↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那の夏、君の体温(ねつ)に溶ける。  作者: 毬藻 闇雪
刹那の夏、君の体温(ねつ)に溶ける。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/36

第十話 君の熱、重なる体温



「……なつ……?」


 静かに目を伏せた菜月(なつ)は、「はぁ……」と浅く息を吐いた。


 引き寄せられるように顔を近づけると、身体から立ちのぼるような熱気が肌を刺す。

 私はそっと額に触れ、そのまま頬を包み込んだ。

 じわりと伝わる異様な体温。


 (……何度くらいあるんだろうか? 体温計で測った方がいいな。)


「なつ……これ、脇に挟めるか?」


 救急箱から取り出した体温計を手渡すと、菜月は受け取った側から、ぽとりと布団の上に落としてしまう。


「……ん。落としちゃった……」


(力が入らないのか……)


「……手を、入れてもいい?」

 体温計を手にして菜月に尋ねると、上気した顔で小さく頷いた。


 私は呼吸を整え、菜月のダボダボなTシャツの裾から手を差し入れた。


 タオルで拭いたが、まだ少し湿り気を帯びている。じわりと伝わる熱い脇の下に、慎重に体温計の先端を滑り込ませると、指先に菜月の肌が触れた。


「……っ。だめ、痛い……」

 体温計が刺さったようだ。

「……痛い? ごめんね……」

 少し角度を変えて差し込もうとするが……。

「痛っ! ……そこ、食い込んでる……」

 眉を顰ひそめて睨みつけてくる。


「……っ! ごめん!」

 私は赤面しながら、指先で位置を確かめる。

 不意に、菜月が弓なりに身体を反らせた。

「……んっ!」

(……えっ!?)


 驚いて菜月の顔を見る。

「だめだって。そこ……くすぐったい……」

 悪戯っぽく笑って、下唇を甘噛みする。

 私は言葉を失い俯きながら、さらなる深みへ進めた。


 指先でトントンと合図する。

「……ここ、大丈夫かな?」

 菜月は頷いて答えた。

「……んっ。……そこ、いいよ……」



 ピピピと電子音が響く。

 ゆっくりと引き抜いて表示画面を確認する。


(……38.5度……? まだ上がるかもしれないな……)


 菜月は目を閉じたまま、浅く呼吸を繰り返している。


「……なつ、病院に行くか? 辛いだろ……」

「いやだ。病院は……行きたくない……」


 菜月は弱々しく頭を振り、私の手にすがるよう、ぎゅっと握りしめてきた。


「怜。……寒いから、僕をあっためてよ。……おねがい……」


 全身を小さく震わせる。


(このまま放置して、いいのか? とりあえず、身体を温めてやろう……)


「……わかった」


 意を決して、掛け布団の端を持ち上げた。

 滑り込んだ布団の中は、むわっと暖かい。菜月から発する熱を感じる。


 私は、菜月の震える身体を包み込むように寄り添った。細い身体を抱き寄せ、左手で肩を抱く。


「……んんっ……あったかい……。気持ちいい……」


 菜月は安心したように息を吐くと、私の胸元へ顔をうずめた。細い腕がそっと腰へ回される。


「……はぁ、はぁ……」


 荒い呼吸が服越しに伝わるたび、私の鼓動まで速くなっていく。


 一つの布団の中で重なる、ふたつの体温。

 心臓の早鐘が、嵐の夜の静寂の中にいつまでも響き渡っていた――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。