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NEW! 8章 なんちゃって診療録  <33-2-2> 私の病院仲間たち― 『ヤワラちゃん』と呼ばれたナースのAさん その2

<33-2-2> 私の病院仲間たち― 『ヤワラちゃん』と呼ばれたナースのAさん その2


 やがてホスピス病棟が開設されると、Aさんはその中心スタッフとして先頭に立って働きました。行動力のある人で、思い立つとすぐ実行するタイプでした。


 その性格を象徴する出来事があります。


 ある肺がんの末期患者Bさんのことです。


 この患者さんは昼間はずっと眠っているように見えるのですが、どうも様子がおかしいのです。食事量は減らないし、体力も極端には落ちていません。


 スタッフでカンファレンスをすると、


「もしかして仮病では……」


 そんな疑いまで出てきました。


 問題は夜でした。夜勤のスタッフは少なく、一人の患者さんをずっと観察する余裕はありません。


 みんなが困っていると、Aさんが静かに言いました。


「私、夜だけ出勤して、この方の部屋に泊まってみます」


 一同は驚きました。


 六十代男性の個室に、女性看護師が一人で泊まるというのです。しかしAさんは平然としていました。


 そしてその夜、本当に患者さんの部屋のソファーに横になったのです。


 夜更け、病棟が静まり返ったころ、案の定、患者さんはむくりと起き上がりました。そして部屋の中を歩き回り、こっそり食事を食べ始めたのです。


 そのときです。


「Bさん、何してるの?」


 ソファーから声がしました。


 患者さんは飛び上がるほど驚き、慌てて布団にもぐりこんだのです。


 こうしてBさんの“名演技”は見事に見破られました。


 それ以来、彼は昼間も起きてホールに出てくるようになり、ほどなく一時帰宅までできるようになりました。


 この話を聞いたとき、私は思わず笑ってしまいましたが、心から感心もしました。


 普通なら思いついても実行できないことです。勇気と情熱がなければ、とてもできることではありません。


 Aさんはさらにカウンセリングにも強い関心を持っていました。休日にはセミナーに出かけて勉強していたのです。


 ある日、彼女は私にこう尋ねました。


「ホスピス病棟で、患者さんのカウンセリングをしてみてもよろしいでしょうか」


 まだ資格も経験もありません。しかし私は、臨床現場こそ最高の学びの場だと考えていましたので、「ぜひやってみなさい」と勧めました。


 他の医師から、「有名なカウンセラーを知っているから頼んでみようか」という申し出もありました。しかし私は、Aさんに任せてみたいと思ったのです。


 それからというもの、彼女はホスピス病棟の患者さんたちと向き合いながら、真剣にカウンセリングを学んでいきました。


 その努力は実を結び、やがて彼女は正式なカウンセラーの資格を取得しました。


 そして現在では、日本のカウンセリング協会の指導教官として、日本のみならず世界各地で講座を担当するまでになっているのです。


 あの小柄な「ヤワラちゃん」が、世界を飛び回るカウンセラーになったのです。


 人生とは実に不思議なものです。


 あのとき病棟の廊下で交わした一言―「ホスピスをやろうか」「やりましょう!」―その瞬間が、彼女の人生の新しい扉を開いたのかもしれません。


 そして私にとっても、忘れることのできない病院仲間の一人になったのです。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│ 《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│ 『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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