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摘人世界(てきじんせかい)  作者: まるマル太
【第5章】あなたにとって社会は必要ですか?
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★第26話★ 黒幕(?)の正体

★第26話★ 「黒幕(?)の正体」





・・・俺は気付けば手術台に寝ていた。


照明が俺を照らした状態で放置されており、眩しい。



腹部に痛みを覚えながら、ゆっくりと上体を起こす。


そこで俺は違和感に気付き、ふと床を見ると、

バラバラになった肉片および血溜まりと

手術用ガウンをはじめとする衣類が散乱していた。




・・・そうか・・・俺は”ラスト”株を移植してもらって・・・その先は?


ここに来るまでの直近の記憶が抜け落ちているような気がする。


おそらく相当強力な麻酔処置を施されたのだろう。




・・・果たして、手術は成功したんだろうか?


おそらく、隣で原型を留めない亡骸となっているのは

ドクターなぎだろう。



もしかして、俺が殺したのだろうか・・・?


いや、考えても無駄か。


・・・もう終わったことなんだ。




腹部の手術痕と、頭が割れるように痛い。


非常に気分が悪い中、

手術室を出たところにあった俺が来ていた衣類に着替える。


多量の血がこびり付き、乾いた跡があったが、

特に気にせず着用し、

ヨロヨロと誰もいない通路を歩き、

最初に見つけたエレベーターに乗り、地上へと向かう。




・・・段々とここに来るまでの経緯を思い出してきた。


俺は、行武ゆきたけ病院の地下にあるドクターなぎの研究施設に招かれ、

ラスト株を移植するための手術を受けた。






そのまま病院の裏口から外に出て、誰にも会わずに病院から出た。




・・・背後から追従してくるポットに時計を表示させると、

時刻は16:00を過ぎていた。


日付は変わっていない。




「俺は・・・俺は・・・」


・・・”とても大切なこと”が記憶から抜けている。


それは確信していた。


俺は本能に従い、ひたすら歩道を歩いた。



すれ違う人ほぼ全員が、不審がって俺のことをジロジロ見てくる。


おそらく衣類に隠せないほど多量の血が付着しているからだ。


でも、そんなことはどうでも良い。




・・・俺は、俺のやるべきことを思い出さないといけない・・・。




すると、前方50mほど先に、見覚えのある人間の姿が視界に入った。


俺のことをまっすぐに見据え、俺が近付くのを待っているようだ。



やがて、5mほどの距離を開けて、俺は立ち止まり、

その人間と向かい合った。




「・・・結乃ゆのか。」


鈴木すずき 結乃ゆの


インフルエンサー”ゆのぽん”の正体で、俺は彼女の活動の手伝いをしていた。



「・・・昨日会ったのに、随分と久しぶりの感覚ね。」


結乃ゆのは基本的にいつも無表情なのにも関わらず、

気のせいか、今は微かに笑顔を浮かべている。



「どうだった?

 ・・・”大切な人”を失った気分は?」



結乃ゆののその一言で、俺は忘れていたことをハッと思い出した。



・・・そして、何となく察した。




「お前が・・・”元凶”だったんだな。結乃ゆの。」


「”元凶”はお前だろっ!!御子柴みこしば りゅう!!」


結乃ゆのが瞬時に鬼の形相に変貌しつつ、

かつて聞いたこともないほどの大声を張り上げる。



「お前のせいで・・・みっちゃんは、自殺したんだ!!」



みっちゃん、というのは、

文脈的に結乃ゆのの弟で、

高校の同級生である鈴木すずき 満希みつきのことだろう。



「正確にはお前と、久田ひさだ あずさのせいだ!!」


・・・そう、満希みつきは、不登校気味のクラスメートだった。


俺が彼と仲良くするようになった結果、

多少自信を持った彼があずさに告白した。


しかし、彼はあずさに振られ、自殺してしまった。



「私は、みっちゃんに代わり、お前らに復讐する機会を待っていた!

