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摘人世界(てきじんせかい)  作者: まるマル太
【第4章】悔いなき取捨選択を
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★第13話★ 正義の結論

★第13話★ 「正義の結論」






「先に断っておくが、99.99999(イレブン)9999%(ナイン)が発動した時点で

 私の勝利は決まっている。

 冷泉れいぜい 奏多かなた、お前の運命はもう覆らないぞ。」






全身が黒で黄緑色のラインが随所で輝く怪人、

アヴァラス第7号”アナーキー・グリード”は両手にトンファと剣を構え言った。






「そこまで自信たっぷりで言われるとさすがに萎えるね。」




「私の”主欲望”はあらゆることで目の前の相手よりも優位に立つこと。

 そして、それを実現するための手段は

 抜かりない完璧な想定を元に

 確実に相手を圧倒するというものだ。

 私はアヴァラスによる戦闘の場合、

 最低100回はシミュレーションを実施してから実戦に臨む。」




「それは随分とマメな性格だね~。

 でもそうなると、更に疑問が残る。

 ・・・君のその”迷い”は何だ?」




ガンメタリックのアーマー、強化外装きょうかがいそうイフェクサーを纏う

冷泉れいぜい 奏多かなたが問う。




「”迷い”か・・・。

 フッ、どうせ貴様のことだ。

 私の正体はもう見抜かれているのだろう。

 ならば、多少の未練があってもやむを得ないことくらい理解しろ。」




冷泉れいぜいはその言葉には一切反応しなかった。




「さっきから・・・」


黒い怪人がボソッと呟いた次の瞬間、

その姿が瞬時に残像となって消えた。




「お高く止まって癪に障るなぁッ!!」


冷泉れいぜいは怪人のトンファによる高速の打撃を受け、

衝撃を殺せずにそのまま電柱に背中から激突した。


間髪入れずに、怪人の持つ剣による素早い斬撃が

アーマーの左肩を直撃した。




肩の六角形のパーツが損壊し、そのまま地面へと落下。


が、ここで冷泉れいぜいの纏ったアーマーの右腕が僅かに動いたかと思った瞬間、

怪人の頭部には尋常ではない威力の拳の弾丸が叩き込まれていた。




怪人は思わず両手の武器を手放すと

両手で顔面を覆った格好でよろめき、10歩ほどゆらゆらと後退する。






「・・・私の計算がズレた・・・というのか?」


怪人は驚いた様子でまっすぐに前方の敵をまじまじと見据える。




「100回もシミュレーションしたのに予想と異なる手を打たれた。

 そう言いたげだねぇ。」


冷泉れいぜいは左肩を押さえながら言う。






「・・・後ろの見物人、さすがにもう逃げろ。

 おそらく、次の一撃で勝敗が決する。」


冷泉れいぜいは自身の背後で戦いを見物している

御子柴みこしば りゅうに呼び掛けた。




「・・・でも・・・俺は」


「これは完全に俺の勝手な推測だけど、

 君にはたぶん、ここで死ねないくらい大きな”未練”がある。

 ・・・まぁ、せいぜい頑張れよ。」




御子柴みこしば りゅうは唇を噛み締めて数秒思考を巡らせると、

そのまま踵を返し走り出した。






「さてと・・・これで邪魔者はいなくなったね。」


冷泉れいぜいは左腕の動きに不自由さを感じながらも、

ファイティングポーズで敵を迎え撃つ構えに入る。




冷泉れいぜい・・・本当に残念だ。

 こんなに才能溢れる人間が

 私欲を捨てて”社会”のために生きるなんて・・・。」




5秒ほどの沈黙の後、冷泉れいぜいが答える。




「才能?残念だけど、俺には才能なんてないんだよねぇ。

 なかったからこそ、俺は最終的に”社会”を目指すこととなった。」


「・・・言葉の意味が分からないが?」




怪人の言葉に、冷泉れいぜいは答えなかった。




「・・・私は冷泉れいぜい 奏多かなたの欲望の大きさを尊敬していた。

 そして、その強欲な人間がどう富や名声を手にしていくのか

 近距離で見ていたかった。

 そんな貴様が"社会貢献"などと唱え始めたあの日、

 私はLEVOLレボルそして冷泉れいぜい 奏多かなたに限界点を見た。

 ・・・答えてくれ、冷泉れいぜい

 なぜお前は心変わりをしてしまった・・・?」




「・・・残念ながら、それを今ここで言う義理はないんだよねぇ。

 ただし、1つだけ忠告しよう。

 ここで俺を始末すれば、君は”司令塔”を失う。」




「それは心配無用だ。

 私は”原始会議”という組織の理念に共感し、

 今では原始会議の主宰であるアイガンノーツを自身の司令塔としている。

 最も、私が冷泉れいぜいの思想に共感できなくなっていたタイミングで

 都合良く発見した組織である故、利用させてもらっていると言うのが正しいか。」




「・・・分かってないねぇ。」


冷泉れいぜいは何かを言おうとしたが、

そこで一旦止め、話題を変える。




「それに、その”原始会議”とやらは、実に奇妙だとは思わないかい?

