第二章 第四話 やまの子どもの話しあい
『男』とか『女』とかでわけるのって
どう思いますか?
では、どうぞ。
「どんな理由であれ、暴力はいけないと思います」
「女の子に暴力を振るうなんて最低だと思います」
「だったら女のくせになまいきな態度をとらなければいいと思います」
「女のくせにってなによ。いまはもう男も女もびょうどうな世の中なのよ」
「だったら女だろうがたたかれるような非常識な態度をとったひとが悪いんだから、それなのに女の子をなぐるなんて最低だって意見はまちがってると思います」
「女のくせに、はまちがいなんだから、あやまらなければいけないと思います」
「論点のすりかえをしたり、女であることを武器に話をするのはひきょうだと思います」
「男も女も関係なく、暴力はいけないって考えられないのは、まちがいだと思います」
「女は男より力が弱いんだから、弱いものに力でうったえることのほうが、まちがいだと思います」
「さっきは男女びょうどうなんていったのに、自分につごうが悪くなると、つごうのいいように女は弱いなんていいだすのは、正しくはないと思います」
「男にだって力の強いひとがいれば、弱いひともいます。女にだって力が強いひとがいるじゃないですか。力が弱い男のひとは、男じゃないのでしょうか? 力が強い女性は、女ではないのでしょうか? もちろん、そんなことはありません。だから、女は弱いなんていうのも、正しい意見ではありません」
「じゃあ女は暴力をふるわれても黙っていろと、そういうんですか?」
「だれもそんなことはいっていません。男が女より優れているところ、女が男より優れているところ、それを理解して、それがあるのが大前提だとして考えないといけないということを、いっているんです」
「ダイゼンテイ?」
「男女びょうどうという考えを成立させるために前置きとなる条件のことです」
「男と女は最初からびょうどうではないんじゃないのでしょうか? 男と男、女と女も、げんみつにいえばびょうどうではない、みんな最初からふびょうどうなのだとは、いえませんか?」
「それと暴力をふるったことが悪いことはといういまの話と、どう関係するんですか?」
「暴力が悪いのはあたりまえです。わたしがいっているのは『女に』と強調するのは間違いだと、そういうことです。男が女に、だけではなく、男が男に、も、女が女に、そして女が男に、も、悪いことだといっているんです。さっきいいましたよね。女の子に暴力をふるうなんてひどいって。言葉の暴力でひとをきずつけておきながら、わんりょくの暴力でかえされたからって、ひどいという意見は、つまりわたしは手をだしてはいないのだから悪くないという意見は、正しくないと思います」
「だれもそんなことはいっていません」
「いっていなくてもいっているのといっしょだとわからないひとに意見をいう資格はないと思います」
「話をもとにもどしたいと思います。たしかにわたしたちはみんな『ふびょうどう』なのかもしれません。むずかしくてすぐに答えはでませんが、正しいのかもしれません。でもいまは暴力がいいか悪いかを話しあっているんです。みなさん、いいと思いますか? 悪いと思いますか?」
「悪いと思います」
「悪いと思います」
「悪いと思います」
「場合によってはいいと思います」
「場合って?」
「ぶじょくされたときです。暴力をふるいたくなるくらいにぶじょくされたのに、手をだしたらぶじょくしたひとの罪は無罪になって、暴力をふるったひとだけが悪いという意見は、正しいとは思えないからです。今回の場合は、暴力をふるったのは悪いことだけど、暴力をふるいたくなるまで、ふるわずにいられなくなるまでばかにして、失礼なたいどをとったひとのほうがもっと悪いと思います」
「そのとおりだ」
「うん。ぼくもそう思う」
「だからって、女の子に暴力をふるうだなんて」
「そうやって女、女って『女性』という性別をとくべつあつかいするのは、えこひいきでしかないし、女はか弱いというのをつごうのいいように盾にするなら、男女びょうどうなんてえらそうにいうな」
「そんならんぼうな意見、ひどいわよ」
「そうよ」
「女の子が男の子より弱いのは、事実じゃない」
「だから、男が女よりおとっているところを、女が男よりすぐれているところでおぎなって、女が男よりおとっているところを、男が女よりすぐれているところでおぎなう。そうやって持ちつ持たれつ、助けあっていけばいいんじゃないかって、そういう考えかたをしなくちゃいけないんじゃないかって、いってるんだ。それもわからずに男女びょうどう、でも女はか弱い、なんていうひとたちに男と同等の権利を求める資格はないんじゃないかな?」
「うん。この意見にはんたい意見のあるひとはいるか? いないみたいだ。じゃあ今回の話しあいは、これで終わりにする。起立、礼、着席」
今回は、あえて行間を開けなかったのですが、
いかがだったでしょうか?
では、また。