 ずっと・・・どうやったらお前らが最も苦しむか、必死に考えた!!」


結乃ゆのは息を荒らげて続ける。



「お前と同じ大学に入学して、ずっと復讐の機会を待った。

 今年に入って、私はインフルエンサーの情報網から

 久田ひさだ あずさが1年浪人して愛知の大学に入学すること、

 原始会議げんしかいぎという謎の組織に属していることを知った。

 ・・・私は原始会議げんしかいぎに団員として入団し、

 そこで”第二世代モバイルポット”所有者に危害を加えた団員は

 皆、謎の死を遂げている、という情報を掴んだ。」


・・・結乃ゆのが口早に次々と情報をカミングアウトしていくが、

俺にとっては全く興味関心がなかった。



「私はその法則を利用して、

 久田ひさだ あずさが死ぬように作戦を考えた。

 ついでに、冷泉れいぜい 奏多かなたも利用してやった。」


冷泉れいぜいを利用?」


俺はふと呟く。



「・・・私は・・・冷泉れいぜい 奏多かなた従兄弟いとこなんだよ。

 ついでに言うと、奏多かなた

 みっちゃんが自殺したことを知った時に何も悲しまず、

 まるで他人事のように、のほほんとしていた。

 完全に副産物でしかなかったけど、

 昨晩、ヤツが死んでくれて本当に良かった。」



・・・つまり、昨日、俺がDBサーバーを盗みに行った時に

冷泉れいぜいが現れたのも偶然ではなく、

結乃ゆのが事前に情報を流していた、ということか。


そして、冷泉れいぜいに情報を流しつつ、

並行して原始会議げんしかいぎにも情報を流し、

冷泉れいぜいを餌にして、

アヴァラス第1号エンヴィと、

アヴァラス第7号グリードをあの場に誘導した。


さらに、結乃ゆのは、混乱に乗じて、

ポットオタクの月影つきかげ しゅんに、俺を捕えるよう依頼。


あずさが俺を助けに現れるのは

原始会議げんしかいぎ内部の情報で予測できたんだろう。




・・・全ては、結乃ゆのが仕組んだシナリオ通りだった、ということだ。


自殺した弟の復讐として、俺に最大の苦しみを味わわせるための。




「あぁ、願いが叶って良かったな。」


今の俺にとって、彼女の衝撃のトリックが明かされても、

もはやどうでも良かった。



「良かったじゃねぇよ!!!」


結乃ゆのが再び感情を昂らせる。



「もっと・・・私と同じ苦しみを味わってもらわないと困る!!

 お前の、大事な女が死んだんだ!!

 もっと、もっと、絶望しろよ!!

 なんで、そんな・・・涼しい顔でいられるんだよ・・・!!」



あずさの死を間接的に招いたのは、結乃ゆのだ。


しかし、俺にとっては結乃ゆのに対して怒りは湧いていなかった。



・・・あずさはもういない。


今更、結乃ゆのに対して怒り、

どんな言動をしようが、無意味なんだ。




俺にとって意味があるのは・・・「あずさとの約束を守る」こと。




「ごめんな、結乃ゆの

 この状況に・・・俺は、ある意味”満足”してるんだ。」



・・・もし結乃ゆのが俺に復讐をするという決断をしなければ、

摘人てきじん政策がスタートして早々に死んでいたんだろう。


社会貢献度が元々低かった俺は、結乃ゆのに助けてもらい、

即死を避けることができた。


もちろん、彼女にとっては、そこで俺が死んだら計画が台無しだから、

お金を出して、俺が死なないように泳がせていただけだろう。



でも、結乃ゆのがいなかったら、

あずさのことを、ただ「高校時代のクラスメート」として認識し、

あずさと再開しないまま、

あずさの人生に少しでも貢献できたという幸福も知らぬまま、

誰かに殺され、死んでいたに違いない。




・・・亡くなったあずさに対しては、非常に失礼な考えだと思う。


でも、今の俺は・・・現状を”肯定”している。




結乃ゆの・・・満希みつきの件、本当にごめん。

 そして・・・ありがとう。」


俺の言葉に、結乃ゆのは呆気にとられた様子で硬直した。



しかし、数秒で再び鬼の形相に戻り、

必死に何かを伝えようと息を吸ったが、それを遮るように俺は続けた。



「じゃあ・・・もう死んで良いよ。」




次の瞬間、驚愕の表情に変化した結乃ゆのの体が、

風船が一気に膨張し、割れるかの如く、一瞬にして弾け飛んだ。


そして、連鎖するように俺の周囲の通行人も、

俺を中心とした同心円状に

鮮血や臓物を撒き散らしながら弾けていく。




「・・・俺はあずさとの約束を守らないといけない。

 ”全部”終わらせに行こう。」


・・・俺は自分に言い聞かせるように呟いた後、

すぐ隣にあったショーウインドーに反射している自身の姿を見て、

体が怪人のものに変貌していることに気付いた。

挿絵(By みてみん)

俺はあずさから継承した”ラスト株”で怪人になった。


しかし、今の俺の姿はあずさの怪人態とはまるで違っていた。


全体「黒」を基調とした配色で、

全身に無数の血管が浮き出たような赤い模様がある。


身体の形状はシンプルで、人間本来の姿に沿った形状をしており、

特に武装のようなものは見つからない。




・・・しかし、これが俺が”全部”を終わらせたいと、

願った末に手に入れた力。


あずさとの約束を果たすために手に入れた力なんだ。




・・・俺はゆっくりとしたペースで直進を続ける。


周囲の人間は次々と弾け、死んでいき、

歩道も車道もどんどん赤に染まっていく。




俺はその惨状にはまったく興味がなかった。


ただ、俺の「目的の達成」に近付きつつあるという、

若干の達成感が蓄積されるまま、無感情で、

俺は一歩、また一歩と歩み続けた。






★第26話★ 「黒幕(?)の正体」 完結


お読みいただきありがとうございます。


ストーリー最序盤から登場していた鈴木すずき 結乃ゆのでしたが、

彼女の目的は、御子柴みこしばに対して、自殺した弟の敵討をすることでした。


彼女の目的は果たされたものの、御子柴みこしばは彼女に感謝します。


そして、「新アヴァラス第5号」となった御子柴みこしばの謎の能力により、

その場で体が破裂して亡くなりました。



果たして、無差別に人間を殺す御子柴みこしばの能力に、

残されたキャラクター達はどう太刀打ちするのでしょうか?


次回から最終章スタートとなります。

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