第23話 玲奈の揺れ具合が凄すぎる⁉
翌日の火曜日。
岸本和樹は学校指定の体操服を着用し、校舎の体育館にいた。
クラスメイトも体育館にはおり、皆、体操服に着替えてその場に集まっていたのだ。
周りからはクラスメイトらの話し声が聞こえる。
そんな中、体育館にチャイムが鳴り響く。
「じゃ、チャイムも鳴ったし、そろそろ授業でも始めるか」
担当の体育教師は体育館の壇上前に佇んでおり、腕時計を確認しながら辺りを見渡していた。
和樹を含め、他の人もいつも通りに男女同士に別れて整列していたのだ。
「今日はいつもと違い、テストみたいなことをやるつもりだ。今回の体育は紙の方ではなく実技をメインにする」
体育教師の如何わしい発言により、クラスメイトらの間でざわざわと騒がしくなる。
「あッ、ちょっと言い間違えたな。実技と言っても、今回は保健は無しだから。ただの身体力検査的な感じだ」
体育教師は変な意図で口にしたわけではないものの、周りの様子を見て冷や汗をかきながら言い直していた。
ちなみに、和樹は昨日、玲奈と一緒にキスをしたのである。
その時の事が脳内をよぎり、和樹は気恥ずかしくなっていた。
「まあ、一旦、気分を切り替えてな。一応、これは高校二年の二期試験に直結するから真剣にやるように」
体育館の壇上前に立つ体育教師の発言により、冗談染みて笑っていた人らは比較的真面目な顔つきになる。
夏休み直前のテストならば、真剣にやる必要性があった。
二期試験の結果によって、夏休みの補習に出席するかどうかが決してしまうのだ。
皆、真剣な顔つきになり、陽キャらもその場で簡単なストレッチをし始めていたのである。
「じゃ、先生、早速やりましょう! 俺、今日は自信があるんで」
「そうか。でも、今週末の金曜日の体育でも二期試験の一環として実技をして貰うから。緊張しない程度にな」
「はいッ!」
陽キャらは元気よく返答していた。
「まずはな……そうだな。今日は体育館内でやるから。最初は腹筋検査からやるか! では、二人一組でペアを作ってくれ」
体育の先生の発言で、和樹の周りにいる人らは、すぐに仲間同士でペアを作っていたのだ。
「ねえ、和樹君。今日も一緒にペアになろ」
「いいの?」
「私は別に気にしないよ」
稲葉玲奈は優しかった。
親切にペアを組んでくれたのである。
「ペアを組んだようだな。では、前半と後半で分けてやるから。後半の人は前半の人の腕立て伏せの回数を記録しておいてくれ」
皆、体育教師からすでに記録用紙を貰っていた。
「では、最初は三分に設定するから。その時間で出来た回数を書くようにな。では、皆、準備は出来たようだな」
体育教師は大きなタイムウォッチである、競技用のデジタイマーに時間を表示させたのち、開始のボタンを押す。
周りには開始のブザーが鳴り響いていた。
「頑張ってね、和樹君」
「うん」
和樹は彼女から足下を抑えられながら腹筋を行う。
何度も上体を起こしたりする度に、玲奈の顔との距離が近くなる。
直接的に見てしまうと、彼女の唇を意識してしまうため、和樹は視線を若干逸らしながら腹筋を何度も行っていた。
この前の休日に、妹の咲の友達である村瀬真帆の引っ越しを手伝っていた事も相まって、そこまで疲れを感じなかったのだ。
ある意味、あの経験が助かっているのかもしれない。
和樹の調子は乗って来ていて、何度も腹筋を繰り返したのだ。
三分が経過した瞬間――、デジタイマーのブザーが鳴り響く。
「凄いよ、和樹君。一〇〇回も超えたよ!」
「ほんと」
「うん、正確には一〇七回だね」
「大体、二秒に一回程度か」
周りの話し声を耳にすると、陽キャグループの中では普通に二〇〇回以上も出来た人がいるらしく、クラスメイトからも、先生からも評価されていたのだ。
