第25話 精霊女子会 〜ストーカーについて〜
——神秘の光が揺らめく精霊界。
もはや恒例となった精霊女子会のテーブルの上には、いつの間にかどこからか調達された上質なベリータルトが並んでいた。
しかし、四精霊たちの視線はスイーツではなく、中央に浮かぶ大きな水晶画面に釘付けになっていた。
「アハハハハハ! ちょっと待って、お腹痛い! また事件起きてるじゃん!!」
シルフィが空中で激しくのたうち回りながら大爆笑している。
「この魔法学校、マジで退屈しないねー! 毎日最高のお笑い提供してくれるじゃん!」
「まったく、次から次へとよくやるわ。今度は男のストーカーかよ。ユノの奴、女だけじゃなくて男まで引き寄せるようになったのか?」
イグニスが呆れ果てた様子で、紅茶をズズッとすすった。
「いいえ、イグニス。今回の件は少し事情が違います。もともと彼はリゼ様に好意を寄せていたようです」
ウンディーネが眼鏡をクイッと上げ、お馴染みの情報が詰まった手帳をパラパラとめくった。
「私の調べによりますと……実はリゼ様、学生時代に何度か男性から告白されたことがあり、普通にモテるお方だったのです。ただし……」
「ただし……?」
テラリアがタルトをモグモグしながら首を傾げる。
「告白してくる男たちの質が、少々個性的と言いますか……。夜中に部屋の前で自作の愛のポエムを朗読する者や、リゼ様の髪の毛を欲しがる者など、なぜかストーカー気質だったり、執着心の強い『変な男』にばかり好かれる傾向にあったようなのです」
「うわぁ……。確かにリゼちゃん、普通に男運なさそうだよね」
シルフィが容赦のない辛辣な一言を放つ。
「っていうか、今回のあのルカって男も相当やばいよ! 見てよこれ、目バッキバキじゃん!」
シルフィが指差した水晶画面には、目をバッキバキにしながら、ユノの後をストーキングしているルカの姿がドアップで映し出されていた。
「これ普通にホラーだよね!?」
シルフィがガタガタとわざとらしく震えてみせる。
「……男のストーカー……一番、危険……」
テラリアがボソリと呟くと、一同は「間違いないわね」と深く頷いた。
しかし、画面が切り替わり、三人のお姉さん(リゼ、セシリア、エレーヌ)に守られ、泣きべそをかいてリゼのスカートの裾をぎゅっと握りしめるユノの姿が映し出されると、精霊たちの空気が一変した。
「——っ!!! ちょっと待って、何あの技!?!?」
シルフィが胸を押さえて悶絶する。
「ピンチの瞬間に、最強のお姉さん三人衆を同時召喚! からの、ウルウルお目目で庇われモード突入!? あざとい! あざとすぎるよユノ大先生ーーーっ!」
「うっ……これは確かに、女の本能を狂わせる可愛さですね……。あの冷静なエレーヌお姉様まで完全に母性を狂わされています。さすがは我が主、人たらしの年上キラーっぷりに磨きがかかっています」
ウンディーネも思わず頬を染めて悶絶している。
画面の向こうでは、一時間みっちり説教を食らい、魂が抜けかかりながらも「僕は……ユノ大先生の……脱いだ姿を……この目で……」と白目を剥いて虚空を見つめ、ブツブツ呟いているルカの姿。
そして、彼を置いて、リゼたちがユノを連れて楽しそうに夕食へと向かう姿が映し出されていた。
「ホラー通り越して、もう放送できないレベルの絵面だな、これ」
イグニスが率直な感想を述べる。
「あー、面白かった! この学校ほぼ毎日事件起きるから、人間ウォッチ楽しー!」
シルフィが最後にパチパチと拍手をして総括する。
「さて、次はどんな災難がユノを襲うのかなー? リゼちゃんの嫉妬爆発か、それとも闇堕ちルカくんの逆襲か! 次回もお楽しみにー!」
完全に地上でのドタバタ劇を極上のエンターテインメントとして楽しんでいる精霊たち。
彼女たちの悪趣味な笑い声は、今夜も精霊界にいつまでも響き渡るのだった。




