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魔法使いたちの宇宙戦争 ~ ユニバーサルアーク  作者: 語り部(灰)
移りゆく世界

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移りゆく世界5

 ハルゼーの命令が出れば、そのあとの艦隊の行動は早い。

 駆逐艦を最後尾に、空母四隻が大回頭。

 最大出力で推進器を吹かして加速を始める。

 同時に格納庫内では、攻撃機に対艦装備を取り付ける作業が急ピッチで進められている。

「接近中の駆逐艦の加速度がかなり高いのが気がかりです」

 ブローニングが言った。

「攻撃機を一部を、敵駆逐艦の掃討に回されては?」

「おい! ブローニング! 怖気づいたか?」

「いえ、そんな事は……

 もし、敵駆逐艦に追いつかれた場合、どれほどの被害を被るかわかりません。安全策です」

「ふざけるな! 戦艦がやられたら、袋だたきにあって、オレ様達は全滅しちまう。

 敵駆逐艦はあくまで、駆逐艦で阻止する」

 駆逐艦の機関出力を考えれば、加速を続けられる時間は限定的なはず。なら、味方が時間を稼いでいる間に空母が十分に加速すれば、敵は追いついて来れないという事だ。

「艦載機、準備完了!

 いつでも行けます、サー」

「よし、全機発艦! 戦艦と遊んでる敵をぶっ潰せ!」


◇◆◇◆◇◆◇


 敵艦載機出現の報を受けて、小松は唸った。

「なんという闘争心だ」

 小松は思わず感嘆の声を漏らした。

「三川長官に報告を。向こうも気付いているだろうが……

 さて、我々はどうするか」

 現在、旗艦『剣』は中破状態。推進器の出力が半分以下に制限され、主砲や副砲も自由には撃てない状況である。

「対空戦闘に備え!

