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先々代魔王がお盛んだったことを知らされても困る

「……なるほどね」


 ナガちゃんにお茶を注いでもらいながら、あたしはため息をつく。


「要するにあたし、勇者パーティに生贄に差し出されたってわけね」


 そりゃ、まあユウリエがキレるのもわかるわ。これじゃ完全に生贄だもの。あたしだってそうなる。

 とはいえ、この状況では他に道は無し。あたしも嫁に来たからには、相応の働きが必要よね。


「今は魔素の量を増やす条件が他にないかを考えるべきよね。アシュヒトさん、先代魔王には王妃がいなかったのよね。じゃあ、その前は?」

「おられました。先々代魔王様の花嫁様は魔界との境界近くにある街のご出身だったそうで、私はお目にかかったことはありませんが、まるで人形のように物静かな方でいらしたとか」


 前の妃の話は、個人的にも興味がある。その人が輿入れした直後から魔素が増えたって話だし、こっちにはない何かの条件を満たしていた可能性も高い。


「その人は魔界に輿入れして、先々代の魔王の妃となったのね。まあ……もう生きてはいないんでしょうけど」

「そうですね、先々代魔王様は先代に王位を引き継がれたのち、辺境で滅びを迎えられました。それ以前に、すでに花嫁様は身罷られていたと伺っております。ですが」


 アシュヒトさんは一度口を閉ざすと、困ったように顔を顰め、オズワルドを窺い見た。その視線に気づいたオズワルドが、苦々しく顔を顰める。


「……え、なによ」

「先々代魔王には子がいる」


 は、子ども? 昨日聞いた話じゃ、魔族は魔界の万物から自然発生するんじゃないの? と思ったけど、そういえば昨日、アシュヒトさんがちらっと言ってたっけ。


「たしか、魔王は花嫁との間に子供を作れる、だっけ。自然発生するはずの魔族なのに。にしても、なんで魔王だけ?」

「これについては、学者たちの間で今も議論が分かれております。一つには魔界の環境変化に順応するため、とも」


 アシュヒトさんの回答も、なんだか歯切れが悪い。


「なぜか魔王だけは別格なのだ。子をなす権利を持ち、そのためにも花嫁を求める」

「先々代魔王様は極めてその、旺盛な方で。先代魔王様の他に9人のお子がおられました」

「えっと……側室さんでもいたの?」

「いえ、先々代とその花嫁様の間に、先代と合わせ10人のお子が」


 おいおい、それは旺盛で済ませていいレベルじゃねえぞ。


「……先々代の花嫁さん、人形みたいに物静か、なんて表現じゃ済まない状況だったとしか思えないわね」

「……なあ」


 ぼそ、と声をかけてくるオズワルド。言いたいことはわかるわ。無理に我を通したら、間違いなくあたしがキレる案件だと予測しているんだろう。


「……とはいえ、それが必須の条件なら、これ以上魔素が減る前に覚悟を決めないとね」


 あたしの言葉に、オズワルドは少し目をみはって、それからどこかホッとしたように頷いた。

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