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マリィが転生者だと知ったエリーゼは、興奮と困惑の混じった不思議な感情を併せ持ったまま、日々の業務を遂行していた。
お休みまであと何日?
指折り数えてその日を待った。
待ちながら考える。
マリィはこの世界が、前世の“漫画の世界”だと知っているのだろうか?
知っていてルーセントとの仲を進展させなかったのか、それとも知らずにいた為、二人は婚約に至っていないのか。
漫画のとおりなら、既に二人は婚約をしている頃だ。
それなのに、当のルーセントは何故かエリーゼに好意を仄めかしている。
漫画の中のエリーゼは、たしかにルーセントにアプローチしていたけれど、エリーゼは何にもしていない。
いや前世を思い出す前は、ありえないほど執拗く付き纏っていた。
でもその時は、ルーセントは何の反応もなかった。
あの時に堕としたとは考えられない。
あまりにも年月が経ちすぎているからだ。
それに防犯ブザーを、マリィからプレゼントに薦められたと言っていた。
それもエリーゼには意味がわからなかった。
マリィの様子から、彼女がエリーゼを転生者だと思って薦めた訳ではないこともわかる。
エリーゼには、とにかく分からないことだらけで、早く休みになれ!と寝る前に必ずあと何日とスケジュール帳を開くのが日課になっていた。
◇◇◇
エリーゼが自分と同じ転生者だと知ったマリィは、彼女が急に真面目になったという点に着目していた。
はじめは、同じ転生者がいたのだと興奮して単純に嬉しさだけが溢れた。
それも休みの日までは話せないため、毎夜色々と想像するうちに、おかしなことに気がついた。
それは彼女の行動についてだ。
転生者だということは、マリィにはわからないが、この世界が何かを擬えているのだろうとは想像できる。
現にはじめの頃は、この世界が小説の世界なのか、はたまたゲームの世界なのかと何度も考えていたのだ。それでもマリィにはまったく心当たりがなさすぎて、割と早めに考えることを放棄した。
それに自分の身分と境遇の事があった。
大体転生物の話では、身分の低い令嬢が高位貴族の者と結ばれるのがセオリーだ。
それを考えるとマリィの男爵令嬢という身分は、ヒロインかヒドインの可能性が高い。それに加えマリィの出自が王家に連なると考えれば、マリィはこの世界が何であれ、その中心人物に他ならないと思った。
モブの設定ではあり得ないのだ。
だったらどちらに転ぶか分からないなら、早めに戦線離脱する方が賢いと考えていたし、ルーセントの容姿と身分、モテ具合を考えたら、彼はゲームなら攻略対象、小説ならヒーローの可能性が高い。
それは第二王子も然りだ。
ルーセントのルートは友人枠になるように、必死で矯正した《《かい》》があり、カップルになるのは避けられた。
だけど今回エリーゼの誤解を解くために、隣国までやってきたマリィだったが、今になって第二王子もヤバイと思い始めていた。
こういう物には、大概に強制力というものが発生しているのも、マリィはよく知っている。
散々前世で読みまくっていたのだから。
「私、自分でヤバイ所に足突っ込んでない?」
マリィはエリーゼが急に様変わりしたという点を踏まえて、彼女は何かを知っていると感じた。
「早くちゃんと話しして、この世界が何なのか知らなければ、このまま破滅ルートなんて嫌よ!」
マリィも毎晩休みの日までを指折り数えて待っていた。




