スタータウン編
前編
「え?」驚きからかエリドの口から言葉が出る。
ゆるやかに流れる川、よく手入れされた田んぼ、風を運ぶ風車。
エリドは今、田舎に旅行にでも来たような気持ちでいた。
晴れやかな天気がエリドの足を動かす。まるで、春の陽気に誘われたようエリドは歩み始める。
「とりあえず、行こう!、、ってうん?」前に向かう事を決めたと同時にエリドは真下に“何か”を見つける。
「何だろう、これ?」エリドはそんな疑問を元に、それを拾い上げる。
紙だ。具体的に言えばノートの切れ端のようなものだった。
「んーと、何々??」
『1日目 旅は四人揃って始まる!ちょ〜面白い旅になりそう!』
と上記されていた。
「何だか日記みたい。とりあえず持っておこう!」
そう言うと、エリドは紙をポケットに入れた。そして再び歩き出した。
田舎の景色に浸っていると、不意に“何か”がエリドの前に現れた。
紫色で、ブロックのような形をしている。
「ヒュン!」突如、その何かは口に空気をため、エリドの方に攻撃をしてきた。
正に“空気の矢”の攻撃と言って良いだろう。
「うわっ!」相手のエイムが悪かったのか、エリドの位置が良かったのか。攻撃はエリドの横を通り抜けた。
「敵だな!よ〜し」エリドはすぐさま構えを取る。
(落ち着け。思い出せ。さっきみたいに、、、)
エリドはオーラを身体中から放出させる。そのオーラは胸から肩へ。
肩から腕へ。腕から手へ。集中していく、、、
中編
「ヒュン!!」空気の矢は勢いよく飛んでくる。
「っ!おっと!うわっ!」エリドは空気の矢をすれすれで回避する。
しかしバランスを崩してしまう。タイミングを見計らったかのように敵の攻撃は飛んでくる。
(やばい!!)エリドは目の前の現状に焦りを覚える。
(こうなったら!!)エリドは前方に転びそうになった勢いをうまく利用しでんぐり返しで、敵の攻撃を回避した。そしてそのまま大きい看板に身を隠した。
「はあ、はあ。危なかった。。」エリドは息を切らす。エリドが身を隠していても敵は攻撃をやめない。
「っ!」空気の矢は何度も飛んでくる。そして砂埃が舞う。
その砂埃が晴れ、エリドは真下を見た。
(!これなら。。やってみよう!)
エリドは小石を二つ手に取った。そして、敵に向かい投げた。
「ヒュン!」敵の攻撃は見事1個目の小石を粉砕させた。
しかし、2個目の小石は敵に当たる事なくそのまま地面に落ちた。
それを見てエリドは確信する。
(やっぱり!矢は一つのものにしか打てないんだ!)
「って!それが分かったからってどうすれば良いんだ〜!!」
エリドは自身の無知を嘆く。
「ヒュン!」敵の攻撃は看板に当たり、いよいよ看板も限界を迎えていた。
「あ〜!もう!行こう!」エリドは小石を一つ持ち大きな看板から身を乗り出した。そして小石を敵に向かい勢いよく投げる。
「ヒュン!」敵の攻撃は再び小石を粉砕させる。
その隙にエリドは地面をスライドし、敵へと距離を詰める。
ブウウン!!エリドの右手の拳に強大なパワーが募る。
「ヒュン!」敵の攻撃だ。ほとんどクールタイムなく放たれた攻撃はエリドの作戦を挫く!、、はずだった。
「よっと!」エリドは小石を取り出して、そのまま敵の攻撃を相殺させる。
「はあああああ!!!!」エリドの拳が敵を貫く。
敵はピタリと止まる。ばあああん!突如強烈な破壊音と共に敵の体が砕ける。
「ふう、やった!」エリドは喜びを噛み締める。
そう、敵に命中していなかった地面に転がって出番を待っていた石をエリドは拾ったのだ。そして敵の攻撃を無効化した。正真正銘、エリドの作戦を勝ちである。
突如エリドに記憶が流れ込んでくる。
『暑い太陽に照らされる。
「お〜い!マエル!こっちこっち!」少年が向こうで手を振っている。
子供の頃のエリドだ。誰かに手を振っている。
「お〜い!待てよ!エリド!」エリドの呼びかけに誰かが答える。
艶のかかった赤髪、爽やかな雰囲気。』そんな記憶をエリドは思い出す。
「、、、今のがマエル。もう少しで思い出せそう、、、」エリドはそう言い放つ。
そんな余韻に浸る間もなくまたもや敵が現れる。スライムのような敵だ。
エリドに挑もうとするが、先ほど粉々になった紫色の敵の姿を見つけて逃げ出す。
「! まて!逃がさないぞ!」エリドは言う。
(俺も、あの“空気の矢”見たいな攻撃を!俺にだって出来るはずだ!!)
