第二章 第三話 たぬまるがついたうそ
私は以前に、月・水・金の午後六時台に投稿すると書きましたが、
読む側の皆様にとっては「別にそんなにきっちりしなくても大丈夫だよ」と
思われることなのでしょうか? 疎くてすみません。
教えていただけたら嬉しいです。
では、どうぞ。
おおかみ男は、まずみんなを席にすわらせました。
みんなおとなしくいうことをききました。
はなをなぐさめていたさとは、いちばんさいごに席につくことになりました。
なにかあったのはわかるのですが、それがいったいなんなのか、はっきりさせないままで話をすすめることはできません。
「なにがあったんだ?」
お友だちをぐるりと見わたしながら、おおかみ男はききました。
そのあいだも、はなは泣いています。
下を向いて、だれも言いだそうとはしません。
だからおおかみ男は、
「たぬまる。さっき大声を上げていたのはたぬまるだな? なんで大声をだしたのか、答えられるか?」
とたぬまるにたずねました。
たぬまるは、みんなとは違う意味で下を向いていて、しばらくだまっていたのですが、
「答えられません」
とつぶやくようにしぼりだすようにいいました。
それではにっちもさっちもいかないのですが、おおかみ男は、答えられないといっているお友だちに、答えるように無理強いすることはしません。
「じゃあ、だれか、話せるひとはいるか?」
それがうわべだけのやさしさではないことを、お友だちはみんな知っています。
でも、たたかれたはなが怒られるのも、たたいたたぬまるが怒られるのも、だれもどっちも望んでなどいないのです。
だからだれも顔をあげられませんでした。
「さと。さとはさいごまではなのそばにいたな。なにか事情を知ってるんじゃないか?」
おおかみ男は先生として、この問題をほうっておくわけにはいかないのです。
だからたずねました。
さとははなを見てたぬまるを見ておおかみ男を見て、下を向きました。
それでもおおかみ男はさとが話しだすのを待ちました。
こういうとき、ばんざいやまでは話さないほうが悪いのだと教えられています。
やまでおこった問題は、やまのお友だちみんなで話しあい、解決するものだという考えにもとづいているからです。
おとなの問題には子どもが参加することはまずないのですが、子どものあいだでおこった問題は、おとなのひとりかなんにんかがリーダーとなり、子どもたちで話しあい解決するのが、むかしからのやまの決まりなのです。
だからさとは、話そうと口を開きかけました。
そのとき、です。
「たぬまるがわたしの頭をたたいたんです」
話しだしたのは、泣いているはなです。
「なんでたたいたんだ?」
「答えられません」
「それじゃあ話しあいにならないだろ。なにか事情があるのか?」
「はい。答えられません」
おおかみ男はたぬまるにきき、その返事をきいてなにかさとったようです。
「みんなにきのう描いた絵を見せてたら、たぬまるたちがきて、絵を見せて、わたしのお父さんの絵を描いたのよって言ったら、怒りだしてわたしの頭をたたいたんです」
きゅうびは飛び上がるように立って、それは違うと、はながうそをついているといおうとしました。
しかし。
「そのとおりです。絵をじまんされているような気がして、腹が立ったんです」
とたぬまるが言ったのです。
みんなあぜんとしました。
一部始終を見ていたみんなは、はながうそをついたとわかっているのに、そのうそをほんとうだってたぬまるが認めたからです。
立ち上がったきゅうびも、ことばがでてきませんでした。
はなになんでそんなうそをつくの?
と腹が立ち、たぬまるに、
なんでそんなうそをつくの?
とといただしたいきもちになったからです。
はながうそをつくのはまだわかります。
怒られたくないからです。
でも、たぬまるがなんでうそをついたのかは、きゅうびだけじゃなくて、その場にいたお友だちみんな、理解できませんでした。
お友だちみんなが、たぬまるを注視していました。
「どうした、きゅうび? 立ち上がって」
とおおかみ男はききました。
「……なんでもないです」
きゅうびはおとなしくいすにすわりました。
でもなんでもないわけがないことを、おおかみ男はちゃんとわかっていました。
わかってはいましたが、泣いているはなと、たたいたと認めたたぬまる。
それは事実なのです。
どんな事情であれ、暴力をふるうことを、おとなとして先生として、おおかみ男は注意しないわけにはいきません。
「たぬまる、このことはたぬまるのお母さんに、報告するからな。はなもたぬまるも、授業が終わったあとで、ちゃんと話をきかせてもらうから、残るように」
「それはやめてください」
たぬまるは大声をだしました。
もちろん、残されることがいやなのではありません。
お母さんに知られてしまうのが、いやなのです。
きゅうびもお友だちも、ことがおおきくなってしまったことを、こわいと思いました。
ほんとうのことをいいたい。
でもたぬまるがああいっているのに、そうするのはまちがいなんじゃないだろうか?