 艦長! 本艦の対空兵装の状況を報告してくれ」

「ヨーソロ……対空砲は動力不足で対空戦闘に使うのは難しい状況です。対空噴進弾発射機は非常用電力で発射可能。ただし、第二射は保証できません」

 原西艦長の報告に小松は苦笑した。

「我が『剣』は満身創痍ではないか……しかし、対空噴進弾が一回撃てるなら、なるべく有効に使わないとな……」

 状況を考えると、敵機はまだ無傷の艦に向かうと考えられる。

 普通は『鳥海』優先か。

 『鳥海』が戦闘不能に陥ると、『剣』型の突入が難しくなる。突入できなければ、火力差でこちらが一方的に被害を受けることになる。

「難しいところだ」


 間もなく敵機が襲来し、小松の予想通り『鳥海』に殺到する。

 敵機の数は四〇程で、うち攻撃機は三〇。

 少ないと言えば少ないが、すでに手負いの『鳥海』には荷が重いと言わざるを得ない。

 『鳥海』は対空砲を撃ち上げつつ、敵戦艦への突入を続行。

 三川長官はあくまで敵戦艦まで、配下の一等巡洋艦を送り込んで雷撃する腹づもりのようだ。

「敵機は……こちらには来ないか……」

 『剣』と『御巣鷹』は、第八艦隊から見て敵戦艦の反対側。距離が結構離れている。

 敵機は予想通り『鳥海』に向かい、こちらに来る機体は居ないようだ。

 当然、『鳥海』のいる位置は防空用の対空噴進弾は射程外なので、援護射撃というわけにもいかない。

「『鳥海』、被弾! 詳細不明も黒煙を噴き出しています!」

「まずいな」

 見張員の報告に小松は唸った。

 損害報告が『鳥海』から上がってこないという事は、通信能力を喪失した可能性がある。これは艦としては致命傷を負った可能性を示唆している。

 さらに言うと、第八艦隊旗艦が戦闘中に指揮能力を失ったのもまずい。

「第八艦隊の巡洋艦部隊はどうか?」

「『鳥海』と相対距離を一定に保っています」

 再び見張員の報告。

 旗艦の足が遅くなれば、艦隊の足も遅くなる。

 艦隊の必然だ。

 勝手に追い越しなどすれば、味方同士の接触などというもっともバカバカしい被害を出す恐れがある以上、指示がない限りこうなってしまう。

 第八艦隊は突入の機会を失ったのだ。

「『鳥海』再び被弾! 被害不明」

「敵戦艦回頭、艦側面を『鳥海』に向ける意図です!」

 戦艦が艦の側面を敵に向けるという事は、それは主砲の一斉射を浴びせるという意図以外にない。

「『御巣鷹』に下命! 可能な限りの火力を敵戦艦に投射せよ!」

 『御巣鷹』は『剣』より敵戦艦に近い位置に居るため、攻撃手段の選択肢が多い。

「『御巣鷹』主砲を発射! 近近近命中……弾かれました! 遠遠遠遠」

 『御巣鷹』渾身の射撃も、『アイオア』級の装甲相手では有効打にならない。

「敵戦艦、撃った!」

 観測員が悲鳴を上げる。

「敵弾……外れました! 『鳥海』は健在! 『鳥海』は健在!」

 これは『御巣鷹』の射撃を被弾したことで、敵の射撃諸元が狂ったのだろうと、小松は考えた。

 幸運な事だが、一分もかからず敵は射撃諸元を修復するだろう。

 『御巣鷹』は諦めずに砲撃を続けているが、命中は得られない。

「ここまでか……」

 小松が『鳥海』の三川長官に代わって、撤退命令を出す決断をした瞬間。

 突如として、純白の閃光が視界を覆った。

「何事だ!?」

「……これは……」

 観測員はそこまで言って、言葉を失った。

 小松も外部カメラで状況を確認する。

「小松司令……松田大佐から通信です……

 その……万事、我が『大和』に任せられたし。以上です」

「『大和』……『大和』とは、戦艦『大和』の事か?」

 小松困惑。

 小松も、帝国海軍が秘密裏に『大和』を作っているという噂は聞いていた。

「まさか本当に作っているとは……」

 普通、そういった話は根も葉もない噂話でしかないものだが、こうして目の前に出てくるとリアクションに困るという物だ。

 返答に困っている小松の目の前を、『大和』の巨体が通り過ぎていく。

「全長は……一〇〇〇メートル近くあるのか……」

 理不尽極まりない姿をした『大和』は、悠々と『剣』の前を通り過ぎていく。

 あまりの巨大さゆえに分かりにくいが、船足は相当速い。

 推進器はヌ式だろう。

 『大和』が巨砲を振りかざすのが見えた。

 攻撃目標は当然『アイオア』級戦艦である。

「『大和』撃った!」

 観測員の声に、『剣』のCICが静まり返る。

 即座に敵戦艦が被弾。

 装甲区画は容易くひしゃげ、非装甲区画に関しては一発で跡形もなく消滅する。

 圧倒的砲火力。

 だが、敵戦艦もまだ死んでいない。

 主砲を『鳥海』から『大和』に向けなおす。