「凄いね。でも、和樹君も頑張っていたと思うし」
「ありがと。今度は玲奈さんの番だね」
後半パートになり、立場を交換する。
和樹が彼女の太もも付近を抑え、彼女の回数を数える事となったのだ。
ブザーの開始合図と共に、彼女は腹筋を始めた。
ん⁉
玲奈が上体を起こしたり、体育館の床に仰向けになった瞬間に、彼女のおっぱいも上下に揺れている。
体操着な為に、その揺れ具合が凄まじかったのだ。
こ、これは……なんていうか。
言葉で言い表せない状況である。
今まさに、和樹の語彙力が消滅していた瞬間だ。
目の保養にはなるが、刺激が強すぎると思う。
和樹は視線を逸らしながらも、彼女が上体を起こしたのを横目で見ながら、どぎまぎして数えていたのだ。
回数が九〇回を超えたところで、丁度ブザーが鳴る。
「これまで! ちゃんとペアの回数を記録しておくようにな」
体育教師は周りを確認しながら大声で伝えていた。
「ねえ、和樹君。私の回数はどうだった?」
「えっと……九〇回まで数えて、それから上体が上がってからブザーが鳴ったから。九一回かな」
「九一ね。わかったわ」
玲奈は笑顔でありがとうと言っていた。
近距離ではにかまれ、その上、Kカップの爆乳の揺れ具合を直視できた事に、和樹は体育の試験に感謝していたのだった。
それからも身体力検査は続き、今日最後の試験となるシャトルランへと移り変わっていたのだ。
「では、残りの体育時間は三五分か」
体育教師は腕につけている時計を確認し、考え込むような顔つきを見せていた。
「我ながら丁度いい時間配分だったな。今回は時間内でどれだけ走れたかを判断するから。タイマーが鳴ったら、まだ走れる状況でも止まるように」
体育教師は自画自賛的な発言を呟き、デジタイマーの隣に立ったまま、クラスメイトらに伝えていた。
「人も多いし、また前半後半で別れるようにな。時間は一五分ってところだな」
和樹は前半パートのクラスメイトらと共にスタート地点に立ち、走る態勢を見せ、ブザーが鳴り響いたと同時に動き出す。
シャトルランは最初の走り込みはほぼ歩くだけなのだが、回数を重ねるごとに厳しくなっていく。
最大で測定できる回数は、往復込みで二四七回らしい。
「はあ、はあぁ……大変だったぁ」
「頑張ったじゃん」
「そ、そうかな。五〇回が最大だったけど」
「自己ベスト的どうなの?」
「いつもよりは結構できた感じ」
「なら、良かったと思うよ。次は私ね。行ってくるから」
和樹と入れ替わる形で、玲奈がスタート地点に立つ。
和樹は他の走る人の邪魔にならないように、体育館の壁に背をつけ、彼女のシャトルランを拝見する。
開始から一二分を過ぎた辺り。
最後まで残っているのは、陽キャ女子と委員長である西園寺智絵理。それから玲奈の計三人だった。
陽キャ女子は普段からバスケをやっている事で身体能力が高いのはわかる。
でも、委員長の智絵理の運動能力には驚かされていた。
玲奈は最後の力を振り絞り走っているのだが、周りの男子生徒は爆乳の揺れ具合にばかりに視線が向かっていたのだ。
和樹も同様に、そればかりに注目してしまう。
刹那、その途中で陽キャ女子が脱落。
その次に、智絵理が脱落する事となったのだ。
意外にも最後まで残ったのは玲奈だった。
玲奈も疲れてきた為か、足が遅くなり始めた頃にデジタイマーが鳴り、そのシャトルランは終わりを告げる。
走り切った玲奈の周りには数人のクラスメイトが集まっていた。他の人から凄いと賞賛されており、皆の注目の的になっていたのだ。
玲奈は走る事だけは得意だからと言って、普段の友達とも楽しく会話していたのである。
和樹は一人で体育館の壁に背を付けたまま、玲奈の走った回数を記録用紙に記入するのだった。




