表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/40

第24話 怪しい影…?

 その日の放課後。

 岸本和樹(きしもと/かずき)は玲奈と共に帰路についていた。


 今日あった体育の件で、稲葉玲奈(いなば/れな)はクラスの中でも注目の的になっていたのだ。

 そういったこともあってか、彼女は嬉しそうだった。


「和樹君、今日はどこかに寄って行かない?」


 テンション高めな彼女。


「調子良さそうだね」

「だって、今日の体育で新記録を出せたし。これで夏休みは安泰だと思うわ。でも、来週からは他の二期試験もあるから、油断はできないんだけどね。テスト週間中だと遊べなくなるわけだし、今週中に遊んでおきたいじゃない?」

「確かにね、テストは真剣にやらないといけないしね。遊べる時に遊んでおかないと。じゃあ、どうしようかな」


 和樹は通学路を歩いている最中、考え込んでいた。


 来週から本格的な試験が行われるのだ。

 今日実行された体育の試験は前倒しで行う事になっているらしく、今週中の金曜日にも後半となる体育の試験が用意されているのだ。


 今週中は特に大きな行事はなく、比較的まったり出来る時であり、玲奈の意見同様遊んでおいた方がいいと思った。


 高校生の放課後と言えば、ファミレスに立ち寄るのが定番なのだと、和樹は歩きながら、その結論に辿り着いたのだ。


「ちょっと待って」


 和樹は彼女と共に歩きながら、制服のポケットからスマホを取り出して検索をかける。


「この近くにファミレスがあるみたいだし。そこに寄ってく?」

「いいね。じゃあ、そこに行こ」


 玲奈も乗り気なようで、和樹の腕に抱きついてきたのだ。


 和樹は彼女の胸の膨らみを感じながら、目的地へと向かって歩き出した時、誰かの気配を背後から感じたような気がした。

 けれど、周りを見渡すが、誰の姿もなかったのだ。




 学校の通りから少し離れた場所に、そのファミレスがある。

 学校からは徒歩で十五分くらいであり、比較近場だ。


 もしかしたら、バッタリと同じ学校の生徒に出くわしてしまうかもしれないが、学年が異なれば多分問題はないはずだ。


 クラスメイトだったとしても、友達として関わっているだけと伝えればいいだけ。


 そう考えながら、和樹は玲奈のためにファミレスの扉を開けてあげたのだ。


「いらっしゃいませー」


 二人が店内に入った瞬間、店の奥から女性のスタッフが出てくる。


「お客様は二名でしょうか?」

「はい」


 和樹は頷くように言った。


「では、こちらにご案内致しますね」


 店員から案内された場所は、近く窓のない店内の中心らへんの席だった。

 二人は向き合うようにソファに座る。


「こちらがメニュー表になります。お決まりになりましたら、そちらのボタンを押して頂ければよろしいので」


 簡易的な説明をし終わった後、笑顔を見せて店員は立ち去って行く。


「和樹君は何にする? 私はね――」


 玲奈はメニュー表を前に、楽し気な口調で注文したい品を選んでいた。

 和樹も一緒になって悩んでいたのだが、その時にも誰かの視線を感じたのだ。


 ……なんでもないか。


 和樹は首を横に振る。


「どうかしたの? さっきから悩み事?」

「そ、そうだね。そんな感じ」

「何かあるなら、私が聞いてあげよっか?」

「いいよ。大したことじゃないし」

「そう? なら、いいんだけどね」


 玲奈はあっさりとした口調で、愛嬌のある笑みを見せてくれた。


「それより、この料理美味しそうじゃない?」


 玲奈はメニュー表にあるパフェを指さしていた。

 かなりの特大的な見た目をしており、食べきれるかどうか怪しい。


「私はこれを食べたいなぁって。でも、全部食べきれないと思うから、和樹君も一緒にどうかな?」

「俺も? まあ、今日は運動とか結構やったから、食べれそうかもな。じゃ、それを注文していいよ」

「やった。和樹君は?」

「俺は単品で何かを頼もうかな、えっと……ね」


 和樹はメニュー表をザッと眺め、丁度よい量の品を見つけたのだ。