そして、エリドは銃の形を手で作り、指先にオーラを集中させる。
ビュウうううん!!パワーがチャージされ放たれた。見事、スライムを仕留めた。
「あっ!」そして、再びエリドは記憶の世界に誘われる。
『大丈夫だ。もし、離れてしまっても。俺が必ずお前に会いに行く。だから待っていてくれ。エリド。』
現在のマエルに言われた事だろうか。そんな記憶を思い出した。
まだ、『マエル』の存在に根拠はない。しかしエリドは自分の胸に確かに暖かさを感じていた。
「ひひ〜ん」何か声がした。
「え?」エリドは驚く。目の前を見るとユニコーンのようなものがいる。
「ひっ、ひっひーん!!」ユニコーンは雄叫びを上げる。
「え!?う、わあー!」
そしてエリドは光に包まれていく、、、
後編
「あ」エリドは壮絶な光から目を開ける。
「、、」エリドはしばらく辺りを見回してみる。案の定全く見覚えがない。
「ここは、、」エリドは出口を探すため、奥へと続く道へ歩いていく。
エリドのこの空間への第一印象は「不思議なところ」だった。
暗く、どんよりとした場所だ。太陽の光もあまり入ってこず影が目立つ。
しかし、どこか暖かさも感じてしまう。まるで誰かの温かい記憶がこもっているような、、、 それゆえの感想だった。
しばらく歩くといろいろ分かってきた。おそらくここは“洞窟”だ。
煌びやかに光る鉱石。閉鎖された空間にも響く鳥の囀り。
かすかに刺す太陽の光。どれもエリドの心に刺激を与える。
ふと、目の前が行き止まりであることに気づく。どうしようかとエリドは目を閉じ考える。そして目を開ける。そこには“人影”がいた。
人影というより光が差し込まず、姿が見えない。
閉鎖された空間で、得体の知れないものと二人きり。敵かも知れない。
そんな恐怖があった。あったが、エリドが初めて取る行動は。
闘い、ではなく対話であった。今までエリドが会ってきた相手はどれもエリドの敵であった。ならばこの場で闘いを仕掛けることは最善の判断と言える。
しかしエリドは闘いを選ばない。選ばないというより選ばなかったのだ。
何かがエリドをそうさせた。
「だ、誰だ!?」エリドは焦りながらも相手に質問を投げかける。
『、、、』目の前の人影は何も答えない。沈黙。その後
『俺は影だ、、、』そう影は答えた。
「影、、?何が目的だ!」エリドは相手の言葉に動揺しつつも多少の冷静さを残している様子だった。
『目的、、?そうだな。お前に挨拶をしに来た』影はそう答える。
『お前に問おう。お前の周りに大切な存在。あるいは愛している存在はいるか?』
今度は影がエリドに質問をする。
「、、いる!気がする!!」エリドは曖昧に確かにそう答える。
『気がする?どういう事だ?』当然影は疑問を持つ。
「分からない、、実は全然覚えていないんだ。」エリドは正直に答える。
『覚えていない?ならなぜ今いると思ったんだ?』
当然の質問。しかし今記憶を失ったエリドに対して模範解答など見つからない。しかしエリドは容易く答える。質問の重さに合わないほど。
もうすでに“マエル”が約束してくれたから。
「俺、思うんだ。たとえ友達や好きな人を忘れていたとしても思い出で繋がっていてまた会えるって!!」
『!!!!』
光が差し込んでくる。まるで影を光で包まんばかりに。
落ち込んだ心を慰めるように。目の前の影が光を見れるように。
「だからおれは繋がりに確信を持てるんだ!」
そう言ったエリド自身にはなにもその言葉の根拠はなかった。
しかし、その言葉はエリドにとって嘘ではない。そう思わせる何かがあった。
“何か” それをエリドは知らない。誰にも分からないだろう。
エリド自身がその答えを見つけることになるだろう。
「そうか。いるんだな。実は俺にも好きな人がいるんだ。』影は言う。
「そうなの!付き合えると良いね!」エリドは言葉を返す。
『、、、』一瞬の沈黙。何か思うことがあったのだろうか。
『ああ、ありがとう。』影は素直にその言葉を受け取る。
『そろそろ行かなくては。』影は言う。
「もう行っちゃうの?せっかく仲良くなれると思ったのに、、」エリドは寂しそうにそう言い放つ。
『ヴァガス』
「え?」
『俺の名前だ』ヴァガスはそう言い放つ。
『またな、エリド。』ヴァガスはエリドに言う。
「、、、」
『そんな顔をするな。大丈夫だ。』
年上のような包容力があるような、それとして無邪気さがあるような笑顔でヴァガスは言う。
ヴァガス『影が俺たちを導いてくれる。また会おうエリド』
そう言って少年は消えていく
エリド「あれ、なんで俺の名前知ってるんだろう」
なぜヴァガスはエリドの名前を知っていたのだろう。何か暖かい、残酷、嬉しい思い出があり、エリドのことを知っていたのかもしれない。それはまだ誰にもわからない。だがまだ1人にしか見つかっていない影の記憶を除けばわかるかもしれない。不思議なような、暖かいような、勇気づけられるような経験をしたエリドは大事な仲間との再会が待っている次の街へと足を踏み入れるのだった、、、




