★第24話★ 予想通りの結果
★第24話★ 「予想通りの結果」
・・・俺はドクター凪の後を追い、
行武病院の駐車場へと急いで移動した。
俺の高校の同級生である久田 梓が変身した
アヴァラス第5号”コンテイジョン・ラスト”と、
突如現れた謎のネイビー野郎こと”ジェイゾロフト”の
激しい戦闘が引き続き繰り広げられている。
ジェイゾロフトは腰と背中に搭載したジェットブースターによる飛行能力を有して
空中を自由自在に飛び回っているのに対し、
ラストは体の各所からチューブを伸縮させ、
それを周囲の建造物に打ち込むようにして空中を移動する。
・・・俺みたいな一般人だと、
動きを追うことすらも難しいくらいの激闘だ。
こんなスピードで自由自在に宙を舞いながら戦う梓はやっぱり凄い。
「私がここまで攻撃を避けられるなんて、たぶん初めてよ!」
ラストの攻撃は主に接近してからの打激が中心だが、
ジェイゾロフトはひたすら回避に徹している。
「このワタクシのスピードを持ってしても、
全ての攻撃を避けることはできないとは・・・。」
ラストが繰り出す攻撃は、およそ5発に1発は命中している。
ただし、ラストの一撃必殺技である
「硬化チューブによる抉り取り」は全て回避しているため、
致命傷は負っていないと思われる。
ラストは一旦駐車場へと着地し、滞空状態のジェイゾロフトを見上げる。
「そろそろどこか壊れてもおかしくないと思うけど、
あなたは防御タイプなのかしら?」
・・・ラストのスピードは文句なしにズバ抜けているが、
決して素の攻撃力が高いアヴァラスではないように見える。
変身者である梓も小柄だし、
ラスト自身の戦法もスピードを乗せてゴリ押すタイプだ。
それが通用しない防御力の高い敵となると、
かなり不利なマッチングになってしまうと思う。
それでも、彼女は無敗の戦績を誇るアヴァラス。
きっと、これまでも何度も強い敵を倒してきたんだと思う。
「それはさておき、そろそろ攻勢に転じるとしますか。」
Vary・・・two seconds!」
『Recognized.』
ジェイゾロフトの声に合わせ、女性のガイダンス音が流れる。
すると、両肩に設置されていた金色の球体がそれぞれ分離し、
肩から5cmほどの距離を開き、空中で浮遊しながら回転を始める。
そして、右の拳を後方に引き、パンチを繰り出す態勢に入った。
次の瞬間、背中のブースターをフル稼働させ、
一瞬にしてラストまで距離を詰める。
ラストはすぐさま距離を取り、
ジェイゾロフトの右拳がアスファルトを捕える。
轟音と共に地が軽く揺れ、アスファルトがひび割れ、欠片が飛散する。
・・・片手で殴っただけなのに、凄まじい攻撃力だ。
ラストの全体重+スピードを込めた両足キックには
さすがに劣るだろうけど、
アスファルトの損壊具合を見るに、それに近しい威力と言わざるを得ない。
ラストは地上を不規則に動き回り、
狙いを簡単に定められないように立ち回るが、
再びジェイゾロフトが右拳を構えた状態で
ブースターを全開にしてラストへと迫る。
ラストは病院の壁にチューブを突き立て、
一瞬にして空へと飛び上がり、
ジェイゾロフトの右拳が宙を擦り抜ける。
「さて、順調にペースを上げていきますか。
Vary・・・four seconds!」
『Recognized.』
ジェイゾロフトが発声すると、
両肩サイドに浮遊する金色の球体の回転速度が上昇する。
先ほどと同じように右拳を構え、ブースターを噴出し、
地上に降り立ってきたラストに向かってまっすぐに接近する。
上から叩き付けるように拳を繰り出し、
ラストが後方へとステップを切ってそれを避けた。
再びジェイゾロフトの拳がアスファルトを叩き割る。
「くっ!!」
散乱したアスファルトの破片がラストに降りかかり、
思わず両手で受け身の姿勢を取ると、
ここぞとばかりにジェイゾロフトがラスト目掛け、ブースターで加速する。
ラストは咄嗟に両肘から1本ずつチューブを射出し、即座に硬化させると、
それらを地面に突き付け、その反動で宙へと舞う。
ジェイゾロフトは急な方向転換に対応できず、
腰のブースター噴射も併用しつつ減速し、
20mほど直進してから静止・着地した。
「・・・さっき英語を唱えた時から妙な動きをするわね。」
ラストが呟く。
「最初のtwo secondsの時に地面を殴った後、
元の姿勢に戻るまで1〜2秒程度の不自然な”ラグ”があった。
それは変身者の癖なのかな?と思ったけど、
次のfour secondsの時にさらにその”ラグ”が大きくなった。」
「まさか、たった3発でそこまで理解するとは!