でもうそがそのままとおるのを見すごすなんて、そんなのゆるされたらいけない。
ぜったいに。
授業が終わり、たぬまるとはなをのこして、お友だちはみんな、帰りました。きゅうびもごんたとかわぞうといっしょに、やまの広場からさっていきました。
あらためて、おおかみ男はたずねました。
「なにがあって、こういうことになったのか、ちゃんと説明してくれるか?」
おおかみ男は家に帰ろうと歩いていました。
すると、前方にお友だちが三人、立っているのが見えました。
近づくと、きゅうびとごんたとかわぞうでした。
「どうした?」
「たぬまるはほんとうのことをいいましたか?」
ときゅうびがたずねました。
「たぬまるは、たたいたことはみとめた。でも、なんでたたいたのか、はなのいうことがほんとうだっていっていたけど、それがほんとうのことだとは思えないんだよな」
「でしょう。きっとたぬまるはほんとうのことはいわないんじゃないかって、ぼくらそう思って、だからここで待ってたんです」
とかわぞうがいいました。
ごんたが続けました。
「はなはたぬまるにお父さんがいないことを、笑ったんです」
それをきいて、おおかみ男は合点がいきました。
頭の上にぎもんとなっておもくのしかかっていたことが、すっきりととれたのです。
「そうか。だからたぬまるはおこったのか」
おおかみ男はだれにいうでもなく、つぶやきました。
「だからたぬまるをしからないでやってください」
三人はおねがいしますと頭を下げました。
でももうたぬまるのお母さんに、こんなことがありましたよと、報告したあとだったのです。
それにやっぱり、どんな事情であれ暴力はいけないことだと教えるのが先生の役目でもあるのです。
だからおおかみ男は考えました。
そして三人に、
「わかった。じゃあおそくなるまえに、はやく家に帰りなさい」
といいのこして、どこかへと走っていきました。
三人はむねにつっかえていたものがとれたので、ほっと息をはいて、帰りました。
「たぬまるがお宅のむすめさんの頭をたたいたそうで、すみませんでした」
「いいえ、子どものしたことですし、たんこぶもできないくらいのケガですし、そんなにお気になさらずに」
「ほら、たぬまるもあやまりなさい」
「……ごめんなさい」
「いいのよ。はな、はな、いらっしゃい」
「なに?」
「ほら、たぬまるくんがあやまりにきてくれたんだから、はなももうおこってはないわよね。仲直り、しなさい」
「いやよ。わたし、あたまたたかれたのよ」
「こら、はな。すみません」
「いいえ。たぬまる、もう一回、あやまりなさい」
「……ごめん」
「ほら、はな」
「わかったわよ」
「じゃあ、もうこんなことをしないようにちゃんといいきかせますから。すみませんでした。失礼します」
「いいえ。こちらこそ、わざわざすみませんでした」
おとなたちの話しあいが終わって、じゃあ帰ろうかとなったところに、おおかみ男は間にあいました。
「待ってください。よかった、間にあった。すみません、さっきわたしが話したことは、説明が不十分でした。お母さんがた、ちょっといいですか?」
そういって、たぬまるとはなから少し離れて、小声でなにごとか話をしました。
すると、どうでしょう。
「まあ、どうしましょう。すみません、お母さん」
「いえいえ、気にしないでください」
と、今度ははなのお母さんがあやまりだしました。
そして
「はな」
と強い口調ではなをよびました。
「なによ」
「なによじゃないわよ。たぬまるくんにあやまりなさい」
「え、なんで」
「なんでじゃないでしょ。お父さんにいってしかってもらうからね。たぬまるくん、ごめんね」
「いえ、いいんです」
「ほんとにうちの子は。どうもすみません」
こういう母親族のやりとりがはじまると、おおかみ男も口だしはできません。
こまった顔でようすを見ています。
たぬまるもこまった顔をしています。
でも、おおかみ男とは意味がちがいます。
どうちがうのか?
たぬまるは、この問題の原因をお母さんに知られてしまうのが、いちばんさけたかったことだったのです。
おおかみ男の善意によって、はからずもそれを知られてしまったのです。
お母さん、いまどんな気持ちかな? きずついてないかな?
たぬまるは心が苦しくなりました。
「たぬまる、帰るわよ」
お母さんにそういわれて、たぬまるはわれにかえりました。
帰りの道中でもきくにきけませんでした。
お母さんは笑顔でたぬまるに話しかけました。
でもその件にはまったくふれませんでした。
お母さんの笑顔を見ても、たぬまるの心は苦しいままでした。
月・水・金の午後六時台に投稿すると書きましたが、
さっそくやらかしてしまい、申し訳ありません。完全にすっぽりとぬけていました。
前書きは以前に、後書きは今、書きました。
もしもいらっしゃるのなら、楽しみにしてお待ちいただいた方、
ごめんなさい。
次はないようにいしたいのですが、たぶんまた……。
気を付けます。
では、また。