 そのまま『鳥海』を砲撃していれば、『鳥海』だけは道連れにできたかもしれない。

 だが、敵戦艦の艦長はそうしなかった。そこに船乗りの心意気を感じ、小松は敵戦艦に向かって敬礼した。

 直後、砲塔旋回中の敵艦のど真ん中に『大和』の主砲が直撃。

 今度は主砲弾が装甲を貫徹、最強を誇った『アイオア』級戦艦はあっけなく最期を迎えた。

「さすがは『大和』と言ったところか……」

 小松は唸った。

「敵航空機に動きがあります!」

「何!?」

 電探画面上で、敵機が集団を再形成し『大和』へ向かう様子が見て取れた。

「『大和』に敵機接近の報を送信! 対空戦闘用意!」

 戦艦にとっても航空機というものは脅威である。

 それが『大和』だとしても、だ。

 だが、『大和』松田艦長の返答は実にあっさりした物だった。

「我に航空機に対する備えあり。対空戦闘準備に感謝するも、手助け不要。自艦の防空に専念されたし」

 こう言われては、個艦防空に専念するしかない。

「対空戦闘、攻撃目標は我が艦に接近する敵航空機、『大和』へ向かう敵機は放置で構わん」

 小松としては『大和』がどんな戦いをするのかが、大いに気になった。

 『大和』は、敵機などまるで存在していないかのように、悠々と進んでいく。

 特に回避運動なども行わない。

「いくらなんでも、無謀すぎる!」

 小松はそう口にした。

 如何に強靭無比な装甲を備えようと、航空攻撃を受けていい理由にはならないからだ。

 時に装甲外で発生した爆発の衝撃が、装甲裏に居る人間を殺傷することもある。

 敵機の一群……『ヘルダイバー』六機が散開。『大和』左舷から二機、右舷から四機が突入していく。

 そして、『大和』の艦橋後部にそびえ立つ煙突状の構造物の先端部が、まばゆく光った。

 それだけで、すべてが終わった。

「消えて……しまった」

「高出力の怪力線で焼き払われたようです」

 電探士官が教えてくれる。

「ああ……」

 続く言葉が思いつかず、通り過ぎていく『大和』の姿を小松はただ見送った。


◇◆◇◆◇◆◇


「なんだ!? あのバケモノは!?」

 戦艦『ミズーリ』があっさり粉砕され、送り出した航空機は謎の攻撃で撃墜される。

 突如出現した帝国海軍の切り札に、ハルゼーの余裕は一気に消し飛んだ。

「スプルーアンス閣下の報告にあった、正体不明の戦艦であると思われますが……

 CIAのレポートにも存在しない戦艦で」

「ぐぬぬ」

 歯ぎしりをしながら、ハルゼーは帽子を握りつぶした。

「残念ながら、作戦続行は不可能であります」

 ブローニングはそっとハルゼーに撤退を促す。

 今なら空母はほぼ無傷で残る。

 喪失した艦載機とパイロットは痛いが、補給を受ければまだ戦える。

 それがブローニングの判断だった。

 もし、今時間を無駄にすれば敵の駆逐艦に追いつかれて、虎の子の空母すら失ってしまう。

「クソッ!」

 ハルゼーは握りつぶした帽子を床に叩きつけた。

「とっとと逃げるぞ!」

 やはりハルゼーは退きどころをわきまえている。

 名将とはそういうものなのだと、ブローニングは思った。


 ハルゼー艦隊は、『タラワアイランド』を先頭に、二番手に『イオトアイランド』、三番手に『コーラルシー』、最後尾を旗艦『エンタープライズ』という順で航行している。

 陣形は、とにかくスピード重視の単縦陣である。

「敵の駆逐艦を振り切れません!」

 大日本帝国の新型駆逐艦は、こちらの想像をはるかに凌駕する推進力を持っているらしい。

 ハルゼー艦隊の空母はほとんど空荷の状態で、全力加速しているというのに、引き離すどころかジリジリと距離を詰められる。

「構うな! もっと機関部にハッパをかけて出力を上げさせろ!」

 ハルゼーの激が飛ぶ。

 余計なことを考えずに、まっすぐに逃げるという判断は実に好感が持てるとブローニングは思った。

 だが。突如として、それは起こった。

「『タラワアイランド』急減速! ぶつかる!」

 なにが起こったのかは不明だが、『タラワアイランド』の行足が落ちたらしい。

 その真後ろを加速していた『イオトアイランド』も慌てて減速、即座に面舵を当てる。

 しかし、間の悪い事に『タラワアイランド』も同じタイミングで面舵を切った。

 直後、二艦は接触。

「なにを! やってやがる!」

 一気に『エンタープライズ』のCIC内が騒がしくなる。

「『タラワアイランド』は、なんらかのミサイル攻撃を受けたと報告してきています」

「なんだと!?」


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