 そんな都合良いタイミングで俺の思想に対抗する組織が出てきて、

 君はそこに所属することになった。

 ・・・その原始会議げんしかいぎとかいう組織に

 利用されているのは君の方だよねぇ?」




怪人は冷泉れいぜいにそう言われるとすぐには返答できなかった。




「・・・貴様には理解してもらわなくても構わない。

 さぁ冷泉れいぜい、決着を付けよう。」


怪人はそう言うと、両腕の六角形の装甲を前に向け、

空中にディスプレイを表示させる。




GITジーアイティー起動!フェッチ&リベース!」


彼がそう叫ぶと、彼の両腕に巨大なナックルのような武装が装着され、

続いて左上腕部に長方形のシールドが装着された。




「そろそろ、この時間も終わりか。」


冷泉れいぜいの右肩に装着された六角形のパーツが激しく高速回転を始める。






冷泉れいぜい 奏多かなたああああああああッ!!」


怪人が地を蹴って走り出すと同時に、

両腕のナックルが黄緑色に発光し始める。




冷泉れいぜいはそれを迎え撃つ構えで

右腕を隠すように後ろに引く。




怪人は体重を乗せたまま左のナックルを

敵の腹部目掛けて繰り出す。


その瞬間、冷泉れいぜいの身体が右にスライドするように移動し始める。


しかし、それとほぼ同時に

怪人の右ナックルが冷泉れいぜいの顔面へと迫る。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「”社会貢献”だと?冷泉れいぜいフザけているのか?」


私は何かの冗談かと思い、笑いながら冷泉れいぜいを見据える。




「いや、フザけてないね。

 これから株式会社LEVOL(レボル)は社会貢献活動に全力を注ぐ。」


冷泉れいぜいは見たこともないような無表情でそう返した。




「・・・似合わないぞ、冷泉れいぜい

 私は・・・貴様の欲望がどう膨れ上がり

 どう成果を修めていくのかをこの目で確かめたくて

 こうやってチームを組んだ。」




「いいね~、それなら数年以内に見せてやるとしよう。

 ・・・俺が作る【平和】な世界をね。」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






怪人の右ナックルが冷泉れいぜいの顔面を捕らえたかと思った刹那、

上体を自身の左側に傾けた冷泉れいぜい

強力な右フックを怪人の腹部に向かって繰り出す。


が、怪人は左腕のナックルでそれを正面から捕らえた。


怪人のナックル、冷泉れいぜいが装着したアーマーの右手部が

両者、一気に砕ける。




その次の瞬間、冷泉れいぜいの背後から

人工衛星型の飛行武器が上空へと飛び出し、

瞬時に眩い光で周囲を包み込む。


と、同時に怪人は左上腕のシールドを正面に押し出し、

放たれた光線を一点集中で受け止める。


1秒と経過せずにシールドが熱で溶解するが、

怪人は瞬時にしゃがみ込み、右腕を大きく後ろに引くと、

再び姿勢を戻し、ターゲットに向けて右腕のナックルを突き出す。




怪人の右ナックルが先ほど捕らえ損ねた顔面に命中した。






「・・・じゃあな、冷泉れいぜい。」






冷泉れいぜいの身体は物凄い衝撃を抑え切れずに

大量の鮮血を撒き散らしながらアスファルトを転がる。


やがて仰向けの姿勢で遺体は停止したが、

頭部はアーマーのヘルメットごと完全に潰れており、

そこから大量の血がドクドクと溢れ出して周囲に血だまりを形成していく。




「・・・重要なのは”社会”ではない・・・。」


怪人は激しく負傷した左腕を右手で押さえながら、

冷泉れいぜいの亡骸にゆっくりと歩み寄る。




「・・・”個人”だ。」








★第13話★ 「正義の結論」 完結







今回もお読みいただきありがとうございました。


ついに株式会社LEVOL(レボル)

冷泉れいぜい 奏多かなた

実宝院じっぽういん 駿河するが

2人の戦いが決着しました。



実宝院じっぽういんが変身するアヴァラス第7号こと

”アナーキー・グリード”は戦闘前に最低100回のシミュレーションを行うことで

99.99999(イレブン)9999%(ナイン)という能力を発動させることができます。


これは敵のデータが事前に必要であるという制約はあるものの、

発動した時点で99.999999999%勝利が確定するという能力であり、

非常に強力だといえます。



しかし、この能力をもってしても

シミュレーションで再現できなかった動きを見せる冷泉れいぜい

それほど強力な敵であったといえるでしょう。



ちなみに、主人公である御子柴みこしば りゅう

途中でこの戦場から去ってしまいましたが、

彼が逃げた先の物語にはまだ続きがあります。


次回以降はそちらを書いていきます。



是非次回もご覧ください。

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