第十三話 白日の歪み
空気が大きく震え、間髪を入れず、天井の照明がバチッと点灯した。
露わになったのは、少し乱れた布団と、私の腕の中で上気した頬を見せる菜月だった。
私が身体を起こすと、菜月もゆっくりと身を起こした。
何も言わずただじっとこちらを見つめている。
(…は?)
思考が白いノイズに塗りつぶされる。
「…なにが?」
「僕がお母さんだから」
「…じゃなくて!誰と、誰が?」
まどろっこしい問答に、つい声を荒げてしまう。
逆光の陰で、菜月がふっと口元を綻ばせた。
その笑みに、背筋が一瞬で凍りつく。
「僕と」
――ごくん。
喉の奥で、乾いた生唾が鳴る。
菜月の唇が、ゆっくりと開く。
「お父さん」
雷鳴の去った部屋に、その言葉が重たく落ちた。
(……そうか。
それで……なつは、自分自身を汚そうとしていたのか。
子供らしくあることを否定して、必死に藻掻きながら――誰かに助けを求めていた?
自分の魂まで差し出すように、したくもないことをして。
大人の私に取り入ろうとして……。
……だから、あんなにも哀しい目をしていたのか……)
胸の奥で、静かな怒りが膨らんでいく。
その底には、言葉にできない黒い感情が沈んでいた。
この子の身体と心に刻まれた絶望は、どれほど深いのだろう。
想像するだけで、胸が焼けるようだった。
私は菜月の顔を見つめたまま、スマホを手にした。




