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8章 なんちゃって診療録 <33-1-1> 私の病院仲間たち ― 春日局と呼ばれた事務職Tさん その1

<33-1-1> 私の病院仲間たち ― 春日局と呼ばれた事務職Tさん その1


 病院の現場では、医師以外のスタッフを「パラメディカル」と呼ぶことがあります。


 パラ(para)は「そばに」という意味です。つまり医師の“そばにいる人”ということになります。けれど、どうも主従関係の匂いがして、私はあまり好きではありません。


 では「共に働く」という意味で「コメディカル」がいいかといえば、これもどこか説明的で、しっくりきません。


 私はふだん、総称するときには「メディカルスタッフ」という言葉を使います。そして看護師、介護士、レントゲン技師、事務職など、それぞれの専門の名称で呼ぶようにしています。


 医療の現場は、多くの専門家がそれぞれの持ち場で力を出し合って、はじめて成り立つからです。


 長い医師生活の中で、私は実に多くのメディカルスタッフと出会ってきました。その中でも、どうしても忘れられない人物が何人かいます。


 今回はその一人、事務職のTさんのことを書いてみます。


 私がTさんと出会ったのは、私が四十代のころ、ある病院に院長として赴任したときでした。


 彼女は私より少し年上で、医事課に所属し、主に保険請求の仕事を担当していました。


 ところが彼女、もともとは医療とはまったく縁のない人でした。以前は市会議員の秘書をしていたのです。


 縁あって病院事務として就職したのですが、運の悪いことに、その病院はすでに経営がかなり危うい状態にありました。


 彼女が就職して間もなく、ついに病院は閉院に追い込まれてしまいました。


 しかもそのとき、院長と事務長が姿を消してしまったのです。いわば「夜逃げ」のようなものでした。


 病院に入ったばかりで右も左も分からない彼女が、いきなりこの事態です。普通なら呆然としてしまうところでしょう。


 ところがTさんは違いました。


 病院が閉院すれば、入院患者さんは転院させなければなりません。外来患者さんには紹介状を書き、ほかの病院へお願いしなければなりません。


 仕事は山ほどあります。しかも指揮をとる人がいないのです。


 そんな状況の中で、彼女は入職したばかりの身でありながら、先頭に立って仕事を整理し、患者さんの対応に奔走しました。


 さらに驚くのは、その後です。


 患者さんの整理が一段落すると、今度は「病院を再開できないものか」と動き始めたのです。


 県の衛生課に出向き、事情を説明し、再開の可能性を探る。さらに元の患者さんたちに呼びかけて署名を集め、嘆願書を作って提出する。


 もちろん、閉院の原因は経済問題です。そう簡単に再開できるわけではありません。


 それでも粘り強く動いた結果、病院に資金を貸していた人物が経営を引き継ぐことになり、さらにその運営を引き受ける医療法人も見つかったのです。


 こうして1年後、その病院は再び開院することになりました。


 そのとき院長として赴任したのが、何を隠そうこの私です。


 病院に来てしばらくすると、職員たちがTさんを「春日局かすがのつぼね」と呼んでいることに気づきました。最初は意味がよく分かりませんでした。


 しかし、しばらく働くうちに「なるほど」と思うようになりました。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│ 《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│ 『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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