「俺は、この大盛のポテトフライでいいかな」


 和樹は、メニュー表に掲載された写真である、その料理の品を指さす。


「それでいい?」

「まあ、そうだね。玲奈さんは? サラダ&スープバーもあるけど、これは頼む? 一人六〇〇円らしいけど」

「そうね。一応頼もうかな。おかわりも自由なんでしょ?」

「そうそう」


 和樹はテーブルのボタンを押し、先ほどの店員を呼び出して注文を終えるのだった。




「これって、美味しいね。和樹君も食べてみてよ」


 すでにテーブル上には、注文した品々が出揃っていた。

 その他に、サラダ&スープバーも個別で取りに行き、食事できる環境を整え終えていたのだ。


 そのテーブルを挟み。玲奈は、先端が小さく取っ手のところが細長いスプーンで、パフェの一部を掬い、和樹の口元へと近づけていた。


「食べていいの?」

「いいよ」


 玲奈はニコッリと笑みを見せている。


 和樹はそのスプーンに口を近づけ、口の中に入れた。


 クリームとチョコ、それからクッキーの味も入り混じり、和樹の口内は最高潮に仕上がっていたのだ。

 クッキーを嚙み砕いて食べているだけで、その美味しさがさらに口内に広がって行くようだった。


「私も食べてみよ♡」


 和樹がパフェの味を堪能している時には、玲奈がパフェの一部を、そのスプーンで掬い、口へと頬張っていたのだ。


「和樹君と同じスプーンで食べちゃったけど、いいよね♡」


 玲奈は頬を紅潮させていた。


 和樹も、そんな彼女の表情を見て、どぎまぎしてしまう。


 真正面から、そんな表情で言われてしまうと逆に意識してしまい、玲奈と視線を合わせられなくなっていた。




「美味しかったね」

「そうだね。また時間があったら、また来ようね!」


 会計を済ませ、二人はファミレスの外にいた。


 二人で共に楽しく道を歩き始めると、何か違和を感じたのだ。


 和樹はやはり、その違和感は確実に近くに存在すると思い、パッと振り返る。

 すると、黒い服を着て、黒いマスクをした謎の人物が佇んでいたのだ。


 しかも、サングラスまでつけていた事で誰なのか素性は不明である。


 現状わかる情報としては、その人物が黒髪のショートヘアであること。

 だが、男性でも女性でも黒髪のショートヘアはいる。


 性別の特定までは出来なかったのだ。


「というか、さっきから後をつけていたよね」

「……」


 和樹の問いかけに、その人物は無言で押し切ろうとしているようで、進展ある返答は貰えなかった。


「もしかして、さっきから和樹君が気にしていたことって、この事なの?」

「まあ、そういうこと。学校の通学路を歩いている最中から、何かヘンだと思ってたんだよね。というか、俺らに何か用なの?」

「……」


 その人物は無言のまま殴りかかって来た。

 しかし、その攻撃対象として選ばれたのは、和樹ではなく、玲奈の方だったのだ。


 な、なんで⁉


 和樹は一瞬、意味が分からなかったのだが、咄嗟に体が動く。

 この頃、運動していた事も相まって、身体能力が少しだけ高まっているようだった。


 和樹は彼女を守るように盾になる。

 体の動きが良かったとしても、攻撃できる技は持ち合わせていないのだ。


「クソッ……ッ」


 その人物の声質的に、男性らしい。

 言葉を漏らした後、素性のバレを回避するために再び無言になる。


 これ以上は難しいと判断したのか、その怪しい動きを見せる男性は、来た道を辿るように立ち去って行ったのだ。


「な、なんだったの?」

「さあ、わからない」


 二人はその道で呆然としていた。


「それより、怪我はしてない?」

「……大丈夫そうだね。どこも痛くないし……」


 和樹は自身の両腕を確認していた。


「え? でも、ちょっと左腕のところが赤くなってない?」

「いや、大丈夫さ」

「ちょっと心配だし、私の家に来る?」


 玲奈から強めの口調で説得され、ここは彼女の意見に従おうと思い、和樹は稲葉家へ向かう事にしたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