★第27話★ 終わる社会
★第27話★ 「終わる社会」
・・・御子柴がアヴァラスに変身してからおよそ1時間後。
時刻は17:15を過ぎている。
昨晩に続き、再び原始会議の緊急オンラインMTGが開催されていた。
仮想空間上の薄暗い会議室内に、
半径5m以上にもなる巨大な円卓を囲むように
怪人の姿をしたアバターたちが並び立つ。
・・・怪人は合計で3人しか揃っていない。
室内正面には150インチサイズのスクリーンが設置されている。
そのスクリーンの手前には、
顔面を覆い尽くす黒いガスマスクとインカムを装着した
原始会議の主宰”アイガンノーツ”がいる。
「君たちもご存知だろうが、現在、愛知県内にて
ラストによる無差別大量殺人が行われている。
現時点での被害者は推定1万5000人を超えている。」
アイガンノーツがボイスチェンジャーを通した声で説明を開始する。
「ドクターから報告は受けているが、
旧ラストは何者かによって殺害された後、
即、ドクターの手術により継承が行われている。
すなわち、現在暴れているのは”新ラスト”である。」
アイガンノーツがスクリーン脇に移動すると、
スクリーン上に”新ラスト”のものと思しき画像が数枚投影される。
「便宜上、新ラストを”アポカリプス・ラスト”と命名する。
まだ正確と断定はできないが、彼の能力は
”周囲の人間の身体や内臓を破裂させ、死に至らしめる”ことと推定される。」
「”破裂”って、めっちゃ痛そう・・・!」
現アヴァラス第2号”ペンデュラム・プライド”が独り言をこぼす。
「現時点で分かっていることを共有する。
彼の能力がおよぶ範囲は半径100m前後。
被害者の状況から、対象を指定せずとも発動する能力であると思われる。
余談であるが、現3号も先ほど被害に遭い、死亡した。」
スクリーン上にラストの3Dモデルが表示され、
サイドに説明が追加されていく。
「また、自衛隊の攻撃により、
少なくとも遠距離射撃によるダメージを受けた場合、
”即再生”することが分かっている。
頭部の50%超を飛ばしても、元通りに再生したそうだ。」
「近接ダメージなら通る、という算段が立っている、
ということですか?」
アヴァラス第7号”アナーキー・グリード”が訊く。
「いや、検証しないことには分からない。
しかし、彼に接近するのは死を意味し、検証は困難だ。」
アイガンノーツの回答に対し、グリードが少し思案する様子を見せる。
「彼の”即死攻撃”のからくりは、未だ人知の及ばぬ謎、なんでしょうか?」
「いや、謎ではない。
被害者の検死にて、”即死攻撃”は
既に”ウイルス”によるものであることが判明している。」
「なるほど。周囲100m圏内の空中にウイルスをばらまき、
それを取り込んだ人間を殺害する能力、か。
・・・となると、本件は実質的に私が赴くしかない、ということですね。」
グリードは、あらかじめ自身のイメージ内で構築した武装を
戦闘中に選び、生成する戦闘方式を取る。
そして、彼は初見の敵にも対応できるように、
一部の武装は変身直後からデフォルト状態で生成し、発動している。
その中にウイルスを除去するための
オート除菌システムがあるのだ。
「しかし・・・私が出るとして、問題が2つあります。」
グリードがアイガンノーツを見据える。
「1つは、昨晩、冷泉 奏多との戦闘時に受けた
頭部への衝撃により、”後遺症”が残っている状況です。」
「・・・その”後遺症”とは、具体的にどのようなものだろうか?」
アイガンノーツが尋ねる。
「本来、私は”武装のイメージ”さえ明確になっていれば、
一度の戦闘で生成できる武装の数に制限はありませんでした。
しかし、後遺症により、
デフォルト装備含め”計3つまで”の武装しか
生成できない状態に陥っています。」
「・・・なるほど。」
「問題の2つ目は、戦闘データが蓄積されていない初見の相手に対して、
私の99.999999999%が発動不能ということです。
一応、旧ラストの戦闘データをベースにして発動することは不可能ではないですが、
アヴァラスに”能力の継承”機能はない。
個々人によって”主欲望”と”副欲望”が異なるので当然だが、
変身者が変わった場合、全く別の特性を持つ存在となり、
旧変身者のデータは役に立たない。」
「つまり、本領を発揮せず、かつ、大幅に弱体化した状態で勝つ必要がある、と。」
アイガンノーツの問いに、グリードはゆっくりと頷く。
「アナーキー・グリードとして優越する点をほぼ潰された状態で、
ウイルス対策だけ施して、根性で特攻するようなものです。」
「・・・とは言っても、グリードは
昨晩殺害された第6号”ラース”の次に、単純な身体能力が高い。
”アポカリプス・ラスト”が無差別殺人に特化した能力であることを考慮すると、
彼が近接戦闘に秀でているとは想定しにくい。
よって、グリードで十分対処可能と考える。」
グリードはそれを聞き、やや怪訝そうな仕草を見せるが、
「まぁそうですね。」と答えた。
「何より、”アポカリプス・ラスト”を放置した場合、
社会が、いや、世界が壊滅する。
今、グリードに世界の命運が左右されていると思ってくれ。
それに・・・」
「それに?」
「本作戦はワタシが直々に遠隔でサポートするので安心してほしい。
とは言っても、最初から全てワタシの指示に合わせる必要はない。
必要になったら通話を飛ばしてくれれば良い。
モバイルポット経由の遠隔通話と、
あとワタシの声が外部に聞こえるよう
スピーカーを使用可能にしておいてくれ。」
アイガンノーツの提案が意外だったのか、
グリードは2,3秒ほど思案するように硬直していた。
★第27話★ 「終わる社会」 完結
お読みいただきありがとうございました。
今回は御子柴が新アヴァラス第5号”アポカリプス・ラスト”に変身し、
無差別殺人を決行していることに関して、
原始会議の緊急MTGが開かれる回でした。
第7号”アナーキー・グリード”は、冷泉との戦いで受けた頭部へのダメージにより
後遺症を負っていることが判明。
デフォルト武装も含め、一度の変身で「3つまで」の武装しか生成できなくなり、
明確に弱体化していました。
加えて、新ラストの戦闘データは現状不明なので、
発動すれば99.999999999%勝てる99.999999999%が発動不能な状況です。
グリードにとっては圧倒的不利な状況ですが、
原始会議主宰”アイガンノーツ”の遠隔サポート付きで
新ラストとの戦闘に臨むことを決意します。