さすがスピードを一番の武器に戦う第5号は
数秒の違いでも勘付くものなのですね。」
ジェイゾロフトが賞賛するような口調で言う。
「twoとfourでアスファルトの破損具合に
およそ2倍の変化があったことを考えると、
あえて全身の動作に”ラグ”を生じさせて、
そのラグ度合いに応じて全身のパワーを上げる、みたいな仕組みかしら?」
ラストの問いに、ジェイゾロフトは参ったとばかりに顔面に手を当てる。
「お見事!その通りです。ならば、話が早い。」
ジェイゾロフトはそう答えると、ファイティングポーズをその場で取った。
「先に第5号の必殺級の技がヒットするか、
もしくはワタクシのパンチがヒットするか、
というだけの簡単な話です!
Vary・・・eight seconds!!」
そう叫びながら、再びラストとの距離をブースターにより一瞬で詰める。
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・・・おそらく、このままヤツのパンチが一撃でも当たれば、
防御性能が低い私の体は致命傷を負う。
そして、ラグによってヤツの”身体”自体の動きは遅くなっているけど、
これまでのヤツの動きを見るに、
”ブースター噴出による移動”は「身体のラグとは無関係」に操作可能。
故に、今のヤツが唱えた”eight”の状態なら、
パンチを8秒後に繰り出す動作だけ予約しておいて、
後は背中・腰のブースターを使って、
ちょうど8秒後に私に対するパンチが命中する位置に移動してくると考えられる。
・・・つまり、この8秒間は私のターンだと思って問題ない。
もちろん「予約した動作をキャンセル」する機能を
実装している可能性もあるから、
全く反撃を考慮しなくても良い、という訳ではない。
でも、仮にキャンセルできたとして、
・twoなら2秒間のラグ
・fourなら4秒間のラグ
が発生するから、私が反応する隙が生まれる。
加えて、キャンセルからの初期状態まで戻して
”ラグ無し”の攻撃に切り替えてきたとしても、
twoからfourへの変化で攻撃力がおよそ2倍になったことを考えると、
”ラグ無し”状態の攻撃力は「twoの半分」程度と予想できる。
twoの半分程度なら、
two時のアスファルトの破損状態から察するに、
私にとっては致命傷にはならない。
・・・つまり、今私が最も警戒すべきは
・キャンセル無しの「eightパンチ」
・シビアな反応速度を要求される「キャンセルからのtwoパンチ」
この2種。
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「やっぱり・・・そう考えちゃうよねぇ?」
・・・それは、たった一瞬の出来事だった。
空中でジェイゾロフトがラストに急接近し、
ヤツの右前腕で何かが光ったかと思った次の瞬間、
ラストの右足が突如付け根から分離したのだった。
ラストは夥しい量の鮮血を撒き散らしながら、
5mほど下の地面まで落下し、鈍い音を立てて転がった。
仰向けに倒れている彼女のすぐ頭上に
先ほどまで彼女の右脚だったものが落下した。
「・・・あ・・・梓あああああああぁぁッッ!!!」
俺は何が起きたのか完全には理解できず、
叫びながら、無惨な姿にされたラストのもとへと駆け寄る。
ラストは数秒で梓の姿へと戻ったが、
切断された右脚は怪人の容姿のまま元には戻らず、
人間の姿となった彼女もまた、右脚が欠損した状態であった。
彼女の腿の付け根から赤い血溜まりがアスファルトに広がっていき、
俺はあまりの衝撃に彼女の隣に膝から崩れ落ちた。
★第24話★ 「予想通りの結果」 完結
お読みいただきありがとうございました。
今回でラスト VS ジェイゾロフトが決着しました。
一時、完璧な作戦を立てていたかに思えたラストですが、
それを逆手に取ったかの如く、ジェイゾロフトが一撃で仕留める、という結末になりました。
ちなみに、作中で名言されていませんが、
ジェイゾロフトの中にはとある人間が入っています。
そしてその人間は「これまで本作に登場したいずれかの人物」です。
黒幕やジェイゾロフトの中の人は
作中の表記だけで予想できるように書いているので、
良かったら考えながら読んでいただけると嬉しいです。




