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あなたと私の分岐点  作者: maruko


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 森田衣里の父は、スナックの雇われマスター。

 衣里が物心ついた時には、揃って他界していた父の両親も、お水の世界で暮らしてきた人達で、父は生粋の夜の住人。若い頃からモテまくっていた父は、衣里の母と結婚してからも、女の誘いを断る選択肢はなかったようで、浮気三昧の末に衣里共々母に捨てられた。

 その母も、常連客の後妻の座を勝ち取り、30歳差結婚をやってのけた強者だ。

 彼女曰く、愛よりお金の方が大事だと気付いたのだとか。まぁ衣里の父からもらう愛は偽物なので、母の選択は賢いと言える。

 だが、どうせなら自分にも恩恵が欲しかったなぁと衣里は常々そう思っていた。


 ある日、どうしようもない父親が女に刺された。自業自得としか言いようがない衣里だったが、生活に困ってしまった。

 刺された父は怪我が酷く、リハビリ含めた完治まで半年掛かると医師から言われた。しかもそれは医師の見解だから、父の頑張り次第では早まると言ったが、それは逆だ。父が頑張るはずがない。衣里は半年以上掛かる事を覚悟した。


 父を雇ってくれていたオーナーに相談すると、入院費は何とか捻出できた。父を刺した女性は天涯孤独の人だったので、賠償金も彼女が刑期を終えた後になる。

 その時衣里はまだ中学生だった。

 そんな衣里にオーナーからの提案は、喉から手が出るほど美味しい物だった。

 それは父の代わりに、スナックで出すお通しを毎日作ることだった。それがオーナーの温情なのかどうなのか、衣里には分からない。


 中学を卒業してから高校に行かず、衣里は昼の3時まではスーパーでバイトをして生活費を稼ぎ、夕方になるとお通しを作りにスナックに足を運んで高校入学の為の学費を稼いだ。


 そんな生活を一年ほど続けて、一年遅れで衣里は高校に入学した。


 その間、父はリハビリを適当に頑張って、仕事に復帰したのは衣里の高校入学と同じ頃だった。

 とことん人生舐めまくっている男だ。


 そして、彼の甘えは衣里が高校入学してからも続く。料理上手の衣里のお通しは、スナックの名物になっていたようで、父が復帰してからも偶にオーナーにお願いされた。父は衣里の都合など全く聞きもせずに簡単に了承してしまい、衣里は一日起きに父の働く店に、開店前に通うことになる。


 その日もお通しを作っての帰りだった。


 トボトボと帰るいつもの道。

 突然車のクラクションがなって、体がその音に反応して硬直する。


 何も考える暇はなかった。


 気付いた時には、衣里は空を飛んでいた。






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