表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
摘人世界(てきじんせかい)  作者: まるマル太
【第4章】悔いなき取捨選択を
20/41

★第16話★ 封印されていた記憶

★第16話★ 「封印されていた記憶」






「・・・あずささん。」


嬉しさと、懐かしさと、悔しさと、そして悲しさを

ごちゃ混ぜにした感情が、俺の脳を突き破るかの如く、

一遍に押し寄せてくる。


俺の記憶はいつの間にか2年前の過去にタイムスリップしていた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






・・・時は2048年。




7月に入った教室は、ただならぬ熱気で包まれている。


高校側がケチってクーラーの温度を28度に設定しているからだ。




この俺、御子柴みこしば りゅう

秋田県の高校3年生だ。


ついこの間まで所属していたボードゲーム同好会こと、

帰宅部同然のやる気のない男子onlyで固められた野郎集団での活動も全うし、

今は受験に向けて一応頑張っている・・・方だと自負している。




席に着いて1時限目の準備をしていると、

1つ前の席の男子が教室前方から走ってきた勢いを殺さずに滑るように着席した。


「おい”みこりゅー”、今日も成功だぜ!!」


みこりゅー、というのは俺の本名、

御子柴みこしば りゅうから来たあだ名だ。




「エアコンの設定温度を23度まで下げてやった!

 そしてリモコンの表示だけ電波の届かないところで28度まで上げておいたからバレねぇ!」


彼、楠根くすね 泰然たいぜんは何を隠そう、

俺と同じボードゲーム同好会の元部員だ。


去年、先輩たちが引退した直後、

部内では彼の提案で”賭博トランプ”が大流行し、

全校集会が開かれるほどの大問題に発展したことがある。


勉強はめっきりできないけど

発想は天才的でだいぶ面白い奴だ。




「いや23度じゃさすがにバレそうだけど・・・まぁ我慢するトコじゃねぇし良いか!」


「俺はスーパー暑がりなんだよ。

 ちなみに、”みこりゅー”は最近ちゃんと勉強やってんの?」


「当たり前だ!むしろ普通は今の時期がモチベ最高潮だろ!

 まだまだ無限の可能性を秘めている時期!東大も夢じゃねぇ!」




・・・とは言ってみたものの、

楠根くすね 泰然たいぜんほどボロカスではない”程度の学力しかない俺が

彼相手にイキっている姿を自分で想像するとなかなかに面白い。


そして、そんな俺の思考を全て読んだのか、

当のボロカス本人は目の前で盛大に舌打ちして笑顔を見せる。




「なんかさ~このまま勉強しかしないで卒業しちゃうとか

 最高に勿体ないんだよな。」


「いやいや、お前に限って残りの学生生活を

 勉強で潰す気なんて毛頭ないだろ!」


俺の突っ込みに泰然たいぜんはその通りと言わんばかりの指パッチンを繰り出す。




「記念に何かを成し遂げてから卒業したいよな。

 みこりゅーお前、久田ひさだ あずさに告白してみれば?」


「オイ!!声がデケぇよ!」


俺は慌てて泰然たいぜんの口を塞ぐ。




久田ひさだ あずさはうちのクラスメートの女子だ。


俺と泰然たいぜんが廊下側の最奥席に座っているのに対して、

彼女は窓際の一番前の席。


それでも平気で届くくらい

泰然たいぜんの声はデフォルトでデカい。




久田ひさだ あずさは、言うなれば男子からモテモテのJKだ。


150cmくらいの小柄で、奇麗な黒髪に

夏でも日焼けしていない真っ白な肌。


目はくりっとした大きな二重で、

おそらくどんな男子相手でも異性受けは間違いない。




しかも、彼女はよく男子とギャーギャーはしゃいでいる

下品な女子とは違う。


女子の決まった友達といつも行動していて、

男子とは必要最低限しか話さない。


俺の情報網では、彼女と特段仲の良い男子は存在していないことになっている。




更に、清楚系女子でありがちな

お高く止まっているような印象もない。


男子とも非常ににこやかに会話してくれる。




・・・それらが総じて、男子達の”夢”を加速させる。


「自分でも久田ひさだ あずさと付き合えるんじゃないか?」と。




しかし、そういった希望を胸に告白して撃沈した男子を

俺は2人知っている。


その2人からはいずれも

「今はそういうのには興味ない」

と断られた、という情報が入っている。




・・・つまり、理論上、現時点の彼女とは誰も付き合うことができない。




「しーっ!あのな、俺はあずささんが好きでもなければ

 高校で恋愛に燃える気はさらさらないんだよ!」


俺はかなり声を抑えて泰然たいぜんに囁く。




「そういや、久田ひさだ あずさも似たようなこと言ってたんだよな?

