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魔法使いたちの宇宙戦争 ~ ユニバーサルアーク  作者: 語り部(灰)
移りゆく世界

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移りゆく世界4

◇◆◇◆◇◆◇


 三川は突如現れた敵戦艦への対応に苦慮していた。

 まず、『アイオア』級戦艦というやつが、第八艦隊にとっては手に余る敵である。

 簡単に言ってしまうと、旧型の巡洋戦艦一隻しか持たない三川にとっては、どうにも歯が立たない。

 三川、小松共に最新鋭の一等巡洋艦『剣』型を持っているが、これらの艦も戦艦を相手にする前提の物ではない。

「MXY1なら、相応の効果が期待できるが……」

 虎の子の『桜花』は、できれば敵空母へのトドメに使いたいというのが、三川と第八艦隊司令部の総意である。『アイオア』級戦艦に撃ち込んでも、戦略レベルでの効果が薄いのだ。

 ついでに言えば、『桜花』の残りも少ない。

 そもそも『桜花』は、まだ量産ラインに乗ってすらいない実験兵器であり、総生産数自体が一〇〇にも満たない。無いものはないのだ。

「『島風』被弾しました……そのまま走り抜けるようです」

 一方で小松艦隊の駆逐艦達は、その俊足を生かして敵空母の追撃へ移行して行く。

 これらの駆逐艦達は重雷装であり、近距離雷撃戦なら『アイオア』級が相手でも、十分な打撃力が期待できるが、やはり魚雷は空母殲滅用に温存する方針である。

「小松艦隊の一等巡洋艦が、『アイオア』級戦艦の間合いに入ります……砲戦、始まりました」

「我々も、早く参加しないとな」

 実は三川には取っておきの隠し玉があった。

 『剣』型は一昔前の戦艦くらいのサイズ感をしているが、実は雷装しているのだ。

 艦側面片側二箇所、計四基の三連装魚雷発射管を有する。

 問題はどうやって魚雷が有効な間合いまで近づくか。ということだが、必ずその時は来るはずだと三川は考えている。

「とにかく、主力の駆逐艦がすり潰されるのは面白くない」

 戦略的な観点から見た場合、戦艦はそれほど重要ではない。

 重要なのは、あくまで敵空母の漸減である。

 第八艦隊前方では、小松艦隊の『剣』型二隻が、『アイオア』級と激しく主砲を撃ち合っている。

 小松は手持ちの駆逐艦を通す為に、果敢に砲戦を仕掛けているのだ。

「間もなく敵戦艦、射程内」

「艦首方向、主砲戦用意!」

「主砲、射程に入り次第、発射だ!」

 にわかに『鳥海』のCICが騒がしくなる。

 旧型の巡洋戦艦である『鳥海』は、最新型の『アイオア』級に対してかなり分が悪い。

 だが、ここで退くわけにはいかない。

 ドカン! とばかりに艦が揺れ、『鳥海』の艦首連装砲二基四門が主砲弾を吐き出す。

 三川は歓喜した。

「また『鳥海』が戦える日が来るとは……」

 世界の海軍が空母決戦思想に傾倒していく中で、戦艦の役割は空母の護衛に変わっていくだろうと考えられている。

 実際、旧世代の戦艦達は対空砲を増設し、空母護衛に適した姿に変わっていっている。そして、最終的には、より安価で高性能な『秋月』型のような防空駆逐艦によって、その居場所を追われるだろう。

 それは一海軍司令官の三川に取って、とても寂しい事だった。

 それがどうだろうか。いざふたを空けてみれば、『鳥海』は敵『アイオア』級戦艦と対峙し、主砲を交えている。

「主砲弾……命中!」

「いいぞ!」

「やった!」

 命中報告に、CICのあちこちから歓声が上がる。

 初弾命中は日頃の訓練の賜物と言えるだろう。

 だが、直後に良くない報告も上がってくる。

「主砲弾、敵戦艦の装甲に弾かれました!

