がんばれ、がんばれ」

 といっていました。

「ピー」

 という鳴き声がさっきより大きくなったそのときです。


 一羽、一羽、また一羽。小さな体で、小さな羽をいっぱいにはばたかせて、ひな鳥は森の木々をぬうようにとんだのです。


「やったあ」


 たぬまるはとびあがってよろこびました。

 鳥たちは輪をかいてとびながら、やったね、よかったね、というように顔を見あわせて鳴いてから、どこかへととんでいきました。

 今度みんなにきかせてやろう、そう思って、たぬまるははっとしました。


「いずみにいかなきゃ。ちこくになっちゃうよ」


 あわてて走りだしました。

 上り坂を一生懸命に走ったので、いずみに着くころには太ももがパンパン、息もハアハアで、いずみの精霊さまへのあいさつもそこそこに、いずみの水をのませてもらってひと休みしました。

 そんなふうだったから、てんぐさまがいることにも、話しかけられるまで気がつきませんでした。


「ずいぶんとあわてていたみたいだけど、どうかしたのか?」

「ああ、てんぐさま。おはようございます」

 そして、実はさっき、と話しました。

「おお、それはいいところを見たね。吉兆だ。まっしろもりにいったら、話してみるといい」

「まっしろもり?」

「うん。これからたぬまるがいくところの名前だ。まっしろもり」

「そこにみんな、っていってもぼくたちたぬきのお友だちが、集まってるんですか?」

「そうだよ。いろんな土地からきた、いろんなお友だちと出会って、いっぱいいっぱいおしゃべりするといい」

「息もととのいましたね」


 いずみの精霊さまがいいました。

 やさしい足どりでたぬまるに近づいていったので、たぬまるは立ちあがりました。

 そういわれたわけでも思ったわけでもないのですが、いまからいくんだと、準備をしたのです。


 風がふいて、たぬまるをすずませました。

 お日さまは、いまはくもにかくれています。

 たぬまるがてんぐさまを見ると、こくっとうなずきました。

 それでたぬまるは確信しました。

 いまから、です。


 いずみの精霊さまにかわったところは見あたりません。

 やさしい笑顔の、いつものいずみの精霊さまです。

 だからたぬまるも、すこし緊張はしたのですが、待ちました。

 いずみの精霊さまはいいました。


「では、たぬまる。これから道をつくります。あなたはそこをとおってまっしろもりにいくのです。大丈夫。ただ歩いていけばいいのです。もちろん、走ってもかまいませんが、いそいでもいそがなくても、まっしろもりには着きます。まっしろもりに着いたら、むこうに案内役がいますから、そのお友だちの指示にしたがえばいいのです。

 なにか質問はありますか?」


 たぬまるは考えました。

 長い間考えていたので、逆にいずみの精霊さまのほうから質問しました。


「まっしろもりに集まるたぬきたちは何歳か、しっていますか?」

「はい。てんぐさまにききました。ぼくとほとんど変わらないんですよね」

「ええ、そうです。ああ、もちろん、案内役や集まりのおさをつとめるお友だちは大人ですけど、あとのほとんどは、離れていてもたぬまると三つと違いません」

「……ききたいこと」


 たぬまるは腕組みをしました。

 すると、またいずみの精霊さまが質問しました。


「たぬきの日に集まって交流をもったたぬきたちが、そのあとどうするかは、ききましたか?」

「はい。それはお母さんにききました。まっしろもりの伝書鳩が各地のお友だちとぼくの橋渡し役になってくれんですよね。そのために一羽、今回の場合はまっしろもりから鳩をもらって帰ってくるんだって、ききました」

「ええ、そうです。その鳩についての説明は、必要ですか?」

「鳩についての説明?」


 たぬまるは首をひねりました。

 まっしろもりでもらう鳩は、なにか特別なのだろうか?

 と考えたのです。

 

 そうです。

 その伝書鳩はばんざいやまの伝書鳩と同じく、人間界で見られるふつうの伝書鳩とは違っているのです。

 ばんざいやまのように日本に点在するお友だちの集落で、そこに住むそれぞれのお友だちの『かなめぢから』というパワーを使ってそだてられた、特別な力をもった伝書鳩なのです。

 でないと、集落に張られた結界をとおることはできませんからね。


 たぬまるも、もちろんそれはしっています。

 でも、あらためて「説明は必要ですか?」ときかれて、

 ばんざいやまの伝書鳩とはまた違った力をもってるのかな?

 と考えてしまったのです。

 たぬまるも考えすぎだけど、いずみの精霊さまの質問も、すこし誤解をまねくいいかたでしたね。


「ええ。これからたぬまるがとおる道を『えにしの通路』というのですが、そこからばんざいやまとまっしろもり、まっしろもりと各地のお友だちをつなぐための鳩ですから、またすこし特別なのです」

「そうなんですか。……ここ、ばんざいやまで集まりがあることはないんですか?」

「いいえ、ありますよ」

「じゃあ、ばんざいやまにも特別な鳩はいるんですか?」

「いまはいません。ばんざいやまでまるまるの日をするときには、何年か前に通達がくるのです。それをもらってからでも、ばんざいやまと各地をつなぐ特別な鳩はつくれるのです」

「そうなんですか」


 たぬまるは納得したようです。

 いずみの精霊さまとてんぐさまは、顔を見あわせてうなずきました。

 てんぐさまがいいました。


「それじゃあ、たぬまる。そろそろいくぞ。準備はいいかい?」

「はい。でも、どきどきします」

「大丈夫ですよ。いっぱい楽しんできてくださいね」


 そういうと、いずみの精霊さまは空に手をかざし、胸のまえにもっていき、ささやくように呪文をとなえました。

 するとどうでしょう、大人が手を広げたくらいの大きさの輪が空間をゆがませてできたではありませんか! 


「さあ、たぬまる。おいきなさい」

「はい。てんぐさま、いずみの精霊さま、ぼくが留守の間、お母さんをよろしくおねがいします」


 そういって、文字どおり輪にとびこみました。

 たぬまるの姿は消えたかのように見えなくなりました。


「お母さんをよろしくおねがいします。ですって」

「はい。いい子ですね」


 いずみの精霊さまも、てんぐさまも、にっこりとしました。


自分も大事だけど、大切な人はもっと大事。

そう思えるような人間に、私はなりたいです。


では、また。

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