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摘人世界(てきじんせかい)  作者: まるマル太
【第4章】悔いなき取捨選択を
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★第17話★ ポイント稼ぎ計画始動

★第17話★ 「ポイント稼ぎ計画始動」




・・・俺は楠根くすね 泰然たいぜんに考案されたことを間に受け、

クラスの人気女性、久田ひさだ あずさに対する”ポイント稼ぎ計画”をスタートさせた。



この土日は勉強を中断し、脳みそフル回転でプランを考えていた。


目的は「彼女の記憶に俺の存在を強く留めること」。

ただし、直接的なアピールは厳禁だ。


なぜなら、この高3の夏という悪条件下で、

真面目で成績優秀な久田ひさだ あずさにアピールするのはリスキーだからだ。



つまり、あくまでもこの計画は将来のための”先行投資”。

ゴールは成人式で、今はただの準備期間。



それを踏まえた上で、俺が考えた手段は「ちゃっかり善行アピール」だ。


性格の良さをさりげなくアピールすることで

久田ひさだ あずさの中の俺の評価を爆上げする。


そして、そのアピールは今日から早速スタートする。




・・・朝のホームルーム5分前の教室。


同じクラスのとある席に近付き、そこで突っ伏している男子に声をかける。




満希みつき君おはよう!!話すのめっちゃ久しぶりだな!」

俺の声に、男が驚きと共に顔を上げ、驚いた表情を見せる。



身長160cm程度の猫背で不健康そうな細い体つきをしている彼の名は満希みつき

俗にいう”不登校生”だ。


彼は必殺奥義「アンリミテッド忌引きバースト」の使い手で、

週2~3回は忌引きを使って休む。


クラスで秘密裏に定着しているあだ名は「殺し屋」。


俺は去年も彼と同じクラスだったけど、

友達らしき人は1人も見たことがない。




「お、おはよう・・・。えっと・・・ごめん・・・誰だっけ?」

「ごめんごめん!俺は御子柴みこしば りゅう

 去年の運動会で二人三脚のペアになったじゃん?」


残念ながら、俺は殺し屋に認知されていなかったようだ。


・・・まぁ無理もない。

その運動会当日、コイツは来ていない。


しかも練習もろくに参加していなかったから

彼と一緒に足を結んで走ったのはたった1回だけだ。


無論、それ以外で彼との交流は一切なかった。




明らかに警戒している満希みつきの肩に優しく手を当てて、俺は続ける。


「1人で受験勉強大変だろうし、一緒に頑張ろうぜ!

 楠根くすねもいるし、チームプレイで頑張ろう!な!」

「僕・・・楠根くすね君ちょっとニガテなんだよね・・・。」


予想と180度ズレた返答に俺は思わず吹き出す。



・・・楠根くすね 泰然たいぜんは俺のイツメンだけど

確かにクセが強くて賛否両論なのは凄く分かる。



「なんだよ満希みつき、オモロいじゃん。

 そこ我慢するとこじゃねぇよ。」




・・・それから俺は満希みつきが登校している日の毎朝3分は

必ず彼と話すノルマを作った。



もちろん、クラスの他の人達には不審がられているだろう。


俺もハッキリ言ってクラスで中心にいるような人物ではない。


そんなヤツが意気揚々と

殺し屋・満希みつきと突然会話するようになったのは

違和感しかないと思う。



・・・でも、それで良い。


俺のターゲットは最初から久田ひさだ あずさただ1人だけ。


”不登校生に話しかけてあげる優しい学生”を全力で演じ、

彼女の視界に入る。


それだけで良い!






・・・それからちょうど2週間が経過した。


満希みつきとは合計5回話した程度。


不登校になった経緯や理由とか、深い話は皆無だけど、

それでも、段々と距離が縮まっている自覚が俺にはあった。




「放課後、メシ行かない?」


自分でも意外だった。


単なる久田ひさだ あずさへの印象アップ目的だったはずが、

俺は自発的に満希みつきをメシに誘っていたのだった。



「えっ・・・今日はちょっと・・・用事が・・・」

「ねぇだろ!行くぞ!」


半ば強引に約束をし、俺は満希みつきと共に教室を出た。




放課後、昇降口に向かう途中、

会議室の小窓から見覚えのある人物が室内にいるのを視界に捕え、

俺は立ち止まった。


綺麗な黒髪ボブヘアーが似合い、

色白な肌が美しい女子生徒。


見間違える訳がない。

例の久田ひさだ あずさだった。



・・・そうだ。思い出した!


この時期は放課後に成績優秀者向けの特別講義が開かれている。


俺はもちろん招かれていないけど、

彼女は学年200人中毎回20位以内に入るくらいの優秀者だから

対象者であることを疑う余地はない。




室内には既に合計で7人ほど学生がおり、

彼女は席に座っているが、その隣に他の女子生徒が2人立って、

彼女と会話している。


俺は思わず様子を傍観していたが、どうもその光景には違和感を覚えた。



・・・久田ひさだ あずさは友達と話すにはやけに悲しそうな横顔をしている。


それに、立っている女子2人の攻撃的な表情。


よく耳を澄ますと、彼女らの会話が途切れ途切れ聞こえてくる。




「・・・どうせ自分が一番可愛いとか思ってるんでしょ?」

「付き合う気ないくせに、男子とさも気があるように接して、マジで性格悪いよね。」


久田ひさだ あずさは黙っているが、

女子2人の猛攻は止まらない。


喧嘩、というよりもいじめに近いかもしれない。




・・・面倒くせぇ・・・。


女子同士の厄介事には絶対に介入したくない。


でも、ここは間違いなく”ポイント稼ぎ”としては

またとない絶好のチャンスに違いない・・・!


ただ・・・どうにかするだけの度胸が俺にはない・・・。




「お前らあああああああああッ!!!」


突然聞こえた大声に、俺は驚愕のあまり、

俺の目の前で会議室のドアを開け放った

男の後頭部を凝視して固まってしまった。


あの不登校殺し屋・満希みつきが、

突然聞いたことのないような大声で叫んだのだった。



当然、室内の誰もがこちらを凝視して、俺と同じように固まっている。




すると、次の瞬間、満希みつきは室内にズンズンと歩み入り、

先ほどの2人組の女子へと迫っていく。


次の瞬間、満希みつきは一瞬で右手を強く握り締めたかと思いきや、

2人組の片方の顔面を思いっきり殴り飛ばしたのだった。


「きゃっ!!」

もう片方の女子が驚愕のあまり叫ぶが、

次の瞬間、その女子も満希みつきの攻撃を顔面に食らい、

背後の長テーブルに背中から勢いよく倒れこんだ。


床には数滴の血痕がポツポツと垂れており、

学校ではなかなか見られない光景が数秒の間に展開された。




あまりの衝撃に脳の処理が追い付かず、

俺はポカンとして、その惨状を傍観するしかなかった。


それは、室内にいた無関係な学生も同じ状況だったのか、

5秒ほど経過してから他の女子の悲鳴が響いた。




・・・満希みつきの不登校の原因は不明だったけど、

この数秒で起きた出来事であらかた理解できた気がした。






★第17話★ 「ポイント稼ぎ計画始動」 完結


今回もお読みいただきありがとうございました。


16話に引き続き、主人公、御子柴みこしば りゅうの過去編となりましたが、

新キャラである”殺し屋”こと、満希みつきが登場しました。


彼は不登校生で、主人公は友達のいない彼に話しかけることで

久田ひさだ あずさの気を引こうと試みます。


しかし、満希みつきの意外な一面を目の当たりにし、

主人公はどういった行動に出るのか、次回以降楽しみにしていただけたらと思います。

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