 敵艦に損傷なし!」

「問題ない。撃って撃って撃ちまくれ」

 どっかりと司令官シートに腰を落とし、三川は指示を出す。

 敵は新型戦艦である。硬いことは分かりきっている。

 距離を詰めれば、いづれ有効打が得られるはずだ。

 小松艦隊の『剣』型二隻も、出し惜しみなしで主砲弾を『アイオア』級戦艦に浴びせながら、間合いを詰める。

 こちらの武器は船足の速さと、必殺の魚雷攻撃である。

「我が艦隊は、『アイオア』級の右舷側に展開する。

 我が巡洋艦部隊は、主砲を連射しつつ敵戦艦に接近。魚雷戦を実施する」

 残念ながら『鳥海』に魚雷は積まれていない。

 従って、『鳥海』の役目は後続の『剣』型の為に、『アイオア』からの攻撃を誘うことだ。


 勇猛果敢な帝国海軍艦艇は、猛然と『アイオア』に襲いかかる。

 だが、やはり魚雷の有効射程まで近づくという事は、飛躍的に敵弾への被弾率を押し上げる。

 そして、被害が出た。

「『畝傍』被弾! 装甲区画を貫通された模様!

 通信途絶!」

 『畝傍』は既に第二砲塔に被弾しており、中破状態で戦っていたため被害が深刻化した可能性がある。

 どの道、戦闘への復帰は絶望的であると三川は判断した。

「『畝傍』へ発光信号! 戦線を離脱し、乗員と艦の保全に努めよ。送れ!」

 三川は即座に損傷艦に離脱を命令。

 乗員の安全確保はもちろんだが、今は突入進路を塞がれる事の方が問題だ。

「やはり『アイオア』級相手では、巡洋艦の『剣』型では厳しいですな」

 神参謀が渋い表情で言う。

「そんな事は百も承知だ。それより駆逐艦を追いかけられる事のほうが面白くない」

 三川も渋い顔をした。

 三川とて、手持ちの艦を傷つけられるのは不本意だが、ここでは敵空母への攻撃を通すことのほうが重要である。

「小松艦隊より入電! 旗艦『剣』被弾。推進器に被害あり。一旦離脱する。以上です!」

「『トマホーク』かなにかでしょうか?」

 『アイオア』級戦艦の主砲は全て第八艦隊側を向いているので、必然的に『剣』を損傷させたのは、対艦噴進弾の類という事になる。

「『剣』型に懐へ潜り込まれると、致命傷を負うという事がわかっているのだろう。敵もなかなかやりおる」

 戦略的にあまり意味のない巡洋艦相手に、『トマホーク』を撃ったという事は、つまりそういう事だ。

「しかし、神参謀。これで『剣』型は残り四隻。

 少々手数に不安が出てくるな」

「ヨーソロ。

 とはいえ、我が配下の駆逐艦を戦艦攻撃には使いたくありません」

 第八艦隊には、艦隊型駆逐艦である『舞風』型駆逐艦がいる。汎用性重視の『舞風』型は攻撃型の『村雨』型や『雨花』型ほどの火力を持たないとはいえ、それでも空母を葬るには十分な雷装を有する。

 敵空母への攻撃に、可能な限りの火力を投入したいと三川は考えているので、戦艦相手に魚雷は撃ちたくない。

「同感だ。ならば我が『鳥海』を持って、『アイオア』級戦艦を粉砕するしかない!

