1584 ルナの見た希望
「はぁ!はぁ!」
ルナは走った。息が苦しい。けれど足を止める事はできない。早く応援を連れて行かなければという使命感が、苦しくてもルナの足を動かしていた。
しかし誰でもいいわけではない。あのデューク・サリバンと戦える力を持った者でなければ、何の意味も無いのだ。
誰か・・・お願い、誰か、早くしないとフェリックス様が!
クインズベリー軍が優勢と言っても、現在は混戦状態である。ルナとフェリックスは第三騎士団を率いて先行して仕掛けた。そんな中、軍人でもないルナには、他の隊がどこにいるのか把握できていなかった。
ほとんど運任せである。誰かに声をかけようにも、前線は戦闘が激しい。剣のぶつかり合い、攻撃魔法が飛び交う中では、味方に助けを求める事さえ難しい。ルナには走る事しかできなかった。
今、ルナが探しているのはレイジェスのメンバー達と、軍団長のバーナード・ロブギンスである。
しかし、総大将であるロブギンスはおそらく軍の後方にいるはずだ。そこまで行く時間は無い。フェリックスが持たないだろう。ならば前線に出ているレイジェスのメンバーしかいない。
ルナは声を上げて必死に名前を呼んだ。しかし周囲の怒声や爆発音によって、その声はかき消されてしまう。
どうしよう・・・このまま誰も見つけられなかったらフェリックス様が・・・・・
絶望が胸に広がったその時、場違いなくらいのんびりとした声がルナの背にかけられた。
「闇の巫女ルナ、そんなに必死に走り回ってどうしたのだ?」
「え?」
振り返ったルナの目に映ったのは、予想もしない人物だった。
後ろに流した銀色の髪に青い目、少し線は細いが背も高く、端正な顔立ちをしたこの男は、ユナニマス大川の戦いで消息が不明になっていた。
身に纏っている黒いローブはボロボロに破れ、至るところが泥や砂で汚れている。
だが、見間違いようがない。
ルナの前に立ったこの男は、四勇士シャクール・バルデスである。
驚きのあまり、ルナはすぐには言葉を出せなかった。
固まるルナを見て、シャクール・バルデスはもう一度言葉をかけた。
「フッ、その反応を見るに、どうやら私は死んだと思われていたようだな」
「あ、い、いえ、そんな!し、失礼しました。急だったもので、シ、シャクール・バルデス様」
慌てて頭を下げるルナに、バルデスの隣に立っているもう一人の男が口を挟んだ。
「おいおい、バルデス。意地悪な言い方してんじゃねぇよ」
肩より少し長いくらいの、軽く柔らかそうな白い髪。
中性的で綺麗な顔立ちをしたその男はディリアン・ベナビデスである。
ディリアンはユナニマス大川へ加勢に向かっている途中、倒れていたシャクール・バルデスを見つけて手当をし、ここまで連れて来たのだ。
「えっと、ディリアン様も・・・どうしてお二人が一緒に?」
「まぁ、その話しは長くなるから後だ。んで、お前なに必死こいて走ってたんだよ?」
バルデスから話しを引き継ぐ形で、再度ディリアンが同じ質問を投げかける。
するとルナは今までの戸惑った表情から一転して、声を大にして叫んだ。
「あ!お、お願いです!一緒に来てください!フェリックス様が、フェリックス様を助けてください!」
合流したばかりで戦況も何も分からない。
だがルナの必死な訴えは、バルデスとディリアンの二人に届いた。
「・・・フム、分かった。急いだほうがよさそうだな」
「ああ、よく分かんねぇけどヤバいんだろ?じゃあさっさと行こうぜ」
二人は躊躇なくうなずくと、ルナが走ってきた方向に目を向けた。
確かに感じる二つの強大な力。一つは覚えのある力だが、もう一つは禍々しさを感じる邪悪なものだった。
「はい!こっちです!」
ゴールド騎士と二分して、クインズベリー最強の一角と謳われる四勇士なら、きっとなんとかしてくれる。フェリックス様を助けられる!
ルナの目に希望の光が宿った。