 ”今は”恋愛に興味ないとかって?」


「あぁ・・・うん。」


確かに、告白してフラれた男子からの情報ではそうなっている。




「じゃあ大学入ったら興味沸くかもしれないってことじゃね?」




・・・とても泰然たいぜんには言えないが、

ここだけの話、俺自身は大学入学と同時に

全力でウハウハ恋愛フィーバーする気でいる。


だから今は我慢している。


でも、あの久田ひさだ あずさが恋愛に燃えている姿は

どう頑張っても想像ができない。




「まぁ、泰然たいぜんの言うことも一理あるけど、

 あずささんくらいの学力だったら

 どうせ都会の有名大学に進学するだろ?

 そうしたらそこで生涯年収が高いイケメン男子を捕まえるはずだ。

 こんなド田舎の自称進学校出身のおバカと付き合うメリットなんてないさ。」


久田ひさだ あずさがめっちゃ地元好きかもしれないじゃん?」


「いや、どんな可能性に賭けてるんだよ!」




・・・秋田みたいな田舎だと、

学力上位層は大抵都会の大学に進学する。


久田ひさだ あずさは学年200人中

定期テストで毎回20位以内には入っていて、

よく成績上位者の張り出しで名前を見る。


だから、彼女も例に漏れず都会に行ってしまうんだろう。




「ん、待てよ・・・?

 別に地元が好きじゃなくてもイケるぞ?

 成人式バフがある!

 久田ひさだ あずさに今のうちに何か爪痕を残せば

 成人式の時まで覚えておいてくれるかもしれない。」


「”爪痕”言うな!てか、そもそもお前はなんであずささんを落とすことに必死なんだよ!

 泰然たいぜんお前、絶対恋愛に興味ないだろ!」


「ないよ。」


ドヤ顔でそう言った直後、泰然たいぜんは吹き出す。




「このクラスで久田ひさだ あずさは男女共に一定以上の人気がある。

 つまりブランド力がある。

 それだけで、彼女を落とすための戦略を練って

 落とそうと試みるっていう経験は大いに価値があることだ。

 でも正直なところ俺は自分では絶対試したくないから誰かに委託したい。」


「なんかお前・・・将来社長とかになりそうだな。」




分かるような、分からないような泰然たいぜんの話を聞きながら、

俺は彼のセリフで引っ掛かっていた部分を反芻していた。




「爪痕、か・・・。」




俺は別に久田ひさだ あずさと付き合いたい訳じゃない。


好きでもない。


泰然たいぜんみたいに、

彼女を落とすことに関する謎の競争心もない。




でも、もし彼女が俺のことを記憶の片隅にでも置いてくれるなら、

それはなんか魅力的だと思ってしまった。




久田ひさだ あずさみたいなかわいい子が

俺のことを少しでも覚えていてくれたら・・・。


それであわよくば成人式に感動的な出会いを果たして

ウハウハ展開に発展するとなれば・・・。


・・・悪くない。


まったくもって悪くはない。


そもそも俺が当初の計画通りに大学で彼女ができるとは限らないし、

保険を掛けておくのはアリよりのアリだ。


これは将来への投資なんだ!!




そして俺は泰然たいぜんに導かれるまま、

久田ひさだ あずさのポイント稼ぎ計画を脳内で企てるのだった。




・・・その結果、俺が”地獄”を見ることになろうとは、この時の俺が知る由もなかった。








★第16話★ 「封印されていた記憶」 完結



今回もお読みいただきありがとうございました。


謎の女性、あずさと出会い、

蘇っていく主人公が忘れていた(思い出さないようにしていた)記憶の数々。


果たして彼女と主人公の関係は?

なぜ主人公は高校時代の記憶に蓋をしていたのか?


次回から明かされていきます。




ここ数話は重苦しい雰囲気が続いていたので

16話はすごく明るい展開を目指して書きました。


おそらくこれ以降で16話のような明るい回はもうないので、

ぜひ覚悟を決めて次回以降読んでいただけると嬉しいです(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