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トマの日記  作者: かとう 花
2/17

トマの日記~ドミニク・その2

 ママのロマンスは期限付きだ。

春に始まれば、その翌年の春か夏で終わりを告げる。

時を告げる鳥の役目は、この僕だ。

僕がママの代わりにデイトの約束場所に一人現れたら終わり。

だいたいの男は一回か二回で気が付くのに、ドミニクは違った。

もう、何回目だったか数えるのも面倒になってきた。

それに、今回はママが飽きるのが早すぎる。こんなに短いのは初めてだ。


ドミニクも戸惑っていただろうけど、一番驚いたのは、この僕だ。


今日は、中国風建物のこじんまりした映画館にやってきた。

細い竹林を少し歩いていくと、中国のライオンの置物が二つ玄関口でぼくらを

迎えてくれた。

石でできてる三段ほどの階段や回りの置石も苔がうっすらとついていて、全体に

しっとりとした印象だ。

玄関の扉も古い木枠で擦りガラスに東洋風な花のモチーフや鳥が描かれている。

木枠の扉のぐるりを中国文字を浮き彫りにした鉄の細長いプレートがはめ込まれてる。

中に入ると絨毯は真っ赤で壁は金色。その金色の壁には孔雀や蝶やカクカクした枝の木に

清楚な感じの花模様が描かれていた。ママの好みだと思った。


「気にいってもらえると思ったのになあ。残念だよ。ママはいつごろ帰るの?」


ママは古美術を商っていて、時々外国にも買付にいく。ドミニクには急な仕事で

海外に出かけたといってあった。


「どうかな。まだ連絡ないんだ。」

「君をほっておいてかい?」

「僕は平気だよ。小さい時からだから。」

「君の世話はだれがしてるの?」

「食事は家政婦のマダム・ロフェリンが用意しておいてくれるし、時々ママの

友達がきてくれるから大丈夫だよ。」

ドミニクは目を丸くして、おどけてみせてくれた。


映画のあと、食事をして帰り際、ドミニクは次はどこに行こうかと僕に聞いてきた。

「どこでもいいけど。多分、ママはまだ戻らないと思うよ。」

ドミニクはまたおどけた顔をしたけど、なんだかいつになくがっかりしてるような

目をしていた。僕は気の毒になって、

「僕でよければ付き合うよ。」

と言ってしまった。

ドミニクは両腕を大袈裟にばたつかせてから、僕にキスをした。

「オッケイ!じゃあ。また連絡するよ。楽しみにしておいで、トマ!」


僕はドミニクのおおらかな所が好きだった。二人で歩いて話している時は

とても幸せな気分になった。でも。

でも。僕はママじゃない。ドミニクといるとママへの想いが痛いくらいに

伝わってくる。ママはどうして、いきなり仕事だなんて嘘までついて出かけて

しまったんだろう。他に好きな人でもできたのか?

でも、複数の彼氏と楽しんでたことだってあったのに。今回のママの行動には

僕も腑に落ちない所があった。


家に戻ると、ヴァンサンが来ていた。

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