 『伊吹』『鞍馬』『白根』に下命。我に続け!」

 作戦は極めて簡単だ。

 『鳥海』を盾に、三隻の『剣』型を必殺の間合いに送り込む。

 『鳥海』を推進器を盛大に吹かしながら、『アイオア』級へ向かう。

 こちらの意図を察したのか、『アイオア』級の巨砲が火を吹く。

「当たらん当たらん」

 わはは。と鷹揚に笑い、三川は腕組みをした。

 旧式とはいえ、巡洋戦艦の『鳥海』は快速だ。

 早々、主砲で捕らえられるものではない。

 しかし、それは敵も承知の上だろう。敵の艦長も優秀だ。

「敵、発砲! 噴進弾、『トマホーク』のごとし!」

 叫び声が上がる。

「対空砲、撃ち方始め!」

 敵戦艦から、三つの水蒸気の帯が『鳥海』めがけて伸びてくる。

「奴さん、弾薬を温存していたのか……」

「もしかすると、戻ってきた空母艦隊に居た『アイオア』級かもしれません。一時戦線離脱したタイミングで腹一杯になったと考えられます」

 神参謀の言葉に、三川は納得した。

 補給直後にここに来たのなら、弾薬は十分持っているはずだ。

「敵、噴進弾第二射を発射! 数三!」

 『トマホーク』を旧型巡洋戦艦相手に六発。なんとも豪勢な使い方である。

「対空噴進弾も使え! こちらも出し惜しみなしだ!」

「イの三二番、数六! 目標、敵噴進弾! 準備出来次第撃ち方始めっ!」

 艦対空誘導噴進弾が、『鳥海』の艦橋左右に配置された垂直発射管から放たれる。

 敵味方双方の噴進弾の弾道が絡み合い、そして爆ぜる。

「迎撃成功……四! 二発抜けてきます!」

 士官の報告を待たずに、『鳥海』の対空砲が一斉に火を吹く。

 パッと光が瞬いて、直後に爆発。

 残り一発。

 最後の『トマホーク』は、微妙に蛇行しながら、こちらの弾幕をかいくぐり『鳥海』の左舷艦首方向に向かう。

「マズいですな」

 神が言った。

 マズいという意味は簡単だ。軍艦という物は、基本的に真正面方向に向けられる砲が少ないのだ。

「食らうか」

 そう三川が言ったとき、振動。

 被弾したのだ。

「艦首左舷側に被弾」

「被害報告、急げ」

「衛生兵! 直ちに救護活動を実施」

 艦首付近なら、悪くて中破。戦闘続行可能と三川は判断した。

「推力最大を維持! 進行を止めるな」

 司令官シートから立ち上がり三川は毅然と言い放った。

「敵戦艦、発砲! 主砲斉射です」

「大丈夫だ。外れる」

 自信を持って三川は断言

 実際に敵弾は、『鳥海』の後方を飛び抜けて行った。

 もし、被弾に驚いて速力を落としていたら、今の一斉射で終わっていたかもしれない。

 だが、実際にはそうならず『鳥海』は健在で、変わらず主砲を撃ち返す。

 彼我の距離は、そろそろ八〇万キロを割ろうかと言うところまで来ている。

 『アイオア』級にとっては既に交戦距離の内だが、『鳥海』にとっては若干遠いと言った具合だ。

「敵戦艦、発砲」

 敵戦艦の主砲が火を吹き、主砲弾が『鳥海』に襲いかかる。

「至近弾! 損害軽微」

「衛生兵より入電! 艦首被弾箇所付近で火災発生! 消火班、対応急げ!」

「砲撃続行! 攻撃の手を休めるな!」

 三川は怒鳴った。


◇◆◇◆◇◆◇


 敵駆逐艦部隊接近の報に、ハルゼーは選択を迫られていた。

「この駆逐艦の一群は、間違いなく我が空母艦隊の殲滅を企図しています」

「そんなことはわかっている。黙ってろブローニング」

 ハルゼーは海図を睨みながら怒鳴った。

 当初こちらに急接近していた艦隊は、スプルーアンスの寄こした戦艦『ミズーリ』によって、一時的に阻止された。

 それに対応して、敵は駆逐艦を分離。

 駆逐艦以外の艦艇で『ミズーリ』を足止めする作戦に出た。

 ハルゼーの手持ちには、防空用の駆逐艦が十隻。随分目減りしたので、敵駆逐艦の突入阻止には使えないだろう。

「退くしかない……

 が、ただ逃げるだけじゃつまらねえ。

 ……おい、ブローニング」

「アイサー」

「今出せる艦載機はどれくらいある」

「戦闘機は待機中の物も含めて四艦あわせて一二〇、攻撃機は八〇程度です。サー」

「よし、艦隊反転。接近中の駆逐艦部隊から距離を取る。距離を取っている間に、艦載機を飛ばして『ミズーリ』とやり合ってる敵の巡洋戦艦をやる。

 コイツが敵の旗艦のはずだ」

「サーイエッサー」



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