5話 旅と月読のやさしさ
西暦1875年(明治8年)、汽船が横浜の港へ近づくにつれ、甲板から見える景色は目まぐるしく変わっていった。
沖には大小の船が浮かび、岸には荷を運ぶ人々が絶え間なく行き交っている。
異国の言葉が飛び交う港町を想像していたイザベラは、洋装の商人のすぐ脇を着物姿の男たちが通り過ぎていく光景に、思わず手すりから身を乗り出した。
「久遠、あの人たちが着ている服は何というの?」
「着物だよ。あの短い上着は半纏かな。仕事をするときに着るものなんだ」
「それなら、こちらの帽子をかぶった人は?」
「役人さんだねぇ。イザベラ、そんなに身を乗り出すと危ないよ」
久遠に肩を引かれ、イザベラは照れ笑いした。長い船旅の終わりが近づいたというのに、疲れよりも目に映るものへの関心が勝っていた。
上陸後、久遠は慣れた足取りで手続きを済ませ、戻ってくると書類を差し出した。
イザベラ自身の旅券と、日本国内を移動するための外国人旅行免状である。日本では外国人が居留地を離れて自由に旅行できるわけではなく、今回のような遠方への旅には、行程に応じた許可が必要なのだという。
「こんなものまで、いつ用意したの?」
「船に乗る前から話を進めていたんだ。少し面倒だったけど、必要な手続きは済んでいるよ」
「あなた、二年間うちで畑を耕していた農夫でしょう? それなのに、こんな交渉までできるのね」
「農夫だから手続きができないわけじゃないでしょー」
「それはそうだけれど、何だか納得がいかないわ」
不満そうに言いながらも、イザベラは書類を大切にしまった。港から続く道には西洋風の商館と日本家屋が並び、店先には扇子や陶器、色鮮やかな布が見える。
久遠が両替をしている間、彼女は見慣れない貨幣を覗き込み、銭の数え方を教わった。道端で人力車が通り過ぎれば振り返り、軒先の看板を見つければ文字を尋ねる。
久遠は一つずつ答えたが、ついには「今日だけで覚えきれるかなぁ」と笑い出した。
夕方、港近くの宿へ向かう途中で、イザベラは露店の前に足を止めた。店主が器へ注いでいるのは、見慣れた紅茶とは違う淡い色の飲み物だった。
久遠が緑茶だと教えてくれると、彼女は一杯試してみたいと言い出した。
香りを確かめ、ゆっくり口に含む。砂糖も乳も入っていない茶を少し不思議に感じたが、後味は思ったより爽やかだった。
「次は何を見つけるか楽しみだわ」
と言うイザベラに、久遠は明日の山道では店が少なくなるよ、と笑った。
横浜で一泊した翌日、二人は箱根を目指した。
馬車で進めるところは馬車を使い、山道では徒歩や駕籠に頼る。
海辺の町を過ぎ、道が山へ入ると、景色はいっそう深い緑に包まれた。杉の幹が空へ真っ直ぐ伸び、谷底からは水の流れる音が聞こえる。
久遠は宿場や街道の話をしながら、時折立ち止まって道端の草木を眺めた。
「あなた、日本では何でも知っているみたいね。私の農場では、あれほどいろいろ尋ねてきたのに」
「土地が違えば、分からないことも違うからねぇ。ここでは私が案内役ってわけ」
「それなら、遠慮なく質問させてもらうわ」
「お手柔らかに頼むよー」
箱根の宿でイザベラがまず驚いたのは、部屋へ入る前に靴を脱ぐことだった。
案内された部屋には柔らかな草の香りが漂い、床一面に畳が敷かれている。
久遠が当然のように座るので真似をしてみたが、背筋を伸ばしていられたのはほんのしばらくで、やがて足先の感覚がなくなってしまった。
「久遠……立ちたいのに、足が言うことを聞かないわ」
「えっ、ずっと正座していたの? 足を崩していいんだよ」
「そういう大事なことは、早く教えてちょうだい」
「ごめんごめん。あまり綺麗に座っていたから、慣れているのかと思ったんだ」
久遠に手を貸してもらいながら足を伸ばすと、今度はしびれた足がくすぐったく、二人で笑ってしまった。
障子を開けると庭には苔むした石が置かれ、竹筒から水が落ちる音がしていた。
ガラス窓ではなく紙を張った建具が光を柔らかく通すことにも、イザベラは感心した。
「雨の日は破れないの?」
尋ねると、久遠が庇の役割を説明してくれる。彼女は庭の石や軒先の形を確かめ、家の造りが違う理由を考えてみるのも旅の楽しみだと気づいた。
さらに久遠が勧めたのは温泉だった。宿の者に相談して落ち着いて入れるようにしてもらったものの、湯船を見たイザベラはその熱さに尻込みした。そっと足を入れた途端、思わず声が出る。
「熱い! これでは煮られてしまうわ」
「熱いのが苦手なら、無理しなくていいよ。少し冷ましてもらおうか」
「でも、あなたが楽しみにしていたものでしょう?」
「私は何度も入ったことがあるから。イザベラが気持ちよく入れた方がいいよ」
湯加減を調整してもらい、改めて身体を沈めると、肩まで温かさが広がった。山道でこわばっていた身体がほぐれていくのを感じ、先ほど騒いだのが少し恥ずかしくなる。
湯から上がる頃には、もう一度入りたいと思うほど気に入っていた。
夕食にも新しい発見が待っていた。米の飯に汁物、魚と煮物が並び、久遠は器用に箸で魚の身を取っている。イザベラも挑戦したが、せっかく挟んだ一切れを器へ落としてしまった。
「難しいわね。あなたはこれで何でも食べられるの?」
「大抵はね。持ち方を少し変えてみようか」
「いいえ、今の失敗で少しこつが分かった気がするの。もう一度やらせて」
ようやく魚の身を口に運べた時、彼女は思わず誇らしげに笑った。久遠は拍手でもしそうな顔をしていたが、さすがにそれはやめておいたらしい。
味噌の香りや煮物の甘辛さについて話すうち、イザベラは作り方まで尋ね始めた。
翌朝、宿を発つ支度をしていると、彼女の方から「出発する前に、もう一度温泉に入りたいのだけれど」と切り出した。
久遠は少し予定を延ばして付き合い、帰り際には宿の主人から湯治の話も聞かせてもらった。
「次に日本へ来る時も、箱根に寄りたいわ」
「もう次の旅行の相談?」
「いけないかしら?」
「ううん。今度はもっとゆっくり泊まろうね」
山を越えてからも、旅は急がなかった。街道沿いの茶屋では餅や団子を味わい、宿場では軒を連ねる商店を覗く。
ある店でイザベラが小さな布袋を買うと、久遠はと尋ねた。
「何を入れるの?」
「買ったばかりの日本の硬貨よ。混ざると分からなくなるもの」
イザベラは答え、自分の買い物を自分で済ませられるようになりたいからと、釣り銭の数え方をもう一度教えてもらった。
別の茶屋では、久遠が店の者に礼を述べるのを聞き、イザベラも真似をした。
「アリガトウ……これで合っている?」
「うん、ちゃんと伝わるよ」
店の女性が笑顔で頭を下げてくれたので、イザベラもつられて頭を下げた。言葉はまだほとんど分からない。それでも、久遠を介さず誰かと気持ちが通じたことが嬉しかった。
名古屋では熱田神宮へ立ち寄った。
町の賑わいを離れると大きな木々の影が足元に広がり、社殿へ続く道には静かな空気が満ちていた。
久遠はここが草薙剣にゆかりのある神社だと教え、神話に登場する八岐大蛇の話を聞かせてくれた。
「何度聞いても驚くわ。そんな大きな蛇を退治した神様がいるなんて」
「まあ、無茶ばかりする神様だったからねぇ」
「退治した人を褒めるのではなくて?」
「褒めてはいるよ。ただ、身近にいたら大変だろうなぁって」
「まるでお知り合いみたいな言い方ね」
「神話の中の人って、妙に人間くさいところがあるでしょ」
言われてみれば確かに、久遠が話す日本の神々は、立派な行いばかりをするわけではないらしい。
イザベラは興味を惹かれたが、だからといって信仰を変える気持ちはなかった。
久遠もそれを承知しているようで、参拝の仕方を押しつけることはしない。
彼が静かに頭を下げるのを、イザベラは少し離れた場所から見守った。
神社の歴史や人々の祈りについて知ることと、自分が祈る相手を選ぶことは、彼女の中では別のことだった。
「信じる神様が違っても、一緒に歩くのは構わないのね」
「もちろんだよ。イザベラはイザベラのままでいいんだから」
あまりに当然のような返事だったので、イザベラはかえって微笑んだ。久遠は神社の参道を出ると、もう次の茶屋の看板を眺めていた。
京都に着く頃には、旅先の宿で過ごすことにもすっかり慣れていた。久遠が数日の滞在を提案すると、イザベラは喜んで賛成し、町を歩くたびに立ち寄りたい場所を見つけた。
寺院の庭で石と砂だけの景色を眺め、呉服屋では色鮮やかな反物に触れ、職人が細かな細工を施す様子を飽きずに見入る。
日本の衣装について尋ねた際、久遠が着付けまでできると聞いた時には、さすがに目を丸くした。
「それなら、あなたに着物を選んでもらおうかしら」
「いいけど、荷物が増えても知らないよー」
「まあ。自分だって茶屋の度に何か買っているくせに」
「食べ物はその場でなくなるから大丈夫なんだよ」
「都合のいい理屈ね」
結局、イザベラは持ち帰りやすい小さな織物を一枚選んだ。帰国したら、農場を預かってくれているクリスの家にも何か珍しい土産を持っていこうと考えていた。
庭園をもう一度訪ねた日には、手入れをしていた者が落ち葉を集める様子をしばらく眺めた。
久遠が訳してくれた話によれば、庭は一度造って終わりではなく、季節ごとに木の枝を整え、水の流れを確かめ、少しずつ手を入れ続けるものだという。
「それなら来年は違う景色になるのね」
イザベラは感心した。旅先で出会う人々が、自分の仕事をそれぞれ大切にしていることも彼女には興味深かった。
その夜、宿で荷物を整理していた彼女は、書類の間から旅行免状を取り出した。
横浜から箱根を越え、名古屋、京都へ。久遠は行く先々で何の支障もなく宿や移動の手配を済ませている。
外国人の自分には困難なことを、彼は当たり前のように行っていた。
そもそも、久遠はどうして自分の農場を知っていたのだろう。
イザベラが思い浮かべたのは、約五十年前に一度だけ会った東洋人の男だった。
あれは結婚して間もない頃のことだった。夫との生活を始めたばかりの家に、月読と名乗る男が訪ねてきた。
彼は遠い祖先の血縁者だと言い、イザベラが一族の性質を受け継いでいること、不老長寿や妖術に関わる秘密を外へ漏らしてはならないことを、落ち着いた口調で話した。
「能力が現れた者は、一族と連絡を保っていただきます。使い方を誤れば、本人だけでなく周囲も危険にさらすことになりますから」
「でも、私はそんな力を使ったこともありません。夫と暮らしていくだけではいけないのでしょうか」
「その生活を否定するつもりはありません。ただ、あなたが普通の人間とは異なる時間を生きるかもしれないことは、知っておいてほしいのです」
「それなら、私がどう生きるかは私に選ばせてください。一族の都合で、夫との暮らしを変えるつもりはありません」
月読はしばらくイザベラを見つめていた。怒るでも、言い聞かせるでもなく、やがて静かに頷いた。
「分かりました。ただし、秘密を守るという約束だけは忘れないでください」
別れ際、月読は彼女を説き伏せようとはしなかった。
旅先で困ることがあれば連絡できるよう、伝言の方法だけを告げて帰っていった。その時のイザベラには、最後まで一族とのつながりを残そうとする行為にさえ警戒心があった。
彼が去った後も、イザベラは落ち着かなかった。見ず知らずの者たちに人生を見張られているような気がして、夫と相談した末、南部への移住を決めた。
新しい住まいの場所は月読に知らせなかったし、一族との連絡も絶った。自分は彼から逃げたのだと、長い間そう思ってきた。
けれど、五十年もの間、一度も月読に呼び戻されることはなかった。
今になって考えると、不思議だった。世界中の子孫を把握しようとするほどの男が、移住先を探し出せなかったのだろうか。
まして、久遠は二年前、彼女の名前を知ったうえで農場を訪ねてきた。あの二人には何かつながりがあるのではないか。
翌朝、京都の町がまだ静かなうちに、イザベラは久遠へ声をかけた。彼は旅程を書き留めた紙を広げ、次の宿をどうするか考えていた。
「久遠、月読という人をご存じ?」
久遠の指が紙の上で止まった。顔を上げた彼は、驚いたようにイザベラを見つめ、それから小さく頷く。
「うん。知っているよ。イザベラも会ったことがあるんだね」
「ええ。結婚したばかりの頃よ。あの人は、一族のことや守るべき掟を教えに来たの」
イザベラは当時のやり取りと、その後に連絡を絶ったことを話した。久遠は口を挟まず聞いていたが、彼女が「怖かったのよ」と言ったところで、ほんの少し眉を下げた。
「そうだったんだね」
「月読は、一族のためなら私の暮らしにまで口を出す人だと思っていたわ。でも、実際には一度も私を連れ戻そうとしなかったの」
「……うん」
「ねえ、あの人は本当に私の居場所を知らなかったのかしら」
久遠はすぐに答えず、開いていた紙を丁寧に畳んだ。
「月読はね、秘密を守ることには厳しい人だよ。でも、みんなが同じ生き方をしなきゃいけないとは思っていないはずだよ」
「それなら、私が選んだ暮らしを認めてくれていたのかしら」
「イザベラが約束を守って暮らしていたなら、無理に連れ戻す理由もなかったんじゃないかな」
あの時、月読は秘密を守れと言ったが、夫と別れろとは言わなかった。
普通の人間とは異なる時を生きることになるかもしれないと忠告しながらも、彼女の選択を聞き入れて立ち去ったのだ。
厳しい表情ばかり覚えていたが、それだけがあの人のすべてではなかったのだろう。
「私は、あの人から上手く逃げたつもりだったの。けれど、月読の方が私をそっとしておいてくれたのかもしれないわね」
「そうかもしれないねぇ」
「あなたが私を探して来てくれたのも、月読と関係がある?」
今度こそ何か聞けるかと思ったが、久遠は困ったように笑うだけだった。
「んー。それはどうだろうねぇ」
「また、はぐらかすのね」
「私がイザベラと一緒に旅をしたかったのは本当だよ。それじゃ駄目かな?」
「……ふふ。そう言われてしまったら、何も言えないわ」
久遠が月読の何を知っているのか、確かなことは分からなかった。
それでも、当時の自分の決意が尊重されていたのだと考えられるようになっただけで、月読の記憶は少し違ったものになった。
そして、もし月読が今も自分の消息を知っていて、そのうえで久遠の訪問に関わっていたのならどうだろう。
自分の生き方を変えるよう命じることなく、必要な時にだけ誰かを寄こしてくれたことになる。厳しい言葉よりもずっと分かりにくい、それが月読なりのやさしさだったのかもしれない。
イザベラは書類を鞄へ戻し、明日の移動に必要なものを揃え始めた。
