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「大丈夫かい?エリーゼ」
再び目を覚ましたエリーゼに、心配そうに声をかける人物。
この人知ってる、エリーゼはそう思った。
最近エリーゼが口説こうと必死だった、伯爵令息の妹の護衛騎士。
全く靡かない令息をどうやって口説こうかと、考えを巡らせている時、偶々その妹が用もないのによく王宮に来ることを知った。
『将を射んと欲すれば先ず馬を得よ』と、思ったエリーゼが、その馬のつもりでだいぶ斜め方向の護衛騎士を口説いた相手だ。
確か、名前は⋯。
「カイザ・ラガン」
「何?エリーゼ」
やっぱり。
漫画の中で彼は、重要人物とまでは行かないけれど、俗に言うマリィのお助けキャラ的に出てくる人だ。
あの漫画は確か、乙女ゲームが元になっているという内容だった。
そう、漫画の中でもエリーゼは転生者なのだ。
よりによって、どうしてエリーゼに転生してしまったのか、漫画の中ではマリィは《《転生者では無かった》》が、どうせならマリィに転生したかった。
そうすれば、エリーゼが口説こうとしている伯爵令息と結ばれて、幸せになれるのに。
伯爵令息の父親は公爵家の嫡男で、何れは公爵になる人だ。
今は従属爵位とかいうのを一時的に継承して、伯爵を名乗っているだけ。偶に高位貴族ではこういう事がある。
親がまだ若い場合がこれに当てはまるのだ。
だからエリーゼは、偶然にも漫画のヒーローであるその伯爵令息を狙っていたのだ。
「はぁ」
「エリーゼ?」
カイザは、王宮の医務室で気が付いたエリーゼを、寮に送ってくれているのだ。というのも、仕事もちゃんとせずに男漁りを繰り返すエリーゼは、当然のごとく侍女内では嫌われ者だ。
だから医師が連絡したにもかかわらず、誰も迎えに来てもくれなかった。
要するに勝手に寮に帰れ、ということだ。
それに憤慨して、カイザがエリーゼを送ってくれる事になったのだが、何度も断っても強引で、早く今後について考えたいのに、ちっとも帰る気配がないため、しょうがなくエリーゼは送ってもらっていた。
(早めに遠ざけないと、本当に流刑になってしまう)
「カイザさん、この辺りで大丈夫です」
「エリーゼどうしたの?いつものようにカイザでいいんだよ」
とんでもない!
ブルブル頭を振ってエリーゼは慄く。
「伯爵家の方に何てご無礼を!今までのことはどうかお忘れください。送って頂きありがとうございました」
カイザは伯爵家の次男なのだ。
エリーゼは、カイザが何かを言う前に、ペコリと頭を下げて、一目散に寮へと向かって走った。
(とりあえず、真面目に働こう!)
エリーゼは、流刑回避の為に働く決心をする。




