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第15話 彼女の服装はエッチすぎる

「次はどこに行こっかなぁ」


 気分がのっている稲葉玲奈(いなば/れな)は和樹と手を繋いでいた。

 玲奈はカフェ店で食事した事もあって絶好調なようだ。

 お腹も満たされて、幸せそうな顔つきだった。


 お昼過ぎの午後一時。

 先ほどのカフェを後に、二人は街中を歩いていた。


 岸本和樹(きしもと/かずき)は彼女から勧められたグラタンを食べ、調子よくなっていたのである。

 今日、これからは充実した日になりそうな予感しかしなかった。


 女の子と共に休日を過ごした経験はあまりなく、今、彼女と手を繋いでいるだけでも緊張感が込みあがってくるのだ。


 普段、学校では平凡な生活をしている為か、その緊張感も相まって最高に気分が良かった。


 そんな中、さっきの事がフラッシュバッグする。


 過去を振り返れば、梨花と過ごしていた時期もあり、アレは黒歴史だと和樹は思う。

 梨花と付き合っていた事は、あまり思い出したくない記憶であり、先ほどのカフェ店内での出来事を何とか忘れようと必死になり、和樹は首を横に振っていた。


「なにか考えごと?」


 右隣を歩いている玲奈が、和樹の顔をちょっとだけ覗き込んでくる仕草を見せていたのだ。


「なんでもないよ。気にしないで」


 玲奈に心配をかけないように、和樹はそれ以上多くを語らなかった。




「私、このお店に入りたかったんだよね」


 和樹は玲奈と共に、街中から少し離れたところにある洋服系の専門店へと訪れていた。

 彼女は洋服が欲しいようだ。


 玲奈は、以前からこのお店の事は知っていたようだが、時間が合わず利用した事はないらしい。


 二人はお店の自動ドアから入店する。


 店内に足を踏み込むと、真っ先に女性用の服が置かれてあった。

 現在訪れているお店は、女性用の衣類を中心に取り揃えている専門店のようだ。


「ここ、俺が入っても良かったのかな?」


 店内には女性のお客の数が多い。


「いいんじゃない? そんな事より、こっちに来て」


 彼女から繋がれている手を引っ張られ、和樹は店内を回って歩く事となったのだ。




「こんな服装とかってどうかな?」


 ハンガーにかけられた衣服がたくさん取り揃えられているエリアに、二人はいる。

 玲奈は好みな服を選び終えると、クルッと振り返り、和樹の方へと正面を向けてくるのだ。


「稲葉さんには似合いそうだね」

「こっちはどうかな?」


 玲奈はハンガーにかけられた服をそれぞれの手に持ち、和樹に見せてきたのだ。

 彼女は体の前に服を当てたりしていた。


「それもいいかも。んー、稲葉さんなら、どっちでも良さそうに思えるけど」

「それだと意味ないじゃん。どっちがいいか言ってほしいんだけど」


 玲奈は和樹に決めてほしいようで、まじまじと顔を見つめてくる。


 玲奈が左手に持っているのは、夏を全面的に意識した胸元や肩の露出度の激しい服。少し大人びた服であり、刺激的である。

 右手に持っているのは、ロングスカートと相性のカーディガンタイプだった。水色を中心とした色合いであり、玲奈のイメージに合っていると思う。


 これから本格的な夏が来ることを考えれば、左手に持っている方がいいと思った。

 普段から着るのなら、カーディガンでもいいとも思ってしまう。


 玲奈の谷間が良く見えるのは夏寄りの服装で、カーディガンだと清楚風な印象が強調され、和樹的にはどっちもよく見えてしまい、すぐに結論には辿り着けなかったのだ。


「一応聞くけど、稲葉さんは、その服って長く着るの?」

「んー、どうかな。私、毎年ね。季節ごとに洋服を買ってるの」


 玲奈は首を傾げる。

 彼女は両手に持っているそれぞれの服を交互に見て考え、返答してきたのだ。


「だったら、夏をイメージした、左手に持っている服の方がいいかも」

「こっちね。露出度が高い方ね。もしかして、私が着た時の事を考えて選んだ感じ?」

「え、い、いや……なんていうか。カーディガンでもいいと思ったんだよ。そっちの方が、稲葉さんのイメージに合っていると思って。でも、夏だけ着るのなら、それでいいかなって」


 和樹は図星を付かれた状況になり、たじたじになりながらも言葉を脳内で瞬時に並べて話していたのだ。


「そう。じゃあ、どっちも買ってみようかな」

「どっちも?」

「うん。今月はお小遣いもちゃんとあるし。でも、まずは一旦試着してみてからね。実際に着てみてよくなかったら買わないってことで」


 玲奈は楽し気にスキップするような歩き方で、近くの試着室へと向かって行く。


「でも、着替えているから覗きは無しだからね!」

「わ、わかってるよ」


 試着室内にいる玲奈。

 カーテン越しにチラッと顔だけを出し、和樹に忠告してきた。


 そんな事を言われたら、逆に試着室内の事が気になってくる。


 玲奈はカーテンの中に隠れ、服を着替え始めたのか彼女の声は聞こえなくなり、服を脱ぐ音だけが少し響いていた。


 見えない部分があるとやはり見たくなるのが性なのだろう。


 和樹は、不覚にもカーテンの先を想像してしまっていた。


 いや、いや、そんな事は……。


 和樹の胸元は熱く火照り始めていたが、グッと堪えた。


 そんな時、周りからヒソヒソ声が聞こえる。


 周りを見渡すと、他の女性客からの視線があったのだ。


 元々この専門店は女性服を中心に揃えられている。

 基本女性しかいない環境に男性である和樹がいる事に注目が集まっているのだろう。


 和樹は試着室にいる玲奈に話しかけた。

 まだ、あと少しと返答があったのだ。


 他の女性客は、和樹に連れの女性がいるとわかると特にヒソヒソ話をする事なく、自然な感じにその場から立ち去って行ったのである。




「ごめん、待った? はい、着てみたんだけど。どうかな?」


 刹那、カーテンが開いて、その先には夏服へと着がえた玲奈が佇んでいたのだ。


 上半身は夏服へと変貌を遂げていた。

 今日彼女はワンピース系の服だった事もあり、上だけ着替えただけだと下半身が下着状態になるため、適当なロングパンツを履いていたのである。


「す、凄くいいね」


 和樹は仕上がりの良さを前に言葉を失っていた。

 それでも、カタコトになりながらも彼女の衣装を評価するのだ。


 玲奈の爆乳さが際立っている。

 谷間も普通に見えて、刺激が強かった。


「本当にそれでいいの?」

「私はこれにしないなって。でも、岸本さんが嫌なら、こっちのカーディガンにするけど」

「じゃあ、カーディガンで」

「本当にいい?」

「うん」


 和樹は彼女と視線を合わせる事が出来なかった。


 やっぱり、露出度は控えてほしい。

 自分のためにも。

 それと、周りの人にも玲奈のおっぱいを見られたくなかったからだ。


「このカーディガンでもいいんだけど……他の服も見たいし。岸本さん、もう少し付き合ってくれる?」


 和樹は頷き、彼女と共に再び服選びを始めるのだった。


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