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大賢者ユノと弟子のリゼ  作者: グランチャイルド
第3章 大陸横断編(前編)
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第77話 ▲理の賢者◆ルーファス

 男が驚いて振り返ると、上半身裸のルカが、静かに立ち上がっていた。


「変態……」


 瓶の中で、シルフィが途切れそうな意識の中で小さく呟く。


「へぇ、驚いたな。君には僕の魔法が効かなかったのかな?」


 男が感心したように目を細める。


 ルカは自作の奇妙な魔導機を取り出すと、テーブルの上にコトリと置いた。



 【魔導機No.004】

 『魔導式ジャミング機』——相殺くん

 


「あなたの竪琴から、わずかに『不協和音』が聞こえていましたので、あらかじめ『相殺くん』を起動しておきました」

 

「ふぅん。君は実に素晴らしいね」


 男は興味深そうに、そして楽しそうに、クスクスと肩を揺らした。

 

 ルカはその瞳に鋭い光を宿す。


 ——ルカから名言が炸裂する。


「【ユノ大先生語録第0012番】『気を抜くな』

 同じく【第0047番】『常に戦闘を想定しろ』

 そして【第0099番】『酒は呑んでも呑まれるな』」

 

 ルカの膨大な語録コレクションの中から、珍しく極めてまともな方の名言が次々と飛び出す。

 ちなみに、99番は厳密に言うとユノの言葉ではなく、アルトリウス学長の言葉をユノが引用したものである。


「本当に君は面白いな。……それ、ユノの言葉かい?」


 男は感心しながらルカを見据えた。

 

「……大先生をご存知なのですか?」

 

 男は竪琴を肩に担ぐと、芝居がかった仕草で一礼してみせた。


「僕は『理(ことわり)の賢者』ルーファス。彼と同じ、三賢者の一人さ」


 

 三賢者。


 『時の賢者』——ユノ

 『星の賢者』——フィオナ

 『理の賢者』——ルーファス



 大陸において彼らは、伝説的な存在そのものであった。

 なお、ルーファスは日頃からしょっちゅう変装しているため、ユノやフィオナと違って素顔があまり知られていなかった。


「言っておくけど、僕は君の敵ではないよ。

 ただね、古代賢者エテルノスが成し遂げられなかった偉業……『究極魔法』の完成に、精霊ちゃんの力が必要なんだよね。

 それに最近は『精霊狩り』も暗躍してるみたいだから、これは保護でもあるんだ。

 ルカくん。今回は、見逃してくれないかい?」


「断ります。シルフィさんは、絶対に渡しません」


 ルカは一歩も引かずに言い放った。

 

 一応補足しておくが、ルカはシルフィのためを思って言ったわけではない。シルフィをユノの所有物だという盛大な勘違いを起こしていたからそう言ったに過ぎなかった。

 なお、契約精霊は対等。精霊は所有物ではないことを念のため申し添える。

 


「キュン……!」



 『絶対に渡さない』。その熱い言葉を聞いたシルフィから、何故かときめきの効果音が発せられた。

 

「変態っ……あたしのことをそんな風に思って——いや、待って! それより今の効果音おかしいから!絶対違うからね!?

 作者の意図的なやつだから! なんでピンチの時にこんなメタ発言させんのよォ!!」


 囚われの身でありながら、全力で世界の壁を越えたツッコミを入れるシルフィ。


「そうか、残念だ。君のような子とは、なるべく戦いたくないんだけど……。それならさ、ルカくん。僕の『弟子』にならないかい?」


 この場を収めたいルーファスが提案する。賢者の弟子——破格の提案であるといえる。


「それもお断りします。僕は生涯、ユノ大先生の弟子、いや右腕ですので」(※勝手な妄想です)


 ルカは譲らない。たとえ賢者であろうと、彼の信条を曲げることはできない。


「つれないなぁ……。ま、仕方ないか。それなら一旦、僕は引くことにするよ。君に免じて、シルフィちゃんは返してあげる」


 ルーファスがパチンと指を鳴らすと、瓶が消滅するとともにシルフィは元のサイズへと戻った。


「ユノはね、『時の塔』を目指しているはずだよ。ルカくん、君が旅を続けるなら、またどこかで会えるだろう」

 

 ルーファスは最後に「アデュ~♩」と言い残すと、かき消えるようにその場からいなくなった。

 

 

「シルフィさん、大丈夫ですか?」

 

 ルカが駆け寄る。

 

「……変態。今回ばかりは、本当にあんたに助けられたわ。……ありがとね」


 へろへろになりながらシルフィは少し顔を赤くして、素直に感謝を口にした。


「いえ、当然のことをしたまでです。……本当はあげたくないんですが、この『賢者の聖水』飲みますか!?」


 ルカが躊躇いながらもシルフィに小瓶を差し出す。

 

「それは絶対嫌! ていうかそれ、回復薬じゃなくて、ただの冷え性とかリウマチに効く温泉だからね!? 何度も言わせないで?!」

 

 夜更けのハーモニアの酒場に、シルフィの激しいツッコミが再び虚しく響き渡るのだった。

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