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ピピピ……
「ん…」
気持ちの良い日差しが部屋に注がれていた。
ここはリビングの隣。
間にクローゼットが有るから全く物音は聞こえないけど。
零は南向きのとても良い部屋を私に与えてくれた。
日中、家に居る私の事を考えてなのか、零の書斎には入ったことが無いから他の部屋がどんな風な部屋なのか分からないけど、少しは私の事を考えてくれたのだろうか。
着替えを済ませて身支度を整え、まずは自分の分のコーヒーを淹れた。
そして何時でも淹れられるように零の分を準備する。
今日は帰ってきているのだろうか。
別に1人分ずつ入れたい訳じゃないけど、やはりコーヒーは淹れたてがおいしいから。
広すぎるLDだけれどカーテンを開けた大きな窓は明るく、統一感のある家具で揃えられたここは昨日帰宅した時とは全く印象が違って見えた。
悪くないわ…
と思いながらカウンターに座り窓から外を見た。
良い天気。
ガチャ…
そこへ零が入ってきた。
シャワーを浴びた後らしく髪が濡れている。
「おはようございます」
「あぁ」
キッチンの中に入ってコーヒーを淹れる。
お湯は沸かしてあったから時間はかからない。
たちまちコーヒーの良い香りが部屋に広がった。
その間に一度出て、戻ってきた零は髪もセットされておりスーツの上着を手にもった状態。
モデルなんか霞んでしまうほどの着こなしに流石は桐生の御曹子と納得してしまった。
洗礼されている。
だけど格好いい人や所謂イケメンと言われる類いの人は回りにも沢山居る。
別に珍しいわけでもない。
私の父がそうだった様に、人は見かけと中身が伴うとは限らないと知ってるから、そう言うものにも興味はなかった。
コーヒー好きならとオシャレなだけのソーサ付きの小さなコーヒーカップではなく、戸棚に有ったマグカップにたっぷりとコーヒーを注いだ。
それを彼の前に置くと、新聞を片手に朝のテレビを見ながら全く気にする素振りも見せずにカップを手にして口をつけた。
良かった。
朝から零の様子に満足した私は気を良くして昨日考えていた予定を告げる。
「今日、取りに行きたいものが有るので実家に帰りたいんですけど」
零が視線をこちらに向ける。
いつもの無表情のまま。
あれ?
「あの…だから今日三条に帰って来たいんですが…取りに行きたいものが…」
「好きにしろよ」
「…………はい」
ちょっと思っていた反応と違ってて、気後れしそうになった私は自分のカップを持ってコソコソとキッチンの中へ逃げ込んだ。
暫くして席を立つ気配がした。
キッチンの中に居た私はそれに気づくのが少し遅れて、彼は自分で上着を手に取り部屋を出た。
『失敗!』
慌てた私に気づいたのか立ち止まって振り返り
「俺は縛られるのが嫌いだ」
と言う。
「?」
「やりたいように好きにする。だからお前もそうすれば良い。必要なことはちゃんと言う。お前も言いたいことが有るなら言えば良い」
「…はい」
「だがそれ以外は干渉するな」
「……はい」
「お前も好きに生活すれば良い。出掛けるのも何かをするのも、欲しいものがあるならわざわざ言わなくても好きに買えばいい」
「………はい」
「朝も俺を待たなくて良い。コーヒーが無ければ生活が出来ない訳じゃない」
「…………はい」




