★第19話★ 黒幕
★第19話★ 「黒幕」
ーーーーー時刻は15分ほど前に遡るーーーーー
・・・私の目の前には、かつての友であり、起業仲間である
冷泉 奏多の亡骸が血まみれで倒れている。
私はそれをただ呆然と見つめていた。
すると、耳部に装着しておいた、
モバイルポットからの通信を経由する通話機能を持つデバイスが鳴動し始めた。
『・・・ワタシだ。』
電話の主はアイガンノーツ。
原始会議の主宰であり、ガスマスクを装着し、
かつ、常時ボイスチェンジャーを使って話すので、
私を含め、その素顔を知る者がいるのかどうかすら不明の人物だ。
『これより原始会議の”緊急集会”を招集する。
迅速にオンライン通話が可能な安全地帯まで移動せよ。』
・・・緊急集会だと?
私が知る限り、過去には一度もこういったタイミングはない。
考えられる要件は2つ。
1つ目は、冷泉 奏多が死亡した件。
2つ目は、第1号が先ほど私が到着する前に殺害された件だと思うが、
現状、第1~4号は頻繁に継承が行われており、
普段通りであれば、わざわざ緊急で招集するほどのネタではない。
『グリードに告ぐ。エンヴィ株を回収し速やかに撤退せよ。』
「・・・エンヴィ株だけですか?冷泉 奏多の遺体は?」
『彼の遺体は一切触れずにその場に放置しろ。ワタシに考えがある。』
・・・原始会議には、そもそも服従を強制するような規定はない。
ただし、なぜか主催であるアイガンノーツに対して、
構成員は彼の指示に従う慣習がある。
「分かりました。」
通信を切り、エンヴィ株適合者の遺体に接近しようとしたその瞬間、
私は自身の体が前方に倒れ始めていることに気付いた。
咄嗟に片膝を付いた状態で持ちこたえる。
「クソ・・・後遺症か・・・」
私は一撃だけ冷泉 奏多が装着する
イフェクサーの拳撃を頭部に食らった。
私は怪人態への変身時に数種類の武装をオートで発動させているが、
その中の1つとして、
自身の体へのダメージを全身に均等に散らし、ダメージを分散させるバリアを展開している。
しかし、イフェクサーはその特性上、全ての攻撃が必殺技級に相当する。
・・・てっきり防げたと思っていたが、
バリアの耐久値を超えた威力の拳撃により、
初撃でバリアを破壊した上で、そのまま頭部へのダメージを通した、といったところか。
意思とは関係なく、怪人態への変身が解け、元の体に戻ってしまう。
どうにか意識は保っているが、頭痛が激しく、視界は激しく揺れ、
しばらくは立てそうにない。
・・・次の瞬間、私はまっすぐと私に歩み寄る足音に気付き、そちらに視線を向けた。
「初めまして、だなぁ!!」
ゴリゴリの筋肉質な体に、鋭い目付き、
上下動きやすそうな半袖Tシャツとスウェットに身を包んだ男が
目の前に現れる。
彼の背後には、半分が赤、もう片方が紫色をした
第二世代モバイルポットが追従している。
・・・これは非常にまずい状況だ。
社会貢献度は、規定値未満の対象を殺害すれば上昇する。
しかし、規定値以上の対象を殺害した場合、
一発で社会貢献度が0まで低下する。
私は冷泉を殺した。
つまり、私の現在の数値は・・・。
「俺様は、今在 征儀。お前、LEVOLの役員だよな?」
LEVOLというのは、冷泉と私で起業した社名だ。
「・・・そういうお前はヒサヤオー、いや、”アラタマ”の使い手か。」
・・・今はとにかく時間を稼ぐのが吉だ。
第二世代モバイルポットを所持している時点で、
冷泉が認めた”正義者”である可能性が高い。
第二世代モバイルポットは、利用者の行動を分析・判定した上で、
条件を満たした場合、すなわち”正義者”であると承認した場合は
武器モードへの変形を許可する。
もしヤツが”正義者”で、武器を解放されれば、
今の私なら簡単に殺害されてしまう。
・・・とにかく、時間を稼ぐしかない。
「そうだが。LEVOLの役員のくせに使用者の情報は把握していないのか。
ってかお前、何か勘違いしているようだが、お前の社会貢献度は規定値以上だぜ?」
・・・なんだと?
「それはどういう」
「そんなことより、この場で俺様と取引しろ!」
ヤツは私の話を遮るように新たな話題を振ってくる。
「あの赤と黄色の第二世代モバイルポットを修理して、俺様で利用者認証をしろ。」
ヤツは冷泉が使用していたモバイルポット”メーキ”を指差して言った。
・・・私はフザけるなと叫びたくなる気持ちを押さえ、
話を聞くことにした。
「そのくらいの要求を押し付けるということは、それなりのリターンがあるということか?」
「その通りだぁ!!」
ヤツは食い気味に返答する。
「まだ俺様の推理段階ではあるが、俺様たち共通のいわゆる”黒幕”がいる。
だが、まだ確定している訳じゃねぇし、
現時点でその人物を教えたところで、お前に不利益を与える可能性もある。」
・・・コイツ、何を言ってるんだ?
そんなフワフワしたことを言われて要求が通ると思っているのか?
「お前・・・今在とかいったな。目的は何だ?」
私が数秒の沈黙の末訊くと、
ヤツは待ってましたと言わんばかりに目をギラつかせて大きく息を吸った。
「”ドキドキとワクワク”をプレゼントして皆を幸せにすることだぁッ!!」
「・・・まぁ分かった。
モバイルポットの製造・修理を担当するLEVOLの下請け会社に掛け合ってやる。
ただし”黒幕”とやらの正体をお前が入手し、
その根拠と共に私に伝えるまで、お前の利用者認証は行わない。」
・・・少なくとも、これまでの会話から察するに、
ヤツは一般的な思想の人間ではない。
ここで下手に断れば、感情的になって私を殺害することもあり得る。
そして、そもそもの話、
第二世代モバイルポット”メーキ”はその特性上、使い手がかなり限定される。
冷泉 奏多というイレギュラーな人間以外が使用した場合、
我々アヴァラスにとっては、まったくもって脅威とならない。
「その条件で問題ないぜ!そんじゃ、連絡先交換しておくか!」
私は背後100mほどのところに待機させておいた自身のモバイルポット、
”オーゾネ”を近くに呼び戻し、ヤツと連絡先の交換をした。
私によって破壊されたポット”メーキ”をヤツが両手に抱えて去っていく頃には、
私の眩暈はかろうじて治まり、徒歩移動ができるまでに回復していた。
★第19話★ 「黒幕」 完結
お読みいただきありがとうございます。
アヴァラス第7号”アナーキー・グリード”は、
バリアの武装を使用してもイフェクサーの必殺パンチはダメージを防げていませんでした。
その隙を付くように、タイミング悪く今在 征儀が現れます。
彼によると、共通の”黒幕”がいるとのこと。
彼は冷泉が使用していた第二世代モバイルポット”メーキ”を
自分が使えるように利用者認証することを
グリードこと実宝院 駿河に持ち掛けますが、
彼は条件を付けて、要求をのみます。
”メーキ”は現在、グリードとの戦闘により使用不能となっていますが、
仮に修理したとしても「動作入力から出力まで2秒を要する」という特性上、
今在 征儀には特に適正のない装備です。
なぜ彼は当モバイルポットを使いたがっているのでしょうか?
次話で長かった第4章も終了となります。
ぜひお楽しみに!