京都を発った二人は大阪へ向かい、そこから神戸までは鉄道を利用した。
車窓に流れる家並みや田畑を眺めながら、イザベラはこれから日本にも線路が増えていくのだろうと話した。
「次に来た時はもっと便利になっているかもしれないね」
久遠は応じ、彼女はその未来を確かめてみたいと思った。
神戸では船を乗り継ぐために港でしばらく過ごした。
久遠は船会社や港の者と話し、瀬戸内海を西へ進んで下関を経由し、日本海側へ向かう行程を整えた。
船室に荷物を運び込んだ後、イザベラは甲板に出て、岸壁で動く人々を眺めた。大西洋でも太平洋でもない、島々に囲まれた海の景色はまた違って見えた。
「あなたの国は、海を進んでいても次々に陸が見えるのね」
「瀬戸内海には島が多いからねぇ。見ていて飽きないでしょ」
「ええ。それに、港ごとに町の様子が違うもの」
イザベラは次第に、久遠に案内してもらうだけではなく、自分から旅先の話題を持ち出すようになっていた。
どんな食べ物があるのか、どの土地では何が作られるのか、次の港ではどんな言葉が聞けるのか。
久遠は時に詳しく、時に「それは私も知らないなぁ」と答え、そのたびに二人で確かめることにした。
下関を過ぎて日本海側へ向かうと、風と波の様子が変わった。イザベラは船縁で髪を押さえながら海を眺めていたが、久遠が外套を持ってきたので素直に羽織った。
「久遠も寒いでしょう。もう中に戻りましょうか」
「イザベラが景色を見たいなら、もう少しいいよ」
「いいえ。海は逃げないもの。また明日、一緒に見ればいいわ」
久遠は「あはは、そうだね」と笑い、二人は船室へ戻った。
数日後、山陰の港に着くと、岸壁では久遠を待っていたという男が迎えてくれた。
男は久遠を見るなり深く頭を下げ、彼の荷物を持とうとする。
久遠は気軽に礼を言い、自分の荷物は自分で持つからと笑って断った。
そのやり取りに、イザベラは少し首を傾げた。農場に住み込んでいた時の彼を知っているだけに、そんなに丁寧に扱われる理由が分からなかったのである。
港から先は迎えの者に案内されて進んだ。道すがら久遠は、出雲では旧暦の十月を神在月と呼ぶのだと教えてくれた。
「日本のほかの土地では神無月ということが多いんだけど、ここには神様が集まると言い伝えられているんだよ」
「神様たちが集まるの? それは賑やかそうね」
「そうだねぇ。実際、毎年この時期は賑やかになるよ」
「では、私たちも神様に会いに来たのかしら?」
「……あはは。そういうことになるのかなぁ」
「もう。そんな冗談ばかり言って」
夕暮れの道の向こうに、灯りのともった建物が見え始めた。久遠は歩調を緩め、イザベラが並ぶのを待った。
「もうすぐだよ。イザベラに会ってほしい人たちがいるんだ」
「あなたの知り合い?」
「うん。私の大切な家族だよ」
「まあ……それなら、きちんとご挨拶しなくてはいけないわね。覚えたばかりの日本語でも大丈夫かしら?」
「私も隣にいるから、心配しなくていいよ」
久遠の顔には、横浜へ着いた時と変わらない穏やかな笑みがあった。
イザベラはその隣で、胸元にしまった小さな布袋を確かめる。中には旅先で受け取った硬貨と、店の人に教わった短い言葉を書きつけた紙が入っていた。
誰かに挨拶するたびに取り出すつもりはなかったが、お守りのように持っていたかったのだ。
やがて、迎えの男が建物の入り口を示した。久遠が先に進み、イザベラを振り返って手招きする。彼女は慣れない日本語で小さく「アリガトウ」と口にしてから、久遠の後に続いた。
その先で誰と出会うことになるのか、まだ何も知らなかった。




