★第15話★ アヴァラス第5号の実力
★第15話★ 「アヴァラス第5号の実力」
「やれ!ゴキソー!」
ポットヲタクこと月影 舜の掛け声と同時に、
2m越えのロボットが俊敏な動作で走り出す。
そのロボットの標的は
血管ミイラ怪人であるアヴァラス第5号”コンテイジョン・ラスト”だ。
怪人は両腕をまっすぐ体の左側に伸ばすと、
次の瞬間、突然姿をくらます。
しかし消えたかと思った瞬間、
月影のロボットが突き飛ばされ、
近くの電柱をなぎ倒しながらアスファルトを滑る。
「なるほど、お前の戦法はだいぶ読めたぜ。」
月影が怪人に指差す。
「人差し指から高速でチューブを伸ばし、
一定以上の重量があるものに巻き付けたり突き刺す。
そっから高速でチューブを縮めて移動しているだけ、だろう?」
「そうね、当たり。」
怪人は特に隠す様子もなく、答える。
「それを見抜いたなら教えてあげる。
私の能力は”チューブの伸縮”と”チューブの軟化および硬化”。
それだけ。」
怪人は堂々と自分の能力について語り出した。
・・・俺は怪人の声を聞くと、なぜか視界が少し揺らいだ。
聞き覚えがあるような、無いような、ちょっと低いトーンの女声・・・。
怪人の能力だろうか?
いや、それならお喋りで、
俺よりも感覚が敏感な月影は気付いて口に出すはずだ。
じゃあ、俺だけに効果を発揮する能力とか?
・・・それもたぶん違う。
怪人は今のところ月影を攻撃対象にしており、
俺には殺意を向けてきていない。
「でもね、自分で言うのは憚れるけど、
アヴァラスは今のところ
5号、6号、7号は一度も”継承”されたことがないの。」
怪人の話に、月影はついてこれない様子で首をかしげる。
・・・無理もない。
俺はさっき偶然アヴァラス第7号から
彼らについての知識を得たけど、
一般人はそんなこと知らないんだから。
でも、怪人の言うことが本当なら・・・。
「つまり・・・5号、6号、7号はこれまで”無敗”なんだよね。」
そこまで言うと、怪人は再び姿を消す。
次の瞬間、月影のロボットが宙へと突き飛ばされる。
逃げ場を失ったロボットは上下左右に連続で弾かれ続け、
大きな音を立てながら地面に叩き付けられる。
「・・・さすがに格が違い過ぎる。反則だろ・・・。」
月影は絶望した様子で突き落とされたロボットを見据える。
上空から2本の管が素早くロボットに巻き付いたかと思うと、
高速で赤と青2色の閃光が直撃した。
まるでトラックが交通事故を起こしたような轟音が辺り一面に響き渡る。
俺は思わず反射で耳を塞ぎ、背中を丸めて俯く姿勢を取っていた。
・・・5秒ほどして頭を上げると
怪人はロボットの核となっているゴキソー部分に
右脚でキックを繰り出したままの姿勢で硬直している。
ゴキソー部分はクレーターのような凹みでペシャンコに潰れており、
原型がモバイルポットだとはもう認識できないほどに破壊されていた。
機能停止しているのは一目瞭然だった。
更にはゴキソーが合体していた各モバイルポットにまでも衝撃が伝わり、
先ほどの怪人のキック一撃でロボット全体に満遍なくヒビが入り損壊していた。
「・・・こんな高威力のキック放ったらお前の脚も絶対ヤバいだろ。」
月影はロボットの上で静止している怪人に声を掛けると、
怪人は俊敏に跳躍し、スッと何事も無かったかのように着地した。
「私の能力は”チューブの伸縮”と”チューブの軟化および硬化”。
”チューブの伸縮”で私の体の好きな場所からチューブを伸ばすことができる。
自分の右脚をコーティングするようにチューブで覆い、衝撃を肩代わりさせることで
私本体への衝撃は最小限に抑えられる。」
怪人はそう言うと、右手の人差し指を月影に向けた。
「私が硬化したチューブを伸ばせば人間の頭くらい一撃で貫ける。
今日は見逃してあげるから、さっさと逃げたら?」
月影は悔しそうな表情で怪人を睨むと、
踵を返して走り出し、数秒で彼の背中は見えなくなった。
それを確認すると、怪人は俺の方を向き返り、ゆっくりと歩き出した。
「・・・どうやら目的は俺だったようだな。」
誘拐か?殺害か?
もはやこんな状況なら何をされてもおかしくない。
怪人は俺の目の前で立ち止まると、静かに俯く。
すると、怪人の変身が解け、小柄な女性の姿が露になった。
水色のカーディガンに、紺色で膝丈のプリーツスカート。
かなり明るい茶髪で、首くらいまでのボブヘア。
少なくとも、俺がここ最近会ったどの女性とも違う、見知らぬ人物。
「・・・久しぶりだね、御子柴君。」
そう言い、女性は視線を上げると、俺の顔をまっすぐに見据えた。
・・・俺はその瞬間、後頭部を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
「なんで・・・こんなところにいるんだよ・・・」
俺は知らぬ間に自身の目から涙が溢れ出していることに気付く。
それと同時に激しい吐き気に襲われた。
脳内では時計の針が高速で回転し、俺の時間だけが過去に引き戻されていく。
そして、過去の一点に到着した途端
俺の口から一言の台詞が無意識に飛び出した。
「・・・梓さん。」
★第15話★ 「アヴァラス第5号の実力」 完結
今回もお読みいただきありがとうございました!
今回はアヴァラス第5号とゴキソーロボの戦いがメインとなりました。
アヴァラス第5号”コンテイジョン・ラスト”の口から語られた通り、
第5号、6号、7号は現状無敗で、株の継承が一度も行われていないことが判明しました。
アヴァラスのナンバリングというのは、あくまでも開発順であり、
戦闘能力の高さとは無関係とされています。
しかし、第5号〜7号は
これまでに継承が何度も行われている第1号〜4号とは別格の強さを誇ります。
そして、アヴァラス第5号の正体は
主人公と過去に面識のある女性だということが判明しました。
御子柴 竜の過去については
これまでほとんど掘り下げがありませんでしたが、
いよいよ次回から明らかにされていきます